<<ビッグ3、史上初の同時ストへ>>
9/15、午前0時、ゼネラル・モーターズ、フォード、ステランティス(旧クライスラー)のビッグ3自動車メーカーに対する史上初の同時ストライキが開始された。全米自動車労組UAWと自動車メーカー3社との間の新たな4年間の労働契約の交渉は真夜中前に決裂し、まずはストライキの第一波として、ミシガン州のフォード・モーター社の工場、ミズーリ州のゼネラル・モーターズ社の工場、オハイオ州
のステランティスNV工場、この3社の工場から1万3000人の労働者がストライキ行動に参加した(UAWの組合員は、14万3000人)。
今回のストライキは、「スタンド・アップ・ストライキ 」と名付けられ、全工場の一斉ストから開始するのではなく、「スタンド・アップ」を要請された工場から開始し、順次それを拡大する、「最大限の影響力と最大限の柔軟性が得られる」と説明されており、UAWののショーン・フェイン委員長は「より多くの地域が “スタンド・アップ”を要請され、ストに参加する可
能性がある。これにより、ビッグスリーの各自動車メーカーで公正な契約を勝ち取るための闘いにおいて、最大限の影響力と最大限の柔軟性が得られる、スタンド・アップ・ストライキは、各社を油断させない。規律、組織、創造性に頼ることになる。私たちはこの戦いにおいて正しい側にいる。労働者階級と富裕層、持てる者と持たざる者、億万長者階級とその他すべての人々との戦いなのだ。」と説明している。すでに、8月、UAW組合員の97%が、9/14深夜までに適切な契約が結ばれない場合、ビッグスリーでのストライキを承認することに投票している。
この「スタンド・アップ・ストライキ 」について、UAWのサイト「スタンド・アップ・ストライキとは?」は、「スタンド・アップ・ストライキは、必要であれば全国的な全面ストまでエスカレートさせる能力を組合に与える。また、ビッグスリーが私たちにふさわしい協約交渉を拒否した場合、長期的にビッグスリーに対する経済的影響力を高めることができる。」として、詳細な戦略・戦術を提供している。
<<「どちらかの側を選ぶ」のか>>
このフェイン氏と他の組合改革派指導部は、組合史上初のトップポスト直接選挙で、改革運動「民主主義のための全労働者団結」(Unite All Workers for Democracy UAWD)の支援を受け、メンバーズ・ユナイテッドの一員として立候補し、この3月に就任したばかりである。
UAWの要求は、4年契約期間で36%の賃上げ、2階層の非正規・臨時労働力の廃止と雇用保障(派遣労働者を90日後に全額賃金、福利厚生、利益分配を伴って正社員に転換すること)、COLA(インフレ連動生活費引き上げ)の復活、全員への確定給付年金の復活、週労働時間の短縮である。
これに対する経営側の回答は、フォード、ゼネラル・モーターズ、ステランティスはそれぞれ、4年契約の期間中に20%、18%、17.5%でしかない。
2003年以降、自動車労働者の平均時給は30%も低下している一方で、過去10年間に自動車ビッグスリーは2500億ドル以上の利益を上げ、自社株買いや配当金支払いで株主に数百億ドルの報酬を与えてきたのである。過去4年間で、ゼネラル・モーターズ、フォード、ステランティスの最高経営責任者(CEO)の給与総額は40%増加したが、同社の一般従業員の賃金はわずか6%しか上昇しておらず、実質賃金が2008年以来19.3%減少している。
UAWの要求に対し、3社はいずれもフルタイムの年功序列労働者が最高賃金に達するまでの期間を8年から4年に半減する、GMとステランティスは、派遣社員の最低賃金を現在の時給16.67ドルと15.68ドルから20ドルに引き上げると回答しているが、組合側の雇用保障提案に関しては無回答である。
ビッグスリーは2023年上半期だけで200億ドル以上の利益を上げ、これら企業の CEO は、年間数千万ドルもの金銭的報酬を手にしている。昨年総額2100万ドル近くの報酬を手に入れたフォードのジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)はCNNに対し、UAWによる40%近い賃上げの推進は「我々を廃業に追い込む」と語ったが、フェイン氏はこの主張を「冗談だ」と一蹴、「車両の人件費は車両の5%だ」、「彼らは我々の賃金を倍増させても車両の価格を上げなくても、それでも何十億ドルも儲かるだろう。彼らの口から出る他のことと同様、それは嘘だ。」と反撃している。
ビッグ3に車両を配送する全米トラック運転手組合・チームスターズは、ストライキ中はディーラーへの配送を拒否すると明言し、デトロイトのチームスターズ・ローカル299の会長ケビン・ムーア氏は、「我々はUAW労働者とショーン・フェイン氏の立場を100パーセント支持している。」と連帯行動を明言している。
一方、バイデン大統領は、今月初め、「ストライキについては心配していない。ストライキが起こるとは思わない」と語っていたのであるが、とんだ見当違いである。あわてて、バイデン氏はUAWフェイン氏および自動車大手3社の各CEOと電話で会談しているが、フェイン氏は「われわれの支持は自由に与えられるものではなく、その行動によって誰を支持するかが決まる」と述べ、バイデン氏に単に自動車メーカーに交渉を促すのではなく「どちらかの側を選ぶ」よう促した、報じられている。
バイデン氏は、この全米自動車労組の歴史的ストライキに直面し、政治的・経済的危機での、まさに「どちらかの側を選ぶ」かを問われているのである。
(生駒 敬)