【報告】 今年も元気に合宿開催 一東京 金属化学支部-
東京の「金属化学支部」では毎年恒例となっている支部合宿を秩父で開催した。合宿で取り上げる課題は毎回「先端」を行くものであり、注目されている。今回は合宿の概要を支部より寄せてもらった。
(資料等詳細ご希望の方は東京都委員会まで)
金属化学支部は、5月25~26日に第11回支部合宿を開催した。金属化学支部の合宿は、2テーマの学習会とメンバーの職場報告を行うのがいつものパターンである。今回は、①「世界経済動向」、②「『日本式経営』批判のための問題提起の2本の学習会と、K労組の20代メンバーK君・N君の職場活動報告を行った。また、夜の交流会では、ひと味違った職場報告として、K労組が取り組んだ「記念企画」の準備から本番、後片付けまでを迫ったビデオを観賞した。
報告1.世界経済動向
今回の合宿では米国経済の動向について、海外からの資金の流れを含め検証した。この課題は87年の第1回合宿でも行ったが、今回の問題意識は以下の点であった。
①80年代のレーガノミックスの経済
・金利高による米国内への資金の流人、土地、M&A、バブル経済の崩壊
・双子の赤字と債権国から債務国への転落
・海外の資金流入による呆気の拡大 82年11月~90年10月
・一方での小さな政府論、社会福祉の削減
②90年代の米国経済の特徴
・米当局のリセッションの発表
・91年第1四半期、貿易黒字(中東、湾岸戦争の戦費分を含んで)
・80年代後半から勤労者のクレジットなどの負債額、GNPの成長率の倍の速度で進む
・双子の赤字から三つ子の赤字へ
(まとめ)80年代レーガノミックスの経済は海外からの資金の流入で経済が成り立っていた。しかし、その実態はM&A、土地、とバブル経済が基本となっており、設備投資はあまり進まなかった。90年代に入り、東欧情勢の変化により西ドイツは東ドイツを吸収していった。このことから米国に流れていた資金は自国の債権にまわることになる。一方日本は、バブル経済の崩壊により、米国へ投資していた資金の回収が始まっている。80年代と90年代初頭、世界の資金フォローは基本的に変化してきている。その意味で保護主義の動きは強まって来る。 (東京 Y)
報告2.「日本式経営」批判のための問題提起
近年、日本の「企業優位社会」や「会社人間」に対する批判が強まりつつある。(例えば、『朝日新聞』91.2.4社説など)民間労働者は、好き好んで企業に忠誠を尽くしたり、自分を犠牲にしているわけではない。むしろ、労働時間や賃金、仕事の内容等に対して不満や不安を持っている。しかし、その不満や不安が労働組合運動その他の運動として表面化することはなく、逆に表向きは「会社人間」として振る舞ってしまうのが現状である。 この現状を打破していくための第一歩として、日本企業の問題点を抽出し、検討を加えることにした。今回は文字どおり報告者の問題提起に止まったが、今後、支部の内外で研究・学習を継続していきたいと考えている。
今回の合宿では、以下の問題点・キーワードの提起を行った。
(1)生産様式-フォード主義とポスト・フォード主義
(2)小集団活動-QC(品質管理)の「日本的」質
(3)人事権・査定
(4)株式の所有形態一相互持ち合い、安定株主工作
(5)企業間関係一系列化(下請け構造)、企業集団
議論は(2)の小集団活動に集中した。小集団活動が労働者の「自主性」や「働きがい」を引き出し(経営の側に)組織していること、一方で、必ず管理職の監督の下に置かれる、サークル間の競争が煽られる、等の問題点が指摘された。そして、日本の戦後労働運動が、小集団活動を単に敵視したり、、反対に「生産性向上」のためと称して無批判的に受け入れられてきたことが、経営の側の職場支配を許してきた一因であるという(一応の)認識を得ている。
なお、今回の学習会を行うにあたっては、下記の文献他を参照した。
・R=ドーア『イギリスの工場・日本の工場』(筑摩書房)
・奥村 宏『法人資本主義』(朝日文庫)
・季刊『窓』3~5号(窓社)
「国際論争・『日本式経営』は世界になにをもたらすか」
・『社会評論』82号
「産業構造の変動と 『日本式労資関係』の虚実」
・大阪哲学学佼『企業モラルを哲学する』(三一書房)
・熊沢 誠『職場史の修羅を生きて』(筑摩書房)
・小野木祥之『偏芯してますか、ご同輩」』(筑摩書房)など
(東京 0)
【出典】 青年の旗 No.165 1991年7月15日