<<総花的なあいまいさ>>
7/5の東京都知事選以降も、新型コロナウィルス感染の増大には、一向に歯止めがかかっていない。むしろウィルス感染は東京・大阪など全国各地で拡大しており、安倍政権や東京・大阪両知事をはじめ、日本のパンデミック危機対応政策が完全に破綻していることが明瞭になってきている。都知事選から20日間経過した7/25現在においても、東京都内で新たに295人の新型コロナウイルス陽性者が確認され、7/24には過去最多の366人、陽性者が200人を超えるのは5日連続、100人を超えるのは17日連続、7月に入って200人を超えるのは12回目、7月の合計では4750人と感染拡大は以前よりもさらに危険性と深刻さを増しているのが実態である。
それにもかかわらず、現職の小池百合子氏が圧倒的な強みを発揮し、「感染対策」はしているふりだけで、実際は感染拡大を放置してきた現職知事の圧勝を許してしまったのである。それはなぜなのか。こうした事態を許している野党陣営には、この新型コロナウィルス危機に対する政策対決、政治姿勢における根本的欠陥や問題点が指摘されるべきではないだろうか。
本来、野党陣営が獲得すべき無党派層、支持政党なしの人々の多くを小池氏にかっさらわれたのはなぜなのか、そのことが問われるべきであろう。なにしろ、宇都宮氏が獲得したのは84万4151票で、過去2度の出馬で獲得した票数(2012年96万8960票、2014年は98万2594票)をさえ獲得できなかったのである。共同通信の出口調査によれば、立憲民主党の支持層の31.6%、共産党支持層の18.4%までもが小池氏に投票しているのである。結果として、選挙権を行使した有権者の6割近くが小池氏に「望外の支援」を提供したのである。
前回の投稿では、都知事選に臨む野党共闘、統一戦線のあり方について触れたが、より根本的な問題は、政策対決における、とりわけコロナ危機対策における野党陣営の政策の総花的なあいまいさ、いやむしろ感染危機対策の欠如ともとられかねない、対決点の不明確さである。その一端は、選挙戦最中の下の画像(上、下、ともに宇都宮候補陣営)にも現れている。それぞれの要求や政策は、至極当然でまともではあるが、政策的対決点とはなりえなかったものである。
<<基本的インフラとしての「PCR検査」>>
現職・小池陣営の最大の弱点は、コロナ危機対策としての「PCR検査」拡充の明らかなネグレクトであったし、現在においても多少は拡大されはしたが、東京都の人口比からすれば微々たるものである。それ故にこそ、感染危機が以前にもまして拡大しているのである。
宇都宮氏、山本氏ともども、この最大の小池都政の弱点を都知事選の対決点の焦点に据えることができなかったところにこそ問題の所在があるのではないだろうか。選挙戦終盤になってようやく、「PCR検査の抜本的拡充」などと、言葉では並べられてはいたが、最大の対決点とはなしえていなかったのである。現職・小池陣営はこうした野党側の弱点に乗じて、暗に「PCR検査」拡充は医療崩壊を招きかねないという脅しを振りまき、「夜の街」以外にどんどん感染が拡大しているにもかかわらず、「夜の街」叩きやそれに対する「危機管理」は「私が率先してやっている」のだという、いかにも「やっているふり」で、かろうじて選挙戦を乗り切ったのだとも言えよう。
一時はアメリカで最大の感染拡大地であったニューヨーク州、ニューヨーク市では、7/22には死者がゼロとなり、感染者数も10人前後に抑え込んでいる。その背景には、トランプ大統領のPCR検査抑え込み政策にくみすることなく、ニューヨーク州は750カ所のPCRセンターを整備し、徹底した「PCR検査」の拡大政策を実行した結果が反映されている。検査は無料であり、可能検査数は1日最大約7万件以上にものぼり、希望すれば何度でも無料で再検査が受けられる体制を作ったのである。さらにニューヨーク州では、こうした大規模な検査と同時に濃厚接触者の追跡(トレーシング)調査にもヒト、予算を確保し、この追跡をおこなうための「トレーサー」3000人を新たに投入して、感染拡大を阻止してきたのである。人口2000万人の北京市では、800万人にPCR検査を実行し、感染拡大を抑え込んでいる。対して、東京都では、7/24までの過去7日間平均の検査数は2千人で、7/20に過去最多の検査件数がようやっと約4930件という異常な少なさである。東京都の感染拡大は、小池都政ならびに安倍政権の「PCR検査」を抑え込んできた「不作為」の結果なのである。
今や、「PCR検査」を無料、簡単、迅速、かつ正確にすること、何度でも再検査が無料で受けられること、追跡調査が行われること、これらが、パンデミック危機に対する欠けてはならない基本的インフラと言えよう。野党各党は、共闘が実のあるものとなり、圧倒的多数の有権者を引き付ける、パンデミック危機を克服する、その体制に向けて大胆な政策を早急に提起すべきであろう。
(生駒 敬)