【投稿】2020年=世界経済の93%が縮小--経済危機論(35)

<<「金融の崖の危機」BISの悲惨な警告>>
12/7、世界各国の中央銀行相互の決済を行う組織であるスイスのバーゼルに本拠を置くBIS(Bank for International Settlements、国際決済銀行)は四季報(Quarterly Review)の中で、「新型コロナウイルスの経済的ショックは、現代の平時において経験された最大かつ最も特異な世界的ショックです。これは、パンデミックと同期した封鎖によって引き起こされ、その結果、機能しなくなり、世界的なサプライチェーンが混乱し、総需要が急激に減少し、深刻な景気後退につながりました。」と述べ、「世界的なパンデミックと同期した封鎖によって引き起こされた現在の景気後退は、通常、銀行危機に続くものとは大きく異なります。それでも、銀行のバリュエーションは、金融市場のストレスと景気後退の影響を反映して、圧力を受けています。」、「金融セクターもショックによってストレスを受けています。多くの国で、銀行の株価は2020年の第1四半期に急落し、他の企業の株価よりもさらに下落し、依然として危機前の水準をはるかに下回っています。一部の国では、株価の下落は30%を超えています。」とし、さらに「私たちは危機の流動性から支払能力の段階に移行しています」と警告している。世界各国の金融機関の支払能力そのものが問われるという、深刻な事態への警告である。
この警告の記者会見の中でBIS金融経済局の責任者であるクラウディオ・ボリオ

(Claudio Borio)氏は、「今後さらに破産が予想されるはずですが、過去の基準では信用スプレッドは非常に低く、実際、銀行はリスクの価格設定をより慎重に行っていますが、資本市場では同じことは見られません。」、「見通しはかなり不確実であり、(緩和マネー・ヘリコプターマネーの異常さについて)少なすぎるというよりも、多すぎるという側面」に不安を表明しながらも、それを認めざるを得ない苦渋の立場を吐露している。事態を打開するなすすべを提起できない、その勧告や警告が各国中央銀行や政府によって無視されてきた、それでも金融危機の崖に立ちすくみ、警告せざるを得ないBISの悲惨な警告である。

<<「大きな「ぐらつき」が発生する」>>
BISの指摘する「平時において経験された最大かつ最も特異な世界的ショック」は、アメリカ最大の銀行であるバンク・オブ・アメリカ(BofA)の最近の報告でも改めて確認されている。その最大の特徴は、世界経済の深刻な縮小と株価の高騰が併存していることである。2020年は、世界経済が93%も縮小する一方で、史上最高値を更新する株高で終えようとしていることである。
金融市場のマネーゲームに怒涛の如くに流れ込んだマネーサプライは、実体経済とかけ離れた株価だけが高騰する「V字回復」をもたらし、その史上最高値も、パンデミック危機を利用した一部独占企業FAAANM株(Facebook,Alpphabet-google,Apple,Amazon,Netflix,Microsoft)などが押し上げたものである。この異常なマネーゲームによって、人口の0.0003パーセントの超富裕層はおよそ35.5兆ドルの資産を保有し、世界の10大株式市場には合計71.6兆ドルの市場価値を持つこれら独占企業が君臨しているのである。

BofAのレポートは、「2020年は世界の93%の経済が縮小し(下図)、パンデミック関連の景気後退は世界の生産高を4兆ドル近くも削減させた。1709年当時の「グレートフロスト」以来の最悪の経済的衰退として低下した」と述べる。1708年から1709年、ヨーロッパ中が-15°Cまでの最低気温を記録する中で深刻な食糧不足と多くの人々の死亡、世界貿易を崩壊させた時期以来だというのである。
 しかし当時との決定的相違は、各国政府や中央銀行が経済を、社会を崩壊から守るためとして繰り出した急激に膨張する赤字財政政策である。BofAのレポートは、この危機における「壮大な比率」の債務/ GDPの急増を示し、世界の債務対GDP比率は、20年上半期に史上最高の267%に急上昇し、過去最高の11兆ドルの債務を追加したと指摘する。しかし、この「前例のない債務津波」は同時に、予測しがたいリスクと傲慢のリスクを高め、市場の「ぐらつき」をもたらす可能性、最悪の場合、大きな「ぐらつき」、負の連鎖が発生するのは時間の問題だと指摘している。
このような事態は、グローバル化された金融バブルがいよいよ危険な事態にあることを示していると言えよう。負の連鎖を断ち切るニューディール政策こそが早急に提起されるべきであろう。
(生駒 敬)

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