【投稿】日本の先制攻撃への抑止力強化を

岸田政権は、この間の国際情勢を口実として戦後再軍備以来の軍拡を進めている。
昨年末、安保3文書が改定された。その内容は、中国を主要な仮想敵国と位置づけ、高性能の兵器を調達し戦争準備を進めるという、中期的な軍事ドクトリンとなっている。
安倍政権下で策定された「戦争法」は骨格であったが、今回の3文書は、それに肉付けをするものといってもよかろう。

周辺有事は台湾有事として具体化し、中国の台湾侵攻が発生すれば自動的に日本が参戦する可能性が極めて高くなっている。
先日アメリカの戦略国際問題研究所(CSIS)が日米台と中国間の武力衝突に関するシミュレーションを公表した。それによると中国の台湾侵攻は失敗するものの、日米台にも甚大な損害が生じる結果が導き出された。

この中では様々なシナリオが検討されたといわれているが、それらは中国の侵攻が前提で、日米台は反撃することとなっている。
しかし、この間日本政府が掲げる「反撃能力(敵基地攻撃能力)」論を考慮すれば違ったシナリオが見えてくる。

過去の日清、日露、日中、そして日米戦争のいずれも日本の先制攻撃によって戦端が開かれた。当時の清国、帝政ロシア、アメリカは日本を上回る軍備を保有していたが抑止力にはならなかった。

これを教訓として日本国憲法および第9条が制定されたわけであるが、今回の安保3文章により事実上「国権の発動たる戦争」抑止の箍は緩んだ。
先の日米首脳会談でバイデンは「背に腹はかえられない」とばかりにこれを追認したわけであるが、真珠湾攻撃も忘れてしまったのだろう。

中国国内での動員が確認された時点での長距離ミサイルによる攻撃は、「反撃能力(敵基地攻撃能力)」論上では「日本に対する武力攻撃の着手」と強引に見なせば可能だが、さすがに現実性は低い。

最も危惧されるのは、中国軍の台湾に対する経空攻撃に続く中国揚陸部隊への攻撃であろう。水上部隊への攻撃は、陸上の目標に比べ周囲の民間施設への被害を考慮しなくてよい分「反撃能力」行使へのハードルは低い。

毎日新聞の連載企画「平和国家はどこへ」によれば、自衛隊、防衛省幹部が当時の安倍総理に「中国に勝てるのか」と尋ねられた時、皆無言であったというエピソードが紹介されていた。中国の脅威を口実に軍拡を進めているにもかかわらず、見通しを示せないというのは「中国は広うございまして」と昭和天皇に弁明した戦前の軍部を彷彿とさせる。

今回の「岸田軍拡」により戦力が向上したにもかかわらず、またもや「自信なし」では済まされないだろう。「勝利」を印象づけるには先制攻撃が効果的であり、選択肢は狭まっていくだろう。

海上自衛隊幹部学校は研修会講師として曰く付きの右派論客を招聘し偏向教育を進めている。 幹部学校のHPによれば「上級の部隊指揮官又は幕僚としての職務を遂行するに必要な知識及び技能を修得させるための教育訓練」と正当化している。

日清開戦の二日前、巡洋艦乗組みの大尉が「当局者は弱腰だ、今回も戦になるかどうかわからない。しかし、いくら当局者が弱腰でも、一発ポンとブッ放したらそれまでだ。俺は明日支那の船に出会ったら最後、一発ブッ放す」と放言したという。(「海戦から見た日清戦争」戸高一成、角川書店)

この逸話の落ちは「当局者(艦長)」の方がよほど好戦的であったというものである。しかしそれにもまして明治政府の開戦決意は強固であり、現場の雰囲気はそれを反映したものに過ぎないということである。

今後政府と自衛隊の危険なシンクロはますますんでいく傾向にある。それらが高性能な兵器を持てば、緊張はさらに激化するというものである。内に向けた抑止力の強化が求められているのである。(大阪O)

カテゴリー: 平和 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA