【投稿】ミサイル防衛の呪縛と新たな軍拡

新型イージス艦で決着

 菅政権は、新型イージス艦(イージスシステム搭載艦)2隻の建造、長射程ミサイルの開発などを、12月18日の閣議で決定することが明らかとなった。
これとは別に安倍の「遺言」である「敵基地攻撃能力保有」は先送りされたが、「敵基地攻撃能力」を持つ兵器の開発は、菅政権による新たな軍拡の開始である。
今回の決定の柱であるイージス・アショア計画の代替手段としては、①新型イージス艦(建造費約2500億円)②商船規格イージス船(同約2000億)③「海上要塞」(同約2800億)④「海上発射台」(同約2600億)の4案が検討されてきた。
このうち②~④は戦時には標的になるだけで、①の選択を誘導、正当化するための、非現実的オプション、当て馬であった。
しかし、新型イージス艦については当の海自が「現場の負担が重たくなる」として難色を示していた。

イージス艦は空母護衛用 

 そもそもイージスシステムは冷戦下、アメリカに於いてソ連の同時多数の対艦ミサイル攻撃から空母を守るために開発されたものであり、1980年代からアメリカ海軍はイージス艦の建造を進めていった。
一方、ソ連の弾道ミサイルに対しては、アメリカ本土に配備される各種弾道弾迎撃ミサイルによる防衛システムが構築されてきた。このように艦隊防衛を担うイージスシステムと弾道ミサイル防衛システムは別々の兵器体系だったのである。
しかし90年代に入り、冷戦終結―ソ連崩壊以降、新たな「脅威」とされる北朝鮮やイラクが保持する中距離弾道弾、やがて開発するであろう長距離弾道弾を迎撃するという新たな任務が設定された。これによりアメリカのイージス艦の一部は弾道ミサイルに対応するための改修が進められることになる。
翻って日本ではアメリカに追随する形でイージス艦の整備が始まり、1993年に「こんごう」型一番艦が就役した。空母を持たない日本がイージス艦を保有するのは、「ソ連に対抗するため」であったのが、建造中の1991年にソ連が無くなってしまったのである。

日本は北朝鮮専用 

 そこで日本も「北朝鮮の脅威」を口実にイージス艦建造を正当化し、2000年代に入り既存艦の弾道ミサイル防衛(BMD)改修と増勢が進められ、21年には当初からBMD能力を持つ「まや」型2隻とあわせ8隻体制となる予定である。
こうして日本は保有するイージス艦の100%をBMD任務に就かせることとなったが、これは世界的に見ても異例である。
本家のアメリカでもBMD対応が可能なイージス艦は保有数の約30%であり、主要任務の原子色空母の護衛の他、巡航ミサイルでの対地攻撃、パトロール(航行の自由作戦含む)など運用は多岐にわたっている。
他のイージス艦保有国、韓国、オーストラリア、スペイン、ノルウェーではBMDは任務となっていない。
こうしたなか2010年代になり、中国海軍の増強が加速度的に進められ、尖閣問題で日中間の緊張が激化する事態となり、海自は北朝鮮から中国へ「脅威の乗り換え」を進めようとした。
しかし安倍政権は北朝鮮の脅威を「国難」などと政治的に利用し、イージス艦をパフォーマンスに動員してきた。
本来なら多様な任務に使えるはずのイージス艦は、北朝鮮のミサイル対応を理由に運用をすすめてきた為、身動きが取れない事態となってしまったのである。

緊張緩和こそ負担軽減

 自縄自縛の極みであるが、事態はさらに混乱している。安倍は北朝鮮の脅威を言い続ける一方、中国に対抗する「自由で開かれたインド・太平洋」という大言壮語を唱えた。
対中戦略に合わせて「いずも」型2隻の空母への改装が始まったため、これらを護衛する艦艇が求められることとなる。
アメリカでは空母一隻に任務に合わせ3~6隻のイージス艦が護衛につく。イギリスでも2隻の空母を経空攻撃から護衛できる非イージスミサイル駆逐艦は6隻ある。
しかし日本ではイージス艦以外に、空母(艦隊)を防衛できる同様の護衛艦は「あきづき」型の4隻しかない。しかもこの4隻はイージス艦を護衛するという目的(建前)で建造された為、運用に縛りがある。
潜水艦に対してはまだ余裕があるものの、軍拡の口実としてきた弾道ミサイル防衛が、連鎖的にいよいよ重荷となってきたのである。
海自はこれらの艦艇をBMD任務から外して、平時から東シナ海、南シナ海からインド洋、アラビア海までのパトロールへ投入することを狙っていた。

その意味でBMDを陸自に担わせる官邸主導のイージス・アショア計画は、海自にとって「天佑」だったのである。しかし河野太郎のちゃぶ台返しによってBMDの任務は海自に戻ってきてしまい、対中シフトへの影響は必至である。
財源、人員が窮屈な中、今後約5000億円とされる建造費や約600人の乗員を捻出する為に、部隊へのさらなるしわ寄せが拡大するだろう。「現場の負担軽減」のためには、野放図な軍拡ではなく、近隣諸国との関係改善、緊張緩和を進めなくてはならない。
(大阪O)

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