【投稿】外国人登録法の改正について
在日外国人の人権問題を端的に現すものとして、注目されてきた外国人登録法がついに大幅な改正をされることになった。法制度の根幹をなす指紋押捺制度は、かねてから基本的人権をじゅうりんするものとして、在日韓国・朝鮮人をはじめとする多くの在日、外国人が押捺を拒否、更に、登録証の常時携帯義務、重罰規定の廃止などを求める運動が1985年をひとつのピークとして盛り上がった。
こうした、国内の動きと韓国政府の度量ねる要求によって、政府、法務省は何回か小手先の改正を行ってきたが、それは到底在日外国人を納得させるものではなく、法の抜本的改正を求める運動は、地方自治体をも巻き込んだ形で続けられた。
この間法務省は、指紋押捺拒否者に対して、見せしめとも言える不当な圧力をかけ続けてきたが、1991年1月の日本と韓国政府の首脳会談により、指紋制度の全廃を含む政治決着が図られた。その後庁間で杏室協議が重ねられ今国会への法案提出となったのである。 その内容であるが、指紋押捺制度については、旧植民地出身者である特別永住者、および永住者に限り、写真、署名、家族登録の代替手段の導入を持って廃止することとなっている。そもそも外国人登録法=指紋押捺制度は、東西冷戦・朝鮮戦争を背景として在日韓国・朝鮮人を治安管理する目的で制定されたものである。したがって、冷戦が崩壊し、日朝国交回復もちかじかという情勢の今日、当初の目的はほとんど喪失してしまったものである。
これに変わるようにアジア諸国を中心とする外国人の急増に対し、治安管理の対象はシフトされた。しかし資格外就労者は、外国人登録法で網羅することが不可能であり、法務省は入管法を軸とした対策を行っている。
このように、外国人登録法は権力側にとってもその歴史的役割は終焉したも同然であって、少なくともこれからの社会には対応できない法律であることは明らかである。しかし今回の改正案では、依然として1年以上の在留外国人に対する指紋押捺制度及び常時携帯義務、重罰規定はそのまま残されているのである。
また今回の改正では、地方分権に逆らうごとく、現行法以上に登録事務を地方入管局に移行し、地方自治体の裁量を削減しようとしており、まったくの時代錯誤のものとなっている。
外国人登録法は、そこから冷戦時代の残滓を一掃し、在日外国人が必要な公的社会保障などを受けるための制度に抜本改正して、その業務はすべて、地方自治体に移管すべきである。これはすでに運動に関わってきた多くの団体から捉起されていることであるが、今こそそれを実現する時期なのである。 (大阪 0)
【出典】 青年の旗 No.173 1992年3月15日