青年の旗 1989年12月1日 第155号
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【主張】 「労働運動新時代」に新連合の闘われる課題
十一月二十一日「日本労働組合総連合」が結成された。
一九八〇年に労働戦線統一推進協議会が結成されて以降、様々の論議と組織再編を重ねての一つの到達点である。
この日、新連合の結成に先立ち、総評の解散大会が行われ、三十九年の歴史の幕を降ろした。これで、総評、同盟、中立労連、新産別の旧ナショナル・センターはすべて解散し、まさに「労働運動の新時代」の幕開けとなった。
すでに連合は、賃金・時短、さらに七月の参議院選挙では「追い風」に乗り、独白候補十一名を当選させるという政治的な強大な力を持った組織となっていた。
これに官公労働者が合流し、八〇〇万人の組織としてスタートする新連合は大きな可能性を持っている。
しかし、なにもかも手放しで喜ぶというわけにもいかない。新連合が解決しなければならない課題は数多く存在している。
第一に、新連合が掲げる「ゆとりある豊かな社会づくり」をどう具体化していくかである。
連合は賃金闘争とともに労働時間短縮を、重要な運動の柱として取り組み、そしていくつかの成果をあげてきた。これに官公労の「閉庁-時短闘争」が合流することによって、この運動はさらに前進するものと思われる。しかし、制度として獲得した時短も実際に使えなければ「絵に書いたモチ」にすぎない。これまでも、有給休暇の取得率が低いなかで、今後どう実際に時短を進めるか、産別内外の調整も含め、新連合の役割は重要である。
さらに、新連合結成は、社会党の躍進、好景気の持続というかってない好条件の中である。今後、景気の後退が再びやって来た場合、かってオイルショックの時、労組として合理化を受け入れた事態の再来を招くのか、それとも「ワーククシェアリング」などによって、貸金水準を守り、雇用も守ることができるのか。後者の選択に向けて「力と政策」を最大限発揮しなければならない。
第二は、制度、政策闘争である。現在世界は、社会主義国の変化も含め、政治・社会・経済・文化・生活などで転換点を迎えている。たとえば、二十一世紀に入れば高齢化社会が否応なしにやってくる。これに対し、定年後三十年も含めた人生プランの確立を進めなければならない。すでに、民間単産では、こうした取り組みを重要課題として推進している組合も多くあるが、なにより「豊かな老後」を保障する年金制度や、「福祉施設」の拡充が必要である。
さらに、教育・医療・環境・平和・人権など新連合が担わねばならない課題は数多く存在している。この様な運動の推進にあたっては多くの蓄積を持つ旧総評系単産、とりわけ自治労・日教組の役割は大きなものとなるだろう。
これに対し、企業内組合運動が中心だった単産からは戸惑いや反発もでるだろう。核兵器廃絶や軍縮、部落差別撤廃といった課題は統一して取り組まれるだろうが、特に「原発」を巡る問題では「脱原発」派と推進派の単産が新連合内に存在することになり、当面新連合としては、反対も賛成も決められないだろう。
しかし、世界のすう勢は明らかに、脱原発の方向に向っており、近い将釆結論が出るに違いない。
いずれにせよ、新連合が掲げる「人間優先の福祉社会づくり」のためには、大担にこれまでの活動領域から、踏み出す運動が求められており、多数派を獲得するためには、市民運動や地域社会との結びつきが不可欠なのである。
第三に、ニれらの要求を実現するためには、大衆運動の強化とともに、政治変革も重要である。既に、新連合は参議院において独自の勢力を形成しているが、今後、衆議院はもとより、首長・地方議員クラスでの連合勢力の進出が必要である。それは、社・公・民の再編も含めた反自民・民主勢力の統一を基調とする一大政治勢力の課題につながってくる。
ソ連邦のベレストロイカ・東欧の劇的な変化の中、国際情勢は確実に平和と東西協力の時代へと移行している。今や体制の違いをことさら強調した論議は今日的情勢には合わないこととなってきている。
この様な状況を踏まえ、「西側の一員」ではなく、「世界の一員」の立場から世界平和と経済不均衡の是正を進める政治的立場に一刻も早く連合は立つべきである。
連合の課題の第四は、中小企業労働者やパート労働者の組織化である。産業構造の変化により、雇用形態は大巾に変ってきた。
昔ながらの本工中心主義にいつまでも固執するようでは圧倒的な未組織労働者からは、エゴ集団としか見られない。パート労働が「本来あってはならない労働形態」から、社会的位置を持つようになった現在、パートはパートとしての諸権利を保障させる取り組みが重要となっている。中小企業労働者の組織化も、いわゆる「下請け」 「関連企業」の組織化ももちろん、よりきめ細かい運動の為には、地域レベルでの取り組みを強力に展開しなければならない。その為には、新連合の地域-行政区単位での組織建設を早急に進めるべきである。
こうした地域での組織確立は、労働運動プロパーの課題だけでなく、福祉や平和・人権といった民主主義の発展にも必ず貢献するだろう。
もう一つの組織強化の課題としては、反連合勢力、とりわけ日共(全労連)との関係がある。
日共は百万の集票組織を維持するために、多くの労働組合を分裂させ「全労連」を結成した。この組織に未来はないことは明らかである。なぜなら、日共「全労連」はこれまで歴史の流れの中で否定されてきた、スターリン主義に基づく、社民主要打撃論、赤色労働組合主義、伝導ベルト論など、非民主主義的要素を全て狭い世界の中に凝縮して、合わせ持つ組織だからである。
この間の東欧の事態に関し、日共は「ソ連の政策の押し付けが原因」などと言っているが、そもそも日共が批判していたのは、ソ連の対西側外交政策であり、ソ連国内のスターリン主義は批判してこなかった。まさに、東欧諸国で問題となっているのは、国内の民主主義の問題であり、問題のすりかえである。
それでも日共は「自由と点主主義の宣言」などを持ち出してくる。東欧諸国も外側(西側諸国)に向っては、平和だとか民主主義とかを唱えてきた。しかし、自分達の権力下でする内側(国内)ではまったく違う現実があった。
日共も自民党に対してや実現しない日共政府の幻想の中で「自由と民主主義」をいくら叫んでみても、現実に自分が支配する小さな世界=労働組合の内部でそれが保障されているかが問題になることを認識しなければならない。