【投稿】国際協同組合同盟(ICA)東京大会へむけて
「変化する世界 協同組合の基本的価値」S.A.べ一ク著
10月にいよいよ東京でICA(国際協同組合同盟)世界大会(第30回ICA東京大会)が開催される。この大会にあたって「変化する世界、協同組合の基本的価値」と題する本が出版されているので紹介したい。発行は、日本協同組合連賂協議会、第30回ICA東京大会組織委員会(事務局 東京都千代田区大手町ト8-3全国農協中央会国際部内 03-3245-7563)である。(頒価1,000円)
紹介にあたって、まず協同組合運動といえば「生協」(生活協同組合)を身近なものとして連想されるであろうが、その他には農協、漁協、森林組合など、それに労働金庫などの信用・金融組合、住宅協同組合、そして最近では生産協同組合・労働者協同組合(ワーカーズ・コレタティプ)などを聞いたことがあることと思います。
抽象的にいえば協同組合は、組合員のニーズにしたがって、組合員が出資し、運営し、管理する組織です。
もちろん現在ではこの精神にのっとりながらも実に多様な形態と内容が実践されています。この出資、運営、管理の三位一体の運動の特徴のキーワードは、1:平等(民主主義)と公平 2:自発性と相互自助 3:社会的、経済的解放であり、現代的にはニーズに応える経済活動、利益の公平な分配、人と人の結合、参加型民主主義、社会的責任、協同のセクターの国内的・国際的協力などが大きな議論をよんでいます。
またこの運動は、資本主義体制のなかにありながらも独自のニーズと組織をもつ経済組織であり、それを意識的にコントロールするというすぐれた特徴があると思います。したがって運動的には大企業や独占資本とは独立した、生産一流通一消費、再生産過程を生み出し、そのことによって市場をコントロールしていくというプランもあるぐらいですから、協同組合運動というものもだいたいお分りいただけたのではないかと思います。
前置きが長くなりましたが、本書は、ICAが大きく変豹する世界のなかで協同組合運動を歴史的に総括し、その運動の価値を再評価し、そしてあらたな価値と実践を生み出していくために、研究プロジェクトをつくり作成された文書であります。著者はS.A.ベータ氏。スウエーデン協同組合学会会長であり、ICA「協同組合の基本的価値」研究プロジェクト座長です。ベータ氏は「協同組合運動に携わってきた私の25年間の中で、最もやりがいのある仕事となった」とし、「熱心な協同組合人にとって、当面これ以上にさしせまった問題は考えられない」と本書の執筆の気持ちを率直にかたっています。
内容は大きく次の3つの視点から構成され、1)理念と理想、2)実戌と経験、3)未来の展望とビジョン、時代の変遷を経ながらうまくまとめられています。価値の抽象化と同時に、世界中の協同組合運動との「行動と対話」を通じてまとめあげられた本書は、現代社会の現況をよりよく反映する問題提起が行われていることが、読者の様々な運動に示唆を与えてくれることと思います。今後の社会展望、ビジョン、人類的な価値等々。全260ページ近い内容は、21世紀に向けての大きな社会展望を語っているのではないかと思います。もちろん、未来を形成するのはテーゼや文書ではありませんが、私たち自身が行動を選択し、未来を切り拓いていくときの社会、経済、運動的な価値をよりよく反映していると私は思います。(東京WoZ)
【出典】 青年の旗 No.180 1992年10月15日