【投稿】中教審をどう考えるか –大阪教員交流会–

【投稿】中教審をどう考えるか –大阪教員交流会–

教員グループでは、1月より3回にわたって、昨年末に文部省が出した「第14期中教審審議経過報告」について議論を進めてきました。参加者各自の教育課題や問題意識を出発点とした議論となっているため、議論は、まだまだ末整理ですが、議論の経過に沿って報告します(内容は労青大阪教員グループ「交流会」ニュースより抜粋)

★今、なぜ中教審なのか
中曽根時代の臨教審路線は民活・受益者負担主義で、国家財政の負担の軽減も狙った効率重視のものであった。しかしいま中教審は、平等の重視を打ち出そうとしている。平等の重視は、財政負担の増加をもたらすし、効率の低下をも生み出すものである。この審議経過報告に対して私学からの反発がすぐに出てきた。私学の反発は中曽根臨教審–個性化・教育の複線化-の考え方である。この反発は当然予想されたものであろうら にもかかわらず、ナゼ、このような審議経過報告が出てきているのであろうか。それは、財界は臨教審とは異なるアプローチででも人材育成を考えているという観点から分析することである。

★財界の求める人間像・教育とは
財界は、How TO思考は持っていても、国際競争を勝ち抜いていけるような人間が育っていないという危機感を持っているのではないだろうか。これはまさに世界で最先端を走る日本の財界の苫悩ではないだろうか。彼らは単線型・模倣中心の思考ではなく、フレキシブルに情勢に対応し新知識を生み出す頭脳を要求しているのである。これまでのように2番手国であればアメリカの模倣をしていればよかったが、今日アメリカの技術は模倣に値しないものになっているのである。日本は自国の開発力で最先端を切り開いていかねば、最先端を走ることは出来ないのである。新技術の開発は、金持ちが金をつぎ込んで育ててきたヤワな人間には出来ない。このような人間では国際競争の激しい時代にはもちこたえられない。このままでは、仏、英、米の様に最先端から落日を迎える。この激動期に持ち堪えられる頭脳は、今の教育、臨教審路線では育たないと考えているのである。財界の求めている頭脳は広く浅い知識ではなく、より研ぎ澄まされた深い知識とそれを柔軟に状況に対応させるための幅広さなのである。最先端のコンピューターの開発は「遊べる」人間にしか出来ないのである。臨教審では促成栽培式のハウス育ちしか育たないし、財界の求める頭脳は育たないと考えているのである。財界は「寄り道の自由」を与えハングリーな者の中から「遊べる」人材を登用したいと考えている。金持ちが金で買い取る競争でなく、「真の競争」をしてその勝者こそが登用されるべきだと考えているのではないだろうか。
現在の受験競争は平等ではなく一部の特権階層を生みだし、その師弟のみが有名大学に進学するシステムになっている。このシステムを放置すれば激動する国際情勢に対応して国際競争に打ち勝てるような人材は得られない。この危機意識が今のシステムの中で埋もれている人材をいかに登用するかを考えさせているのであろう。

★教育労働者の課題
このように考えると、中教審は特権階層の利益を否定しても教育のシステムを変えるべきであるという、資本の全体の危機を反映しているものであると言える。この危機は教育権の保障を追及する人民サイドの運動に利用しうる可能性がある。しかしこちらの力が弱いと、こちらの要求、力を利用する形で、資本全体の危機を救う形で教育改革を進められてしまうのである。例えば指導困難校について記述してある点である。これは困難校を是正してほしいという人民の要求を軽視できないことを示している。しかし困難校を是正することが資本の眼目ではない。
困難校に勤める教師に謝辞を述べてもそれは「真の競争」実現のためのものである。指導困難校問題の記述は「歪んだ競争」の是正のため、「真の競争」が行われるべきであるというための例証として出されている。
これに対して教員組合側はどのような教育をめざしているのか。教員組合の力が強いといわれている、大阪・東京・名古屋・福岡などでは公立が私学に負けている。親が公立学校に対して信頼をしていない。
「公立は先生が本気じゃない、いじめがある、進学できない」などの声に表れている。これに対して教員組合の弱い大都市近郊の県では、公立学校は文部省直轄で私学の経営に負けない自助努力を行い、私学に負けない特色ある学枚づくりをアピールしている。これは教員組合側が審議経過に対する対応が一面的であることの証左である。
われわれにとっての課題は、資本の危機をこちらがいかし切れるか否かである。そうしなければ、資本の危機を「特権階層」の利益に屈し、実効性を持たない、臨教審路線の再来を招くことにもなる。この視点にたってわれわれにとっての課題・方針を整理し直すことが求められている。(6月18日)

【出典】 青年の旗 No.165 1991年7月15日

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