【コラム】ひとりごと –トータルな労働者の生き方–
▼「ゆとり・豊かさを実感できる」・・連合の総合生活改善闘争のスローガンである。たしかに、「世界で一番の経済大国」と言われながら、日本の労働者の生活は、長時間労働や高物価、地価の高騰など寂しいばかりで「ゆとり・豊かさ」とは程遠いのが実感ではある。住宅水準や公園・下水などの社会資本整備は、欧米に遠く及ばない。近年は日本の誇るべき自然環境も破壊が一層進んでいる。
▼ 確かに「賃上げ」や「労働時間短縮」は必要であり、週休2日制は早期実現したいものだ。しかしそれだけではたして「ゆとり、豊かさ」が実感できるだろうか。
もちろん連合指導部も時短だけとは考えていないだろうと思う。
私が強調したいのは、現在の「ゆとり・豊かさ」論に「自然と人間との調和」や「国際的な連帯」という観点をほとんど感じられないということである。
▼ 金満日本という批判がある。千億単位の金融疑惑。労働者に一戸建ての家という期待が不可能になった今、海外旅行が増え、労働者も利殖に頭を悩ましているという面も生まれている。毎年電力使用量は延び続けて、ゴミを捨てるのに困るほど、物が消費され、廃棄されている。近年のリゾート開発は日本の自然を破壊することで「ゆとり」の場所を提供しようとしている。しかし、世界最大のエネルギー消費を行うことは、成長国の特権だとはもはや言えない時代である。
▼「ゆとり・豊かさ」とは多分に精神的なものであり、もっと人類的なものであろうし、労働者の生活の質を、思想を問うものである。連合も結成初期の「遠慮」を捨てて、もっと活発な内部論争を通じて、トータルな労働者の生き方を問い続けなければ、魅力をなくしてしまうことになる。 (I)
【出典】 青年の旗 No.168 1991年10月15日