【投稿】福島第一原発1号機の圧力容器土台崩壊とG7でさえあきれる日本の原発事故対応
福井 杉本達也
1 完全に崩壊した福島第一原発1号機の原子炉圧力容器の土台
5月7日付けの東京新聞によれば、溶融事故を起こした福島第一原発1号機の圧力容器土台
が損傷しており、「土台は鉄筋コンクリートの円筒形で、厚さ1.2メートル、内側の直径は5メートル。核燃料が入っていた重さ440トンの圧力容器を支えている。昨年2月〜今年3月に実施した水中ロボット調査で、土台開口部のほか、内周の壁面が床から高さ1メートルにわたって全周でコンクリートがなくなり、鉄筋が露出していたことが判明。事故時の溶融燃料の熱で崩壊した可能性がある。」。地震などで、「土台が崩壊し、核燃料が残る圧力容器が落下すれば、高濃度の放射性物質が新たに放出される恐れがある。」と報じている。また、5月1日の東京新聞でも「土台は厚さ1メートル強の壁でできた円筒だが、コンクリートは厚みの半分以上が崩落し、壁の中央にある鉄の構造材と鉄筋でかろうじて圧力容器の重みを支えている可能性がある。」と報じている。本来ならば土台を耐震補強しなければならないが、現場は極めて高い放射線量で人が近づくことなどできない。
2 国際的に全く無責任―放射能汚染水の海洋放出を進める政府
圧力容器土台が明日にも崩れるかもわからないというにもかかわらず、放射能汚染水を海洋放出を推し進める日本は、G7広島サミット共同声明において、今年「春から夏ごろ」(松野博一官房長官)の海洋放出に向けてのG7のお墨付きを得て環境整備を図る狙いがあったが(福井:2023.5.19)、ドイツから「歓迎できない」と指摘され、気候・エネルギー・環境相会合に引き続き「人間や環境に害を及ぼさないための国際原子力機関(IAEA)の独立した検証を支持する」との表現に止まった(福井:2023.5.21)。無責任国家の集まりであるG7でさえ、日本の居直り強盗には愛想をつかしている。
中国は汚染水の海洋放出に明確に反対しており、「核汚染水の海洋放出は国を跨ぐ影響を生む。一般国際法及び『国連海洋法条約』などの規定によると、日本側は環境汚染を回避するすべての措置を講じ、影響を受け得る国と充分に協議し、環境への影響を評価・観測し、予防的措置を講じ危険を最小化させ、情報の透明性を保証し、国際協力を展開する義務がある。日本側はさまざまな口実を設け責任を押し付け、国際的な義務から逃れようとし、海洋放出の決定及び準備の進捗を関連国に一方的に報告しているだけだ。現在も中国とロシアの専門技術部門による、日本側の海洋放出案に対する科学的な見地に基づく数多くの疑問に全面的に回答しておらず、国際社会から信頼を得ていない。」と述べ、さらに続けて「核汚染水の処置という世界の重大な公共の利益に関わる問題をめぐる日本側の行為は、国際社会の期待からかけ離れている。日本側は核汚染水海洋放出の各種準備を早急に停止し、かつ海洋放出以外の最良の処置方法の模索を含め、周辺の隣国や国際機関と充分かつ有意義な協議を行うべきだ。核汚染水の科学的でオープンで透明で安全な処置を保証し、かつ厳しい国際監督を受けるべきだ。」と厳しく指摘している(「中国網日本語版(チャイナネット)」2023.4.14)。しかし、こうした情報は日本のマスコミではほとんど報道されない。あたかも海洋放出が規定の路線のように進められている。
3 事故の尻ぬぐいもできないで、60年超原発の運転を進める
高レベルの放射線で人も近づけない福島第一原発の「事故処理」などできるわけがないが、その尻ぬぐいも全くしないで、政府は60年超原発の運転を推進している。「原則40年、最長60年」という福島第一原発事故後にできた運転期間の規定を、規制委の審査などで停止した期間を計算から除外して60年を超えて運転できるようにするもである。
原発を長期間運転すると、放射線や熱の影響でさまざまな機器や設備が劣化するいわゆる「老朽化」が進む。2004年に関西電力の美浜原発3号機で起きた配管の破断事故では、吹き出した蒸気などで作業員5人が死亡している。破断した配管は、運転開始以来一度も点検が行われていなかった。鋼鉄製の原子炉は核分裂で発生する中性子によって強度が落ち、脆性破壊を起こすほか、金属製の配管は中を流れる熱水や蒸気による浸食や腐食で厚さが薄くなり、ケーブルは熱などで性能が低下する。また、コンクリートの構造物も熱や放射線によって強度が低下する(参照:NHK:2022.11.2)。
地震大国の日本であるが、基準地震動は建設時の基準のままであり、耐震補強など全くなされていない。そもそも原発のような構造物は耐震補強などしようもない。大規模地震が起きればいつ崩壊してもおかしくない。福島第一1号機もいつ崩壊してもおかしくない。放射能を世界に拡散する海洋放出などに金を投じるのではなく、崩壊した場合にも放射能が周囲にこれ以上拡散しないような措置が講じられるべきである。