【投稿】「国連平和維持活動等協力法案」を巡って
11月20日の夕方、東京の日比谷野外音楽堂にて「つぶせPKO法案、生かせ憲法9条11・20全国集会」が「日本はこれでいいのか市民連合」などの呼びかけで開催されました。会場には組合の赤旗が数多くはためき(主力は全労協傘下の組合だということです)、広島・京都からも活動家が参加され、壇上では10名以上の社会党議員が紹介されるなど、主催者発表で4千人を越えた参加者の数と共になかなか熱気溢れる集会・デモでした。当日、埼玉のKさんが「PKO法案の廃案を求める個人の声明」と題して声明文を集会参加者に配っていました。そこでKさんにお願いしたところ、その「声明文」を青年の旗に掲載させていただくことができました。
PKO法案は、衆議院の特別委員会で自民・公明両党によって強行採決されたことに対する強い批判が起こっており、またこの国会運営に対して自民党の内部からも批判が生じています。それでも政府・自民党は国会の会期を延長してでも法案を成立させるという姿勢を採っており、PKO法案を廃案にすることができるかどうかは厳しい状況にあります。
以下に掲載するKさんの「声明文」が読者のみなさんのPKO法案に対する行動の参考になれば幸いです。
「PKO法案の廃案を求める個人の声明」
1.これまでの国連の平和維持活動(PKO)は、紛争の解決のために貢献してきました。私はこれを高く評価すべきだと思います。
2.湾岸戦争後、アメリカはPKOに積極的になってきました。イラク・クウェート停戦監視団にはアメリカも参加していますが、これまでPKOの原則であった紛争当時国の同意を取り付けぬままの一方的なPKOです。アメリカが自らの兵器輸出や巨大な軍事力の保持を問わず、イラクなどアメリカの国益に反する国家の軍備管理に行うために、国連を勝手に利用しようとすることに私は反対です。
3.日本政府はPKOの説明はしても、その哲学を語っていません。ただ国際貢献、国際貢献というだけです。どのような世界をめざし、そのためにどのような外交政策を持つのか、が語られ、その文脈でPKOも語られるべきです。政府はアメリカとの友好関係の維持のためにPKOに自衛隊を出したいのではないでしょうか。
4.日本がPKOに自衛隊を参加させることは、国際貢献にならないでしょう。それは、アジアの国々の賛同どころか、その懸念を呼び起こしています。他国の脅威に感じられることがどうして国際的な貢献なのでしょうか。
5.このアジアの国々が不安に思うのは当然です。自衛隊は既に世界第3位ともいわれる戦力を保持しているからです。そして、他国のことなど一切かまわず、日本企業の利益のみを第一優先に掲げて、いまや世界のGNPの15%にまで占めるに至った日本の経済力が他国の恐怖をかりたてているのです。日本が軍事力を背景に政治大国化するのではないか、という当然の懸念があると思います。
したがって、日本は第一に国際協力のために軍隊以外の人的協力をすべきです。第二に自国の経済発展に直接結び付かない、国際的な経済協力をするべきです。
6.日本は戦後45年過ぎても、アジアに友人とよべる国を持っていません。過去の戦争の事実を一貫してあいまいにし、その責任を国家としてうやむやにしてきたことに原田があります。犠牲者の遺族や被害者の方々が亡くなる前に、今、すべての戦争被害者に村して補償を行うべきです。このままでは、国際的に信用のおけない国として、いつまでも記憶されるに違いありません。
7.今回のPKO法案は廃案にするべきです。民社党はPKOへの参加の国会承認をすれば賛成するという方針ですが、私は反対です。国会が国民の意思であるとすれば、日本の国民自身が自衛隊の海外派兵に賛成する形になるからです。これは、他国から見れば、日本の平和主義の放葉であると見られるでしょう。PKO法案の修正を考えるとすれば、自衛隊貝の参加を一切認めない形でしょう。および軍事的任務の項目を削除するべきです。厳密に文官に限るべきです。
8.最後に今の自衛隊をこのまま放置してはいけません。根本的に削減縮小するべきです。ソ連の脅威の理由に肥え太ってきた自衛隊です。その脅威がなくなったのですから、その存在意義がなくなったわけです。国会決議で、削減縮小の方向性を早急に打ち出すべきです。これは与野党の責務であると思います。そして、今の違憲の存在である自衛隊をどう合憲の状態とするか(与党であるだけでなく、野党も認めるように)が問われています。PKO法案よりも、自衛隊をどうするべきか、が今日の日本の重要な政治的課題であると思 います。 (埼玉 K)
【出典】 青年の旗 No.170 1991年12月15日