【投稿】92春闘の特徴と連合の闘争課題
<情勢の特徴>
87年に始まった「いざなぎ景気」は90年度までには連続5%程度の高い成長率を維持してきた。しかし91年に入って、バブル経済の崩壊と共に景気は、後退局面に転換し、91年度下期の需要成長率は2%以下に低下、政府の91年度成長率見通し3.8%の達成は、困難な状況である。民間の調査機関でも3%前後を予想しているところが多い。こうした景気の後退要因には、①金融の引締めによるバブル崩壊の影響が実体経済に波及して、住宅、自動車等の不振を招き、それを契機に在庫調整が広がったこと、②この過程で設備投資の低下、企業の活動意欲が萎縮していることなどが上げられる。
こうした状況を受けて政府・日銀は、景気の回復策として、公定歩合を4.5%に引き上げる一方、92年度政府予算で財政規模が、税収不振で2.7%増に抑制された中でも公共事業関係費5.3%増、財政投融資10.8%増とした。また92年1月から不動産融資の総量規制を解除した。このような景気回復策を通じて政府は、92年度成長見通しを3.5%とし、内需主導型安定成長への転換を目指している。
こうした経済状況を背景とした92春闘は、日経連の労働問題研究委員会報告でも明らかなように従来の「定昇のみ」という硬直した記述がなくなっており、これまで以上に、内需拡大策一個人消費の拡大につながる大幅賃上げ、労働時間短縮の推進に取り組む必要がある。
<92春闘の重点課題>
連合を中心とする92春闘の重点課題は、「公正・ゆとり・豊かさ」を目指す総合生活改善闘争を掲げて、積極的賃上げに併せて、減税、土地・住宅価格の引き下げ、生活関連社会資本の充実と福祉・医療の基盤整備、公的年金改革などの制度・政策闘争、加えて完全週休2日制の実現、年間総労働時間1,800時間の達成、育児休業制度と介護・看護休暇の普及と充実など労働時間短縮を主要な闘いの基調としている。
賃上げでは、経済の成長に比べて実質賃金の上昇分が1%に満たないことが「豊かさ」の欠如の大きな要因であると受け止め、連合は、「実質賃金の維持・向上」と賃金格差の解消を基本に「8%を中心、20,000円以上」を賃上げ要求目標とした。そして闘争戦術を例年より2週間程度早め、3月25・26日に第1次集中山場を設定、第2次の山場を3月第5週から4月4日までとし、官民総がかりの闘争を展開することとしている。 労働時間短縮では、完全週休2日制の実施を中小企業を中心に各単産・単組で要求項目の大きな柱に据えると共に、2・3月には時短キャラバン行動の展開、マスメディアも活用した時短促進、ムードを盛り上げることとしている。また公務における完全週休2日制の早期実現、学校5日制の実施など、完全週休2日制に向けた社会的合意形成、基盤整備にも取り組むこととし、労働基準法(労働時間・休日)の改正・見直しなども含み、対政府・自治体要求を展開する中で、「1993年・年間総実労働時間1,800時間」に向けての本格的スタートとしての92春闘と位置付けている。また制度政策闘争では、参議院選挙への展望を持ちつつ、各地方連合で自治体予算要求行動を取り組むことを基本として、減税・年金・福祉を中心に対政府交渉にも臨むこととしている。 総じて、新たな経済状況の転換の中で闘われる92春闘は、連合が結成して以来、ようやく連合運動スタイルが定着してきた中で、連合傘下の各単産の連携による賃金闘争が従来より、まして強調された取り組みが求められており、併せて労働時間短縮の取り組みについても、個別単産の闘いに終らない社会的影響力のある闘いの展開が求められている。(大阪 Y・U)
【出典】 青年の旗 No.172 1992年2月15日