【投稿】ソ連の激変・これからの我々の道は!
八月十九日のクーデターから三週間、ソ連の歴史的な大激変を、固唾を呑んでみまもってきた。幸いにしてクーデターは予測したより早く三日天下にして完敗した。ペレストロイカとグラスノスチを経験し、民主主義を身につけたロシア人民、モスクワ市民はエリツィン大統領のよびかけに呼応して、勇敢かつ大胆に起立り、保守反動の意図を粉砕した。民主主義と人民の勝利であった。
ゴルバチョフ大統領の復権、八人組の逮捕、引き続いてソ連共産党の解体へと目まぐるしく事態は転換した。七十四年にわたる共産党の支配は終止符をうった。万感胸に迫り、心痛む思いで一杯である。最高会議から人民代議員大会をへて、新しい「主権国家連邦」がつくられ、バルト三国の独立が承認された。
民族共和国の自主権が確立し、共和国相互の連帯とゆるやかな連邦の政治機構・国家評議会が発足した。経済的な提携も進みそうだ。だが、ソ連の前途にはまだまだ幾多の困難な問題が山積みしている。経済改革はこれからが正念場である。著しく立ち遅れた技術革新と巣経済の導入には多くの困難と矛盾がアル。ヤミとインフレ、物資不足、流通機構の麻痺、なお残る保守特権官僚層の抵抗、大量の失業者の発生、軍人の離職と処遇の問題など、解決を迫られている課題が目前にある。さらに民族紛争は激化しそうな様相を示している。一歩誤れば内戦さえ起こりかねない事態を抱いている。ソ連の問題は他人事ではなく、ただちに世界政治と経済軍縮と外交に響いてくる大問題である。
日本共産党は今回のソ連の激変にさいして、我が党の勝利と自画自賛している。三十年来批判してきた「ソ連の大国主義・覇権主義の当然の破産」として評価し、共産党の解散を歓迎している。さらにペレストロイカとゴルバチョフの新思考を、レーニン以来の最大の日和見主義、右翼社民路線として罵倒し、自主独立路線を謳歌して酔いしれている。そこにはソ連人民の努力も社会主義者の苦悩も、我が身の問題として共に感応しようとする一片の連帯感も存在しない。夜郎自大の臭気ぷんぷんたるものがあるだけだ。
顧みて、今、つくづく思うことは、ロシア革命とはなんであったか、マルクス・レーニン主義とは自分にとって何であったか、半世紀ちかく身命を賭して運動してきた社会主義とはなんであったか、ということである。確かに多くの誤りもおかしたであろう。だが、今日においてもいささかも悔いはない。人間の平等・搾取の廃止・労働者と人民が主人公になる社会・平和、人権、民主主義の徹底を求めて、新しい世の中を切り開くという理念、路線が間違っていたとは到底思えない。・・・
ペレストロイカが提起した新思考は、二十一世紀に人類が生きのびてゆくうえで、通らなければならない道筋だと考える。反核・平和・軍縮・民主主義・人権・地球環境の擁護・社会保障は現在も将来も我々にとって、実践的な課題である。そこに社会主義が追い求めた内容がある。
今日、日本資本主義の腐敗と腐朽はその極に達している。バブル経済の破綻が示したものは、大銀行と大証券会社の横暴と腐敗、政界との癒着、自民党政治の破綻であった。弱者の泣き寝入り、虐げられた者の悲惨、社会的不平等はもう許されない。今こそ人民が立ち上がって大糾弾すべきときだ。日本社会党は、党改革に進もうとしている。いまこそ野党はゆきがかりをすてて結集し、統一行動・統一戦線を組んで闘うときである。
今後の我々の進むべき道は、社会民主主義をしっかり踏まえ、人民に依拠し、人民の要求をわがものとして積極的に取り組み、志しを同じくする社会主義者が小異を留保しつつ、大同団結して力を組織を一つにして行動する以外にない。そのために、残り少ない余生を捧げ力のかぎり努力したいと考えている。 (9月7日 小森 春雄)
【出典】 青年の旗 No.167 1991年9月15日