【投稿】BRICS > G7 の現実--経済危機論(116)

<<世界人口の46%、GDPの37%>>
8/22~24、南アフリカを議長国として、ヨハネスブルグで開かれていた、ブラジル(B)、ロシア(R)、インド(I)、中国(C)、南アフリカ(S)で構成するBRICS首脳会議は、「BRICS拡大プロセスの指導原則、基準、手順」について合意し、加盟国の6か国拡大を盛り込んだ「ヨハネスブルク宣言」を採択し、閉幕した。次回、同サミットは、2024年10月、ロシアが議長国となり、カザンで開催されることも明らかにされた。
 招待される新たな加盟国は、エジプト、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、アルゼンチン、エチオピアの6か国で、2024年1月1日から正式加盟国になると発表されている。
同宣言は、「BRICSに新たな活力を注入し、世界の平和と発展に寄与する。新興市場国と発展途上国の連帯と協力の新たな章を描くために尽力」することを表明している。
2009年に結成されたBRICs(当時は小文字のs)、当時ウォール街のゴールドマン・サックスの経済調査責任者だったジム・オニール氏が執筆した報告書で、ブラジル、ロシア、インド、中国が最大の「新興市場」・BRICsであり、成長は G7諸国よりも速いと指摘していた。2009年、ブラジルのルーラ氏、ロシアのメドベージェフ氏、インドのマンモハン・シン氏、中国の胡錦濤氏の4カ国の大統領がグループ初の正式な首脳会談を開催し、翌年、南アフリカがこのグループへの参加を認められ、 S が追加されたのであった。
その現BRICS5か国は、すでに世界人口の 40%以上を占めており、2020年のGDP合計ですでにG7を上回っている。IMF によると、今年の世界 GDP の 32.1% を占め、G7のシェア29.9%を上回っているのである。これがさらに、BRICS+によって、世界人口の46%、世界のGDPの37%に達しようとしている。
 すでにG7を上回った決定的で客観的な現実は、もはやG7によって恣意的に否定することも、無視することもできない事態である。
しかも、このBRICSへの加盟を希望する国が増大し、南アフリカのBRICS大使アニル・スクラル氏によると、キューバ、ナイジェリア、ベネズエラ、タイ、ベトナムがBRICS共同体への参加を目指しており、これとは別に、22か国が正式加盟を打診していると述べている。
注目されるのは、今回の新たな加盟国の参加、とりわけ、サウジアラビア、UAE、イランはいずれも主要なエネルギー輸出国であり、すでに崩壊しつつあるアメリカのドル一極支配体制のかなめであるペトロダラー体制は有名無実となり、金融の多極化プロセスが大幅に加速する可能性が現実のものとなったのである。

<<「対話による和平解決」を主張>>
しかし、今回のBRICS宣言で明らかなことは、あえて脱ドル化を性急に推し進めるのではなく、「世界貿易機関(WTO)を中核とし、オープン、透明、公正、予測可能、包括的、公平、非差別的でルールに基づいた多角的貿易システム」の維持を求めている、ことである。
「我々は、BRICSとその相手貿易国との間の国際貿易及び金融取引に関して現地通貨の使用を奨励することの重要性を強調する。我々はまた、BRICS諸国の間のコルレス銀行ネットワークを強化し、「現地通貨での決済を可能にすることを奨励する」とされている。

さらに、宣言では、BRICS諸国は世界各地の紛争に憂慮を表明し、対話による和平解決を主張、
・ BRICSは、国連とアフリカ連合に基づくニジェール、リビア、スーダンの紛争の外交的解決への支持を表明、
・ BRICSは、シリア危機の政治的かつ交渉による解決を促進するためのあらゆる努力を歓迎し、
・ BRICSは、イラン核問題の解決は平和的かつ外交的であるべきだと考えている。ウクライナ紛争
・ BRICS加盟国は、アフリカ平和維持ミッションを含むウクライナ危機の平和解決を目的とした「調停提案」に感謝の意を表し、アフリカ諸国の和平イニシアチブを含む対話と外交を通じたウクライナ紛争の平和の解決を支持していると述べられている。

宣言ではさらに、発展途上国のインフラやその他のプロジェクトへの資金提供を促進する新開発銀行(NDB)(旧BRICS銀行)の役割を強調している。この2014年にBRICSによって設立された新開発銀行は、各国がBRICSへの加盟に強い願望を表明しているもう一つの理由でもある。設立以来、同銀行は中核インフラ分野で340億ドル相当の100近くのプロジェクトに融資してきており、世界銀行(WB)や国際通貨基金(IMF)などの西側主導の金融機関に対する対抗勢力として機能し、期待されている。

 和平努力として、今回のサミット期間中、中国の習近平国家主席とインドのナレンドラ・モディ首相が、実効支配線(LAC)として知られる係争中の国境について話し合い、両首脳は「迅速な関与解除と緊張緩和に向けた努力を強化するよう関係当局者に指示することで合意した」ことが明らかになっている。

今回のBRICSサミットの進展は、歴史的な事態の到来、とも言えよう。G7側が、この事態を前に、相も変わらず対ロシア・対中国の緊張激化政策を続けるならば、自らの政治的・経済的危機を一層深め、墓穴を掘ることとなろう。
(生駒 敬)

 

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