【報告】全国協議会報告

【報告】全国協議会報告
               開催日時:1991年9月21日  開催場所:名古屋

1.クーデターを始めとするこの間のソ連の動向についての感想および意見
(以下、発言者の氏名はアルファベットで現わしています。同一人の発言は同一の記号になっています。)
A
ベルリンの壁の崩壊、ドイツ統一、湾岸戦争など、ここ数年世界の動きが激しい。今回のクーデターについても、その評価を考えようとしている
うちに三日間でひっくり返って、じっくりと腰を据えて見ていられない。今回の南北朝鮮の同時国連加盟の問題もそうだが、あまりに動きが早くて ついていけないというのが感想です。
B 都委員会でも話をしたが、結局社会主義というのは社会的正義、公正、連帯というようなものを目標としたわけだが、結果としてできていなかったということだ。今、それが共産党への反発としてでてきているわけで、その誤りは根深かったということだと思う。けれども始めからこのようなものを目指したわけではない。革命当時はやはり社会主義を目指して、それが受け入れられたのだと思う。資本主義に生きている人達が資本主義を主義として認めているかというとそうではないと思う。社会主義は資本主義を乗り越えるものとして選択されたもので、資本主義社会に生きている人はそれを選択しなくても生きていける。本来、社会主義はそういう生き方を選択して始めて社会主義になる。74年前の革命当時そういう選択をすることに支持はあったと思うが、今はそうではないと思う。
社会主義の政治・経済・社会体制というものはどういうものなのか、今まではソ連なり、中国なりと上、うものがあって、それで片付けてきたが、そういう理解ではダメなんだというあたりまえのことがあたりまえのこととして理解できた。社会主義の政治・経済・社会体制というものはどういうものなのかということを考える我々自身の真撃な理論構築が必要だ。
東京の中でも、情勢が急激に変化しているので、支部会などで話にきてくれるよう要求されることがある。今日もこうして話しているわけだが、率直に皆で論議して、前に進み出るような結論を全体で共有化したい。
東京ではイキイキプロジェクトという20才代の人達を中心にした取組みを開始している。若い人達が自分達で考え、運動のイメージを創り出してやっていけるようにしたい。特に労音が青年運動というものをやっていけるようにしたいと考えている。
C ベレストロイカが始まった頃からだいぶ大きく変化してきていて「このままで大丈夫かな」と思っていた中で起こったのが今回のクーデターだった。ソ連の国民が自分達の手で民主主義を支えていくという一つの試練ではないかと思う。こういう試練はこれからも起こる可能性があると思う。
D この間の一連の流れを考えると、特に東京では平和運動においてはソ連がなにを言って、それを国際的にどう広めるかというような運動になにか正義感みたいなものを持ってやってきたということがある。そういう意味であれはなんだったんだという感想もあるし、一方で、そうではなくなっているので、もうソ連でなにが起ころうがメンバーの活動には関係なくなっているという現実がある。そういう意味で自分がこれまでやってきたことの問題、また一方で今ではソ連の動きにまったく関係なく活動やっているという二つのことがなんとなく存在している。この辺を自分の中で整理したい。
E ソ連でゴルバチョフが登場してきた頃自分は大学2年だった。自分にとってはゴルバチョフの言うことは当たり前のこととして受け入れられた。
レストイカは一人の政治家が上から始めてきたという印象だった。ソ連が70年間支えてきたものに失望を抱き始めて今回のクーデターが起こった。クーデターした人間達はこれまでのように上から押さえ付けようとしたわけだが、それが市民によって覆された。市民の力が見えてきてベレストロイカというのはこういう大きなカを生み出していたのだなと思った。
学生の頃から自分にとってはソ連のことなどより、スウェーデンとかイタリア共産党とか資本主義の中でやっているものの話のほうがおもしろかった。今日の新聞ではスウェーデンの総選挙で社民党が敗れたと報迫されているが、高度に発達した資本主義国に住む我々にとってはソ連のことよりもスウェーデンのことのほうが問題だと思う。
F アフガニスタンの問題があった頃から学生だった。ソ連を擁護するようなことをやってきたように思うが、ベレストロイカの前後から「モスクワのテレビは火を吹く」という本などを始めとしてソ連の経済的な苦しさというようなものを知るようになった。マルクスの本とかもいろいろ読んだわけだが、社会主義経済とはなんだったのかなと思っている。いわゆる社会主義における経済政策とはなにか、だれかに研究してもらいたい。
今ソ連に国民を統合するような課題・政策はあるのか疑問を持っている。いろいろな課題、形態でいろいろな運動がやられているので、国民が一つに統合されるというようなことはもうなくて、いろいろある中からジグザグで進んで行くんじゃないかなと思う。
G 先日のフォーラム関西で言われていたが、フランス革命が掲げた自由、平等、博愛を結局社会主義は実現できなかった、社会主義とは民主主義が充満したものというか、そういうものだと思うが、民主主義というものがソ連には相当欠落していた。そういう意味で今のソ連には食料・パンだけではなくて、民主主義への渇望があるというところではないか。
我々にしてみれば、やはり社会主義に対する一種の憧れみたいなものも含めてこれまでの運動があったわけだが、だからといって現実にはソ連のことは関係がない。目の前にある一つ一つの課題をどう解決していくかということが問題なのであって、そういう意味でこの間のソ連の動きについてはそんなに悲観していない。社会主義であろうが、資本主義であろうが、よりましな社会、社会システムをどう創っていくかということでやっていきたい。
やはりマルクス主義は時代の変化に対応しきれなかった、あるいは変化への対応が遅れたと言うべきか、そういう問題があったんだと思う。マルクス主義、社会主義について改めて研究しなおす時だと思う。

2.社会党改革と民主運動戦線についての討議
(この問題について討議することを予定していましたが、時間がなくなってしまったため、また社会党についてはこの暮れにも定期大会を開催する予定なので、次回の全国協議会の祭に再度討論しようということになりました。そこでとりあえず、同様なテーマで大阪で開催されたフォーラム関西への出席者から、また東京で取り組まれているイキイキプロジェクトについてそれぞれ報告を受けました。報告の要旨は以下の通りです。「青年の旗」紙上には7月15日号以来4件の投稿が寄せられています。」この問題に関して読者のみなさんのご意見がありましたら、更にお寄せくださるようお願いします。)
B
東京でのイキイキプロジェクトについての報告
これまで2回会議をやっている。労働組合とかこれまでの企業の縦割りというようなスタンスでの運動ではなく、違うようなものができる議論をしたい。若い人達は、環境問題を始めとして何かやりたいという意識はある程度もっているが、それを実現できていない。また会社に組合があったとしてもそういう論議すらできないでいる。アウトドアライフとかよく言われるが、そういうことを単に遊びとしてだけでなく、何かポリシーを持ってやっていこうとする人達も今の若い人達の中にはいる。組合の青年部でそういうことをやっている人達もいる。若い人達が今の民主主義運動の中で、自分達で決めて、自分達でできることを、今までの形態や労青ということに囚われないでやってほしいと提案している(こちらが提案する以上に囚われていないので因ってしまう面もあるが)。そして原則として30才台は参加しないでということでやってもらっている。
このような議論の場を作っていけば、労青とは何なのかという論議もまた出てくる。早い話、労青の趣意・規約・行動綱領を認めて入ってくるわけだけれど、実際その通りの運動をやっている人はといえばほとんどいない。自分達で考え、自分連で決めて行うということを大事にしたい。
「おじさんイキイキプロジェクト」を作って、子持の人はそれにあった、生活に近付いた活動を考えたらどうかと、逆に提案されたりしている。
G (社会党改革と民主運動戦線について討議された)フォーラム関西への出席者からの報告
先にも言ったように、社会民主主義の問題に関してその理念のことが話され、また社会党の改革に関して報告がされていた。社会党改革に関しては、シャドウキャビネットであるとか院内総務会などを作ってもっと幅広い政策論議を深めようとしているわけだが、実際に存在する自衛隊と非武装中立の理念との間にあるギャップ、世論調査によれば自衛隊の現状維持を国民の64%が認めている中で、従来の総評・社会党の意見は即時解散に近いものだったわけでこの世論とのギャップ、ここらあたりが問題になっているのではないかと報告された。また、社会党に今なにが問われているのかと言えば、自民党政権の継続を支持する・しないにかかわらず、少なくとも独占貸本のために行われる政治・政策に少しでもブレーキをかけ、社会的公正であるとか、所得の再配分であるとか、そういうものを行わせていく一つの勢力として社会党を位置付けるのかどうかということだ。今行われている党改革論議は、ややもすると政権を取るということだけの手法的部分に終わりがちなので、本来社会党が果たす役割と、それを実現する政策についての論議、そしてそれへの国してそれへの国民の支持を広げていくこと、そういうことの中で改革論議を進め、その中で政権を目指すべきだ、との報告がされた。
以下自分の意見としては、社会党を支えているのはなんだかんだ言ってもやはり、先ほど言われた、縦型の大労組だ。議員の候補一人とっても参議院の比例区に見られるように大労組幹部だ。つまり、横型の、ネットワーク型のというか、そういう運動が欠けているわけで、それをどういうふうに作るかが重要だ。
労青が掲げている反独占民主主義、この基本理念はソビエトのベレストロイカにいかなる情勢の変化があろうとも、かえってこのテーゼが重要だと思っている。その中身の探さ、質の部分で労青と社会党とは違うと思っている。残念だが、社会党の党改革を主張している人達でも、いわゆる縦型の運動・考え型の基盤に立っている人が多い。
社会党はこれからの日本の民主勢力の中心的役割を果たしていくだろうと思います。民主勢力の結集軸となっていくだろうと思います。そういう意味で社会党はキッチリ評価して、また、だからと言って社会党にたよりきるだけではできないこともあるんだということだと思います。我々としては、いろいろな運動を通じて、またいろいろな運動を具体的に提起して、そういういろいろな大衆運動に支えられた社会党にしていくということではないかと思います。
B 「日本の権力構造」という本があって、その中で自民党がいかにして政策を作り上げてきて、実行しているか、自民党そのものがどう動いているかが書かれているそうです。特徴としては、日本は最終責任者のいない社会で、また自民党そのものが官僚の組織になっていて、参議院の比例区では軒並み官僚出身者が上位に名を連ねるのだそうです、その訓練された官僚が政策を作り上げているということ、また自民党は派閥の調整によって政策が決定されるということだそうです。まあ今回の小選挙区制導入の動きは派閥調撃政治の弊害が強くなり過ぎたのでこれを断ち切りたいというのが自民党の一部にあるのだと思います。
一方、社会党であるとか連合であるとかは、どこまで知っているかというとまだまだで、そういう意味では変えるところはどこなのか、それをどう変えるのかという政策を自民党に対する代案として作成していくのはまだ難しい。まずできるのは、いかに民衆の側が政策決定に入って行けるかというシステムを作ることが必要だと思う。
労青の運動で言えば、これは 全国協議会結成の際にも提案されていましたが、もっとオープンなネットワーク型の運動が必要だということだ。例えば自治労の人は自治労のことしか知らない、というようなことがあるが、そういうのを変えていかないと駄目だ。そういう意味では、やはり連合はネットワークとして広がって行ける可能性があるし、我々はそのように関わるべきだ。
反自民・反独占という言い方があるが、それでいいんじゃないかと思う。自民党と独占で全てを決めているわけだからそれを変えていくことが大事だと思う。
G 連合・ナショナルセンターの役割は単産の利害を乗り越えた方針を出していくことだという提案はフォーラム関西の際にもあった。また今年の自治労の大会でも今の提案に関わるような論議があった。公共事業とそれを支えている民間企業で働く人々との連帯というようなことだった。また、自治労にしてみれば、共済年金に比べれば国民年金は不利だ、そこで自らの既得権として有利な共済年金を守るだけでいいのかという問題もある。こういうことはやはり連合などで論議されるべき問題だ。
大きな声を出すところだけが強いということではなく、いわゆる縦型ではなく、横型の運動、日本を変えていくような運動を作ることが大事だ。(以下略)

【出典】 青年の旗 No.169 1991年11月15日

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