【投稿】7月参院選の行方は?

【投稿】7月参院選の行方は?
               —-はたして自民党政治独占に終止符は打てるか—-

12月の全国協議会で,[旗]の紙面に、政治、経済の問題を継続的に掲載することが議論された。意志統一ではなく、あくまでも議論の叩き台、問題提起として。
7月参議院選挙は政局転挽の焦点に成りつつある。
自民党政治独占に終止符を打つことを期待する。

<共和事件と政治の震動>
ソ連邦の崩壊などで、社会主義に資本主義が勝ったなどの合唱騒ぎから醒めてみると、国内では数年前のリクルート事件並の根の深い腐敗構造が明るみに出て、政治を震動させている。自民党宮沢派阿部代議士の共和事件と東京佐川事件である。
宮沢政権諺生の立役者であった阿部代議士の逮捕という事態は、奇奇怪怪。週刊誌では東京佐川急便の巨大疑惑を追及しないという「了解」の下で、阿部逮捕のシナリオが出来たとも言われていた。佐川問題が明らかになれば自民党のみならず、野党からも逮捕者がでるとの裏話もささやかれてきたからである。
共和、佐川と続く事件の解明は、大きな政治の震動を呼び起こすことになるであろう。もちろん、中曾根民活がリクルート事件の下地であったように、今回の事件の背景はバブル経済そのものである。バブル経済華やかなりし頃、リゾート法が成立、全国各地にリゾート開発の嵐が吹いた。自然保護されるべき国定公園の中にまで開発が認められた。当然政治と企業が結び付く、不動産融資も際限がない。ノンバンクなるダミー融資がのさばった。そして、バブルの崩壊と共に、さまざまな金融疑惑が吹き出した。政治家もこうした融資や開発の中に介在し、汚職の感覚も無くなってしまった。
今回の事件も氷山の一角であろう。しかし、リクルート事件をきっかけとして「政治改革」を主張したのは自民党ではなかったか。首相派閥の中心人物が億単位の企業丸抱え政治を行っていたことは、国民に深刻な不信を与えている。2月9日投票の奈良県参議院補欠選挙は国民の正常な政治判断をしめすことになった。
佐川疑惑追及は奈良補選から1週間にして強制捜査となった。これ以後も政治家の疑惑は与野党を巻き込んで噴出する気配である。特に佐川関係では、運輸族を中心にし、昨秋の総裁選候補の元運輸大臣で国鉄民営を強行した三塚の名前も浮かんできているし、首相経験者の名前も見え隠れしている。
7月の参議院選挙を頂点に、日本の政治そのものが問われようとしている。それは、自民党のみならず社会党をはじめ野党陣営の力量を問うものになる。

<東西対立の解消による国民意識の変化>
昨年のソ連邦の解体は、長く続いた東西冷戦を機軸とした世界政治の終焉を意味する。朝鮮半島での対立の緩和、昨年末には米ロの首脳による積極的な軍縮提案が競い合うように打ち出された。東西の対立関係の解消を印象付ける事象が続々と現れている。
従来政権党であった保守党は、北からの脅威、ソ連の脅威を叫び、軍事力の増強が必要と国民に訴えてきた。それが保守政治の基盤でもあった。国際関係もこの立場から日米関係の重視を基礎としていたのである。しかし、明らかになったCIS(旧ソ連)の経済混乱と軍事的弱体は、もはや脅威でも何でもない。またアメリカの経済不況の深刻さも「大国アメリカ」の終焉を示している。
これら情勢の根本的な変化は、国内政治をめぐる国民意識に大きな変化を生み出している。すでに「体制の選択論」は色あせている。今選挙で資本主義か社会主義かの選択はない。
PKOに絡んで、自民党最右翼の小沢率いる「国際社会における日本の役割に関する特別調査会」(小沢調査会)が、「能動的平和主義」なるものを打ち出し、解釈改憲論を唱えた。しかし、国民の反応は冷やかであり、自民党内ですら議論が起こっている。自民党右派も変化の中にいる国民意識をもはや捉えられない。
「豊かになった」国民は、危機感や扇動に影響されて選挙権を行使することは少なくなった。政策が問われ、清潔さ、誠実さ、頼りになるのかどうかを問い始めている。
すでに、マスコミは共和・佐川疑惑発覚から奈良補選での連合候補の勝利そして7月参議院選挙への流れを、3年前の参議院保革逆転を生み出した経過とを重ね併せて、同様のシナリオを措いてみせている。従来の保守党政治の基盤が変化した以上、このシナリオはかなり大きな確率でその実現が予想できる。

<宮城補選の結果、
宮沢内閣の命運も尽きるか?>
さらに、保守党内部の不安定さも、この流れを促進する要素になる。
宮沢政権は久々の理性的な保守本流内閣との振れ込みで登場したが、昨年末の国会で早くも指導力のなさ、竹下派リモコン内閣であることを国民の前にさらけ出した。さらに、共和事件の阿部議員が宮沢政権誰生の番頭役であったことや、鈴木元首相など首相派閥から疑惑議員が続出するなかで一層支持率を低下することは目に見えている。
また、一方で自民党内部も、竹下派の党内独裁政治への批判の高まりの中で、政治改革ひとつとっても「小選挙区並立制」での一致も出来ず、不安定さを隠せないでいる。
創価学会問題を抱えた公明党と、独自性を出したい民社党と言う中で、参議院での自公民路線が破綻し、通常国会を政治改革を目玉に乗り切ろうとする宮沢内閣も早晩行き詰まることになる。
他方、予想どおり、野党からも疑惑議員の名前が出始めた。「運輸族」を中心に。これでは、前回のリクルート事件の場合と同様、政治への国民不信は一層深まることになる。 参議院選挙での大きな政治転挽を望むものにとって、複雑な状況である。

<連合と政界再編>
そこで注目すべきは、連合の動向と政界の再編である。情勢の変化を受けて民社党の存在意義はもはや無くなったと言っていいのではないだろうか。国際情勢の変化で「安保自衛隊」問題の比重は低くなっているし、活動家レベルでの意識の問題は残るとはいえ、社会党・民社党の統一、ないし、新党結成ということも社会主義協会の問題を除けば大きな障害を持っていない。
そこで、連合の動きである。奈良補選での元民社党衆議院議員を連合候補として勝利させ、7月参議院選挙では、さらに連合型候補、自民党に勝つことに第1の目的を絞った候補者多数の擁立を目指している。これは国民にとって非常に分かりやすい選択支を提供することになる。
労働運動の分野で連合は、制度政策面など大きな成果を上げつつある。育児休業法の成立をはじめ、パート労働法、介護休業法運動など社会的に大きな関心を呼ぶ事に成功し、連合という言葉はすでに社会的認知と信頼を受けつつあると言えるのではないか。特に、政策研究の分野で従来の総評や、現在の社会、民社両党よりもしっかりした研究者グループを持ち、国際情勢の変化にも十分耐えていける力量を付けていると私は考えている もちろん、連合は政党ではない。しかし、力を付けたナショナルセンターは、政界の再編に大きな影響を与えて当然である。私自身も参議院選挙の結果が政界の再編を生み出すことを期待する。もっともどの様に再編されるべきか、問題は何かなど、「青年の旗」の紙上討論などで大いに議論してはどうかと思う。
(大阪 H・Ⅰ)

【出典】 青年の旗 No.173 1992年3月15日

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