【投稿】東京都議選が突きつけたもの--統一戦線論(74)

<<二階氏「小池氏はよくやっている」>>
 7/4の東京都議会議員選挙の投票日直前まで、大手メディアは、都民ファーストの議席一けた台への激減、逆に自民、公明は合わせて過半数(64議席)以上獲得、それどころか「自民だけで50に届くかもしれない」との予測が大半であった。
 ところがふたを開けてみると、自公で過半数どころか、自民33議席、公明23議席、合わせても56議席にとどまった。都民ファーストは得票数、得票率とも減らしはしたものの、現有45議席から31議席に減らし、自民とは2議席差、第2党にとどまった。自公に都民ファーストを加えれば、ある意味で与党体制は万全なのである。今回の都議選はそのことを改めて再確認させたと言えよう。
 都議選から一夜明けた7/5、小池都知事は早速、自民党の二階幹事長、公明党の山口代表と相次いで面会し、今後も都政への協力を要請し、共に手を携えていく姿勢を示し、二階氏は、「小池氏はよくやっている」と賛辞を呈している。互いに持ちつ、持たれつなのである。
 自公と都民ファーストに違いはあれど、その緊縮政策・規制緩和路線=新自由主義路線、社会保障縮小路線では同一なのである。ただし、オリンピックとパンデミック対策では、補完しあいながらも、いずれがイニシアチブをとるかで争われ、自公は後手後手に終始したのに対して、小池知事側は、最終盤、菅政権側のオリンピック各会場最大1万人「有観客」路線に対して、「無観客」路線を対置した。しかも小池知事は過労で入院、選挙終盤で公務復帰、最終日に酸素ボンベを傍らに置き、都民ファーストの応援回りをして巻き返しを図ったのであった。
 新型コロナウイルス感染危機の再拡大とオリンピックを直前に控えた今回の選挙で、自民・公明与党政権は、その後手後手、ワクチン不足、失策の連続に都民から明らかに「ノー!」を突き付けられたのである。都民ファーストも同罪であるのだが、小手先でかわしたにすぎないものであった。しかし、菅政権にとっては今回の都議選の結果は大きなダメージであり、今秋の衆院解散・総選挙を目前に控えて、「菅首相では選挙の顔にはならない」との危機感が自民党内に拡がり出したのも当然であろう。

<<これを「歴史的快挙」「勝利」というのか>>
 東京都議選の党派別得票数と得票率は、以下の通りである。
                 得票数  得票率 前回得票数 得票率
 自民 1,192,796   25.69%      1,260,101     22.53%
 都民 1,034,778   22.29%      1,884,029     33.68%
 公明    630,810   13.58%          734,697    13.13%
 共産    630,158   13.56%          773,722    13.83%
 (ここでは立憲民主党は前回と比較できないので省いている)

特徴的なのは、いずれの党も得票数を減らしている。しかしこの得票数の減少は、投票率が前回(2017年)より8.89ポイント低い、42.39%で、過去、2番目に低い投票率であったことからすれば当然とも言えよう。
 しかし、得票率の減少は、それぞれの党の現時点での票を獲得する力の明らかな減少を示している。自民、公明両党は、得票率を上昇させているのに対して、都民ファーストと共産党は得票率を減少させているのである。
 ところが、7/6付け・しんぶん赤旗は「4日投開票された東京都議選(定数127)で日本共産党は現有18議席を確保し、1議席増の19議席を実現しました。3回連続の前進は1965~73年以来、ほぼ半世紀ぶり。「歴史的快挙」(志位和夫委員長)となりました。」と報じている。今回選挙時18議席で「1議席増」と言うが、前回も19議席獲得していたという事実を報じていないのである。議席数現状維持、得票数、得票率とも減少している現実を直視していないのである。共産党の指導部はなぜこんな姑息な報道や評価をするのであろうか。
 評価されてしかるべきなのは、立憲民主党の大幅な躍進であり、これに大いに貢献した共産党の「野党共闘」路線なのである。立憲民主党は、現有8議席から15議席に大幅に議席を増やしたのである。
 立憲民主党の安住国対委員長は7/5、国会内で記者団に、同党が15議席を獲得した東京都議選では共産党との候補者一本化が奏功したとの認識を示し、一方、国民民主党の候補4人が全員落選したことを踏まえ「リアルパワーは何なのかを冷静に見なければ」と指摘し、共産との協力を強く否定してきた国民や連合東京に苦言を呈している。
 問題は、この「野党共闘」、まだまだ不完全で、それぞれの「住み分け」や「取引き」に終始していたり、「野党と市民の共闘」と言いながら市民不在、既成幹部間のなれ合い、もたれあいで有権者の期待にまともに応えていないことである。港、西東京、南多摩などの選挙区では、野党共闘さえ成立せずに共倒れとなっている現実がある。
 こうした厳しい現実こそが、自公・都民ファーストの跳梁・跋扈を許しているのであり、それを克服する、野党共闘、統一戦線の路線こそが要請されていると言えよう。
(生駒 敬)
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