【報告】長良川河口堰建設一時中止東京デモ報告
環境保護派の最大デモ 10・6 東京に5000人
10月6日の東京は、正午過ぎから雨が降り出した。午前中は曇っていてなんとかデモまでもってほしいと思っていたが、残念ながら雨。デモの終わりまで雨は降った。
しかし、東京港区の芝公園に集まった全国各地の「長良川河口堰に反対する会」はじめ、環境保護団体、自治労・東交など労働組合員など5000人は元気一杯だった。
参加者たちはプラカードや、カヌーパドル、釣竿にサツキマスを描き建設反対をアピール。サツキマスの形をした帽子をつけるグループなど、思い思いに河口堰反対を訴える。
夜行バスの疲れはどこへやら,今日はがんばるぞ!
●なぜ長良川なのか
長良川河口堰の問遁がどんな問題なのかは、「旗」91-6 NO.164及び91-9 NO.167 の記事を参照していただきたい。川について私は人に説教するほど詳しくない。日本でダムのない川というと北海道の釧路川と長良川の2つだと言われている。私も長良川に関わって、自分の周りにある川が気になるようになってきた。この運動に関わっている人の多くが同じ経過のようである。
私にとっても、なんとなくキャンプがしたくて、今年4月29日のNAGA払GAWA DAY(長良川現地行動)に参加して以来である。全く「一市民」として。
ただ、いま長良川に関わらずには、自然を守ることにならない気がしている。
●建設反対の怒りの雨
正午過ぎ、集会が始める。まず主催者である「長良川河口堰に反対する会」事務局長の天野礼子さんがあいさつ。「長良川の集会は、必ず晴れてきた。今日の雨は怒りの雨で、反対運動の流れを変える雨だ。怒りの雨なのです。必ず河口堰の建設を止めさせよう」
次々と挨拶が続く。長良川を愛する会、桑名と長良川を考える会(伊東さん)。
国会議員も数多く参加している。
最初は鯨岡兵輔氏(自民党)。以前に環境庁長官を務めている。「今日はお詫びを言わなければならない。今だに長良川河口堰の建設が止まっていないことを、今日参加の皆さんをはじめ、自然を守れと言う国民の声を国会に、政治に反映させていないことを」続いて、岩垂 寿喜男氏(社会党)、上田耕一郎氏(共産党)。
上田氏は「河口堰の建設が決まった時の環境アセス資料は、嘘で固めたものだった。堰の建設で自然環境が破壊されるという研究者の調査報告書を建設省は無視した」と批判。 さらに依田(社会党)近藤(共産党)議員の後で運動に深く関わり国会でも追及している旭堂 小繊陵(社会党)が挨拶した。(国会内では超党派の国会議員259名が「長良川を考える会」が結成されている。超党派で議員が挨拶するのもこの運動の広がりを示すものと言える)
●建設反対の結集‥ ‥
作家・俳優・学者・自然保護団体が続々挨拶
研究者の会、東海3県で2000名の大学関係者署名を集めた愛知学院大学の宇佐見さん、92年のブラジル世界環境会議市民レポート代表岩崎さん等に続いては、長良川運動に欠かせない皆さんの登場。
野田智祐さんは「建設省をぶっとばそう」、近藤正臣さんは「長良川を守ろうと言うのはもう遅すぎるのかもしれない。でも最後の自然を守りながら、死に絶えつつある日本の川を廷えらせよう」、夢枕獏、立松和平などなどが挨拶して会場は一気に盛り上がります。
●自治労が組織的参加、 佐藤本部書記長が挨拶
労働団体からは自治労佐藤書記長が「自治労は、地域住民の考え方を大切にすること、全国の河川がどうなっているのかを明かにすること、大企業や産業傑先の河川行政になっていないかなどの三つの観点から、自治体の中で長良川問題に取り組みたい」と挨拶。自治労からは関東を中心に500名の動員が行われた。
(私自身の組合であるだけに、やっぱり自治労と大満足)
どういうわけか、ナショナルセンターのみなさんとの紹介で、「仝労連」「仝労協」の代表も挨拶。
(動員も出来ずに、口先だけの団体のみなさんでした。しかしながら、島根県では連合島根に宍道湖の淡水化阻止の運動実績があるだけに、連合も参加してほしかったな)
●自然保護団体もアッピール‥
全員で「東京デモ宣言」確認
神奈川の相模大堰建設反対のグループ、北海道からも参加した団体、逗子のおばさんなど全国から参加の自然保護団体が続々あいさつ。
最後に「10・6長良川河口堰建設一時中止東京デモ宣言」が読み上げられた。
一部を紹介すると「32年前に立案され、23年前に閣議決定された長良川河口堰は、当初から都市用水のための利水目的で建設されている。それが途中から治水が主目的となり、今や塩害防止のためと強調されている。・・しかし、現在でも塩害は僅かであることを踏まえれば、建設省・水資源開発公団は何をもって建設を強行するのでしょうか。・・・東海3県、長島町民アンケートにおいても60%を越える住民が建設工事の一時中止を望んでいる事実は決して無視することはできない。
集会とデモの名に於て・・・長良川河口堰建設工事を一時中止することを強く訴える」
●怒りのデモ、東京を行く
いよいよデモになった。やけにマスコミ取材が多い。国会議員や俳優が参加していることもあるが、長良川河口堰問題が大きな社会問題として認知されてきたことの証左でもある。
雨の中、「長良川の自然を守れ!」のシュプレヒコールがビル街に響く。最初は人影もまばらな街を進んだが、東京駅が近付くに連れ追行く人々が何のデモかなと注目し始める。シュプレヒコールの声も一層高くなる。
歩きながら思った。妙な感じだ。狭山や平和運動、組合運動などのデモは何度もやった。しかし、「自然を守れ」というデモははじめてである。銭金を要求する叫びではない。決してイデオロギーの叫びでもない。ただ一つの川を、その自然を、川を共に生きる人々の生活を守れと叫んでいるわけだ。さわやかな気持ちでデモができた。
デモは、東京駅八重洲口を過ぎて常盤橋公園まで約5K皿を貫徹。
解散地点では、俳優の近藤正臣さんが、一人一人の参加者に激励の握手をしている姿が見られた。(彼は、翌週長良川現地で行われた集会にも参加している)
翌日の毎日新開は「環境保護派最大の集会」と表現していた。大いに満足である。
●さらに続く反対行動
こうして東京デモは参加者にとって満足の出来るものであったが、建設中止はまだ速い。翌週10/13には長良川現地、長島町で河口堰反対現地デモが行われた。
10/21には参議院環境特別委員会の現地視察に対して要請行動も行われている。「反対する会」は,今年の秋を最大の決戦と位置付けた。現在すでに河口堰は13の堰柱の内5本が完成しており,これ以上の建設を許すわけにはいかないのである。
今後も「一市民」「子供の親」として、自然を守る行動に参加して行くつもりです。
(91-11-4 大阪 H.Ⅰ)
【出典】 青年の旗 No.169 1991年11月15日