青年の旗 1986年6月1日 第112号
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【主張】 核実験全面停止の実現にむけ
–ソ米首脳会談の即時開催を–
米レーガンは五月二十七日、戦略攻撃軍備に関するソ米間の法的合意文書-一九七二年の暫定協定と一九七九年のSALTⅡ条約の今後の順守を米国が事実上拒否する旨を声明した。
SALT条約の議会への批准を一貫してサボタージュしてきたレーガンではあるが、調印以来条約そのものはまがりなりにも守って来た。「新たな軍拡により核弾頭が増加するから枠を突破する」という。条約の本末を転倒させた論理は断じて許すわけにはいかない。これまでのSALTⅡの枠内の軍拡から大きく歩み出そうとするレーガンの態度は明確である。自らが選択したSDIを軸とした核兵器増強計画の完全実施に踏み込んだことである。
<広がる核実験停止の闘い>
ソ連は昨年八月ハ日から一方的に停止していた核実験を一九八五年末まで延期し、同時にレーガンに対して、このモラトリアムに応じるように呼びかけてきた。更にソ連は、ゴルバチョフ・レーガン首脳会談後もモラトリアムの継続を三月一日まで再延期してきた。
又、二月二十八日、アルゼンチン、ギリシャ、インド、メキシコ、タンザニア、スウェーデンの非同盟諸国の首脳は『宇宙での軍拡を防止し、地上での軍拡を終わらせる』ことを助けるような具体的措置が今日までは何ら合意されていないことに懸念し」「両国首脳会談が軍拡競争を停止する具体的ステップについて合意する極めて重要な機会となる」よう「首脳会談までの期間、あなたがた(ソ米両国)にいかなる核実験も行わないこと」そして「包括的核実験の禁止協定の交渉を促進する」ことを求める書簡を送った。
この書簡に答え、ソ連は更に今年の八月六日までの核実験停止を延長した。一方レーガンは、非同盟諸国そしてソ連の提案に対して拒否を続け、現実に核実験を繰り返しているのである。
核実験の停止は核軍拡競争に急ブレーキをかけ、核兵器の質的改良と新型核兵器の開発を停止し、核軍備廃絶に至る実際的な道に入ることを可能にする。
米議会下院の軍備管理・軍縮特別公聴会での証言では、「米核実験の目的は九〇%までがSDI兵器の開発・研究にある。核実験では核エネルギーを使用するエックス線レーザー兵器の研究が大きな比重を占めている」(エネルギー省、オフト防衛担当次官補代理)、「SDIでは核エネルギー兵器(NDEW、エックス線レーザー等)の実用化の可能性を探ることもきわめて重要」(国防省・ギヤフニー核戦力・軍備管理担当次官補代理)と述へている。
この発言に示される様に今の核実験はSDI計画と密核に結びついている。核実験の停止に向けた闘いはまさに、レーガンのSDIに対して、足かせをはめる重要な闘いとなっている。
<ソ米首脳会談の即時開催へ>
五月十四日、ゴルバチョフ・ソ連共産党書記長はテレビ演説の中で「私は、我々を受け入れてくれるなら、西ヨーロッパのいかなる国の首都でも、あるいは広島でも、早急に合い、核実験の禁止についての合意を達成しょうとのレーガン大統領への提案を確認します」と呼びかけた。この間リビアヘの米レーガンの侵略により遠のいていた首脳会談がクローズアップされている。
核実験を全面的に歯止めをかけ、核軍縮へ大きく歩み出す可能性を持つソ米首脳会談の開催地の一つとして、日本、そして広島を選んだ事に対して、我々は歓迎する。そして、広島の荒木市長も広島での首脳会談を歓迎する旨の書簡を送っている。
一方、中曽根はゴルバチョフ書記長の広島での首脳会談の開催の呼びかけに関して「公式な通知を受けていない」 「広島を政治的に利用したら困る」と述べている。SDIに積極的に協力し、国内で軍拡を押し進める中曽根が如実に表われている。
今や、核実験の即時停止、宇宙への軍拡防止に難色を示しているのは、レーガンや中曽根をはじめとした帝国主義者と一部軍需独占体のみである。レーガンさえ応じればソ米の首脳会談は実現できるのである。今求められているのは、彼らを包囲する労働者階級を先頭とした闘いである。