【コラム】ひとりごと –能力に応じて働き–
★現代のキーワードというよりは流行り言葉の一つだが、「夢」というのがある。企業の人材募集広告にもよく見られる言葉である。★「やりがい」「充実感」が就職先を選択する基準の上位にランクされている。★そうでない者は「仕事は生計を立てるための手段」と割り切ってしまって「3K」「新3K」が基準となるらしい。★このことは漠然とではあるが、「仕事」・「社会」・「企業」が夢のないものとしてとらえれていることの反映であろう。★説l明するまでもないがここでいう博」とは「現実」のl対語としての意味でなく、次代を照らし出す光明とでlもいうか、いわゆる目標のことを指している。★たしlかに夢のない時代なのかもしれない。★何かをするのlにどれだけの労力やお金が必要かあらかじめわかってしまうということなのか。わかりきったことが多すぎるというのか。おもしろくないのか。★少なくとも若い世代には見切られてしまっているのである。★一方、他の人々はどうかといえば、社会不安はたしかにあるようである。★宗教ブームは衰えを知らないし、リバイバルと称して過去の栄光を振り返る企画が多いように思う。★現代は社会がシステマチックであるとともに、自分の足下がなんだかおぼつかない時代らしい。★20世紀の終わりにまたひとつ「夢」をなくしそうな変化があった。★「能力に応じて働き、労働に応じて受け取る」、「能力に応じて働き要求に応じて受け取る」へと我々は夢を持ち続けられるのだろうか。★こんなことさえ世迷い言と、とられかねない時代ではlあるが……。(みなと派)
【出典】 青年の旗 No.172 1992年2月15日