青年の旗 1985年8月1日 第102号
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【主張】 国鉄「分割・民営化」阻止
六月二二日、中曽根首相は、仁杉国鉄総裁を更迭し「分割・民営化」推進の杉浦体制を確立させた。これにより七月末には、国鉄再建監理委員会の答申が出されることは決定的となった。
答申の内容については、①北海道・四国・九州を分割する。本州は三つに分けて、いずれも民営化する②地方交通線のうち八五線程度は第三セクターやバスに転換し、残る九〇線程度はそれぞれの分割会社にまかせる③長期債務は国(税金)と新会社の負担、更に土地の売却などで処理する④要員は二〇万人前後に減らすなどがほぼ確定的だと言われている。
<「分割・民営化」のもたらすもの>
しかし、答申通りに北海道を具現化してみると、要員は現行より二万二千人削減し一万四千人体制とし、廃止線による減収・物件費の三分の一などを見込んで試算してみると依然として千四百億円を超える赤字が計上されることになる。
更に、「分割・民営化」は当然、次のような結果をもたらす。①国民の「移動する権利」を奪ってしまう。採算が取れない路線は営業停止、廃止へと進むことになる。また、分割されれば自社内優先の輸送となるため、乗り換え、乗り継ぎや列車の打ち切りが増える。営利第一主義となるため、運賃の大幅値上げや地方自治体の負担増を招く。ダイヤの設定や運賃制度の全国一律制は崩れてしまう。
②車両の運用効率が悪くなるし、運賃の精算その他運営・設備面でも余分な労力と経費が必要となる。通信設備の分断で安全の問題も深刻になる。
③国鉄の膨大な用地が財界や一部の政治家に食いものにされてしまう。国民の共有財産が利権に利用され、切り売りされて財界の手におさめられる。
④労働者は会社ごとに労働条件に格差をつけられ、権利の″切り下げ競争″によって安全が脅かされることになる。
⑤国鉄の「分割・民営化」はローカル線の廃止につながり、地域の産業の発展にも支障をきたす。住民の足が確保されなければ生活が破壊され、地方自治体の存立を左右するほど大きな影響がでてくる。
<「分割・民営化」反対の多数派形成を>
これに対して、国労は、①すでに取り組んでいる、自治体首長の意見書や地方議会の決議を採択を求める要請行動、署名運動を強化する。(今年六月末現在で三八七自治体が「分割・民営化」反対の首長意見書や議会決議をあげている。) ②七月八日から十二日までは監理委員会に対して「分割・民営化の答申を出すな地方の声を聞け」の連続抗議行動を起こす。③二二日から二六日には全国各駅で一斉宣伝と座りこみを実施する。④答申が出された日には全国で抗議集会を開く。
⑤八月五日、全職域で抗議ストを行う、ことを決め、態勢固めをしている。
一方、動労も六月二五日から定期大会を開き、分割民営化反対、ローカル線廃止反対、雇用確保などの基本方針を再確認するとともに、総評の国鉄再建闘争本部に一定の闘争指令権を委譲することなどを内容とした方針を決定した。
こうした事態を受けて総評は、七月四日、国鉄再建闘争事務局会議を開き、第七三回総評定期大会に特別議案として提出する国鉄再建闘争方針(案)と国鉄再建闘争本部の設置について討議を行った。今回発表された国鉄再建闘争方針(案)は、総評が五月八日、九日に開いた「国鉄再建政策討論集会」を皮切りに、全国で開かれたチユーター会議や幹部学習会で、「国鉄再建政策-二二世紀へむけての鉄道」(素案)の説明と今後の闘いについて交流のなかで出された意見などをとり入れ、まとめられたものである。
方針案は闘いの進め方について、①国鉄監理委員会と中曽根政権による国鉄の「分割・民営化」を阻止し、真に国民のための国鉄再建政策を国会で議決させるため、国民多数派形成をめざす一大国民運動を展開する。具体的には有権者の過半数を目標とした署名運動を広く国民諸階層に呼びかけて実施する。
②国鉄ローカル線の廃止を阻止するため実効ある運動を対象地域住民、自治体はもとより、都市に住む国民諸階層にも呼びかけ、全国民が参加できる「ローカル線廃止をやめさせる国民運動」を展開する。
③国鉄労働者の首切りを許さない闘いを、すべての労働者の闘いとして、国労・動労の組合員はもとより、総評傘下全組合員が一丸となって団結して闘う。
この三つの柱を基本に、総評全組織をあげて闘争態勢をとるために、総評に国鉄再建闘争本部の設置をする。
具体的な取り組みについては、国鉄監理委員会答申に抗議する行動として①国鉄監理委員会前や国鉄本社前などで、座り込み闘争を展開していく。こうした運動をすでに取り組んでいる北海道、四国九州をはじめ全国各地域の人々に呼びかけ実施する。また、各県に結成されている国鉄再建闘争対策委員会にも、抗議行動を各地方自治体を含め、広く地域住民行動として組織するよう要請して取り組む。
②「分割・民営化」答申が提出された時には、直ちに国鉄監理委員会に村する抗議行動を実施する。
③更に、八日四日には全国各地において、「答申」抗議集合をメーデー開催地域規模で実施する。中央集会は八月四日、明治公園で開催する。
④中立労連、新産別、全民労協、同盟など主要労働団体に国鉄再建闘争の国民的意義と労働者連帯を訴え協力を要請する。
⑤社会党をはじめとする各野党はもちろんのこと、与党新自由クラブや自民党の国会議員にも、国鉄監理委員会の「分割・民営化」に反対し、真に国民のための国鉄再建政策を国会で議決するよう、中曽根政権として院内で闘うよう要請する。
⑥中曾根政権が国鉄問題を政策争点として国会解散総選挙に打って出てきた時には、総評は全組織力を集中し、国民にその選挙の重要性を訴え、逆に中曽根政権を打倒するため全力投球を行う。
<一大国民運動の展開を>
方針案も指摘するように国鉄再建を巡る政府と財界の動向は必ずしも一枚岩の対応ではなく、複雑な政策志向と利権によってなりたっている。
先の仁杉国鉄総裁の更迭にみられるように国鉄問題は中曾根政権の維持、延命にもかかわる重要な政治的意味あいをもっている。後退する「増税なき財政再建」の下で、国鉄問題は中曽根自民党政権自らの自らの首をしめる結果となる要素もはらんでいるのである。
臨調-行革路線粉砕に向け、民間労組も含め全ての勤労人民が総評の旗の下に総結集し、「分割・民営化」反対の一大国民運動を展開しよう。