【投稿】総選挙から共産党は何を学んだか

【投稿】総選挙から共産党は何を学んだか
              ・・・日本共産党の総選挙総括と実践・・・

こんなテーマはもう「旗の紙面には似合わないな」と思いつつ、少し書いてみる。

<連立政権=第2自民党幹、唯一の革新政党論>
歴史的な非自民連立政権成立を生んだ今回の総選挙の中で、ひとり「政権」と関わらない政党がある。日本共産党である。
「‥・なぜ私たちは細川内閣を自民党より、より反動的とあえていうのかと申しますと、自民党の年来の野望であった小選挙区制導入、この暴挙を彼らは敢えてもっとも中心的な眼目としてやろうとしているからであります。・・・・・これは憲法改悪へ道をひらく、そのステップであるということを私たちはみておく必要がある」(十中総での宮本議長冒頭発言) 彼らの論調はすべて、この調子であった。しかし、残念ながら国民の細川政権の高支持率に示されるように、全体としては非自民連立政権への期待は大きく、一般的な国民の意識動向に、共産党が支持をのばすことはできなかった。
15議席となった今回の選挙結果について、彼らはまず「健闘」との評価をする。反共攻撃、「体制選択論」の中でよく陣地を守った、と。
しかしながら、十中総の文書を読むかぎり、共産党内にも少しは健康な議論があった形跡もうかがえる。そのひとつは、総選挙のもっとも重要な焦点が、自民党政権から非自民政権の実現だ、という時、共産党の中で「党は政権構想を持つべきだ」との意見が北海道や大阪、福岡で出てきたということ。宮本は、これを批判し「自民党政治の継承という呼びかけに対して、同じベースの対案を提起することは、国民に幻想か欺まんを呼びかけるもの」だとし、「よりまし政権論という形の競い合いに、参加すべきでなかったと言う点も明瞭である」「革新懇を強めることが、・・・」と発言している。残念ながら、説得力に欠ける。

<社会党批判が足らなかったのが敗因?>
第2は、社会党批判が徹底しなかったという「反省」が挙げられている。特に北海道では「歴史的に形成された社会党への敗北主義」は根強いと。
「・・・ところがすでに社会党は、80年の「社公合意」で、安保、自衛隊容認、反共を全面にして右転落、革新の立場を放棄した政党である」「社会党は、もともと世の中を変える解放の哲学をもたない改良主義の党だが、いま体制の擁護者となり、自民党政治に吸収され、未来のない党である」(十中総、総選挙総括)「社民主要打撃」という批判も、「共産党唯一革新論」の前に吹き飛んでしまった。今後はいっそう飛躍的に社会党枇判・攻撃をするという方向になっている。
連立与党内のリベラルを援護するなり、どこで対決点を設定するかなどの、介入論はもはや存在しない。

<他党批判に不信の声>
しかし、共産党の法定ビラに対して「法定ビラは他党批判ばかり、共産党が何をしようとしているのかわからない」という意見も出ている。これに対して、共産党以外の他党がしようとしているのは、翼賛政治と日本の反動化であり、これを徹底的に批判することこそ当然、という調子である。もちろん最後は、赤旗購読者が減少した状況で選挙に突入したことが、もっとも大きな問題と結んでいる。(「赤旗」購読者は減少し、七十年代初頭の水準にあり、240万台と報告されている)
すでに以前から、「選挙党」となった共産党だが、小選挙区比例代表並立制を焦点にした今国会でも、香登要な「介入」を放棄し、「宣伝・扇動」の党に一層純化するしか道はない。

<十中総方針を忠実に堅持し、惨敗した大阪府堺市長選挙>
すべての党を敵に回すこうした傾向は、大阪の自治体首長選挙でも同様である。大阪でも、革新自治体論と共産党支持市長がもはや現実性を失ってきている。羽曳野、吹田など「衛都連」支持の市長が落選、また政治的力関係が変化してきている。
特に堺市は、歴史的に共産党の支持が強く、共産党VS他党という選挙では、かなりの接戦をしてきた。今回10月3日投票の市長選挙では、保守系無所属が立候補し、共産党候補、連合型現職の3つ巴になり、私自身も選挙に関わったが、当初の予想ではへたをすれば80万都市で共産党の市長誕生か、という危機感で選挙戦が取り組まれた。
しかし、開票の結果は無所属の共産党候補は、同時に行われた市議補欠選挙の共産党候補の票に千票あまり足しただけ。市民派市長という宣伝に反して「共産党票」しか、集まらないという大敗北となった。
後で思い返すと、実はこの選挙、本当に市長選挙だったのか、という疑問が出てきた。とにかく、「共産党で何が悪い、共産党が支持しているからこそ革新市長だ」というような論調で選挙をしていたからである。もちろん、社会党にはじまり、すべての他党を批判するばかりであった。市長選挙というよりは、共産党擁護、の宣伝選挙であった。結果は惨敗。3つ巴で、共産党の勝利が実現しそうなので、余裕を持って本来の主張を全面にしたのか、市長選を名目に、次期の選挙対策を行ったのか不明だが、明らかに「十中総」決議に忠実な「唯一革新政党論」は、ただ「共産党」の陣地を確認するだけの「市長選挙」にしてしまったのである。
「連帯を求めて、孤立を恐れず」とは、それなりに共感できる立場だが、「連立を拒否して、孤立深まるのを恐れず」というのは、もはや時代遅れだけでは済まないのではないだろうか。 (大阪 佐野秀夫)

【出典】 青年の旗 No.191 1993年10月15日

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