【投稿】能登半島地震と志賀原発

【投稿】能登半島地震と志賀原発

                            福井 杉本達也

1 あまりにも遅い!非常災害対策本部設置

発災から72時間経過した1月4日現在、「令和6年能登半島地震」による死者は84人、行方不明者は179人に上っている。「17:30に特定災害対策本部でなく非常災害対策本部を設置する判断を下すべきでした。また、その第一回会議は20:00からでした。遅い」。ちなみに「2016年4月14日熊本地震」では、「21:26 地震発生⇒22:10 非常災害対策本部設置(河野防災担当大臣が本部長)⇒22:21 第1回対策本部会議(総理大臣出席)」と発生から55分で非常災害対策本部を設置している(早川由紀夫X:2024.1.2)。3日午前の対策本部会議では「『発生72時間』はあす午後、自衛隊員2,000人に倍増…岸田首相『救命・救助に全力』」「生存率が急速に下がるとされる『発生から72時間』を4日午後に迎えることを意識したものだ」(読売:2024.1.3)と書いたが、ともかく対応が遅すぎる。発災日に10,000万人規模の投入が必要であろう。名古屋市消防局・大阪市消防局など各都府県の消防は発災日に緊急援助隊を派遣して現地活動を行っている。ちなみに、2016年4月の熊本地震時においては自衛隊は発災後2日間で590人の被災者を救出した(緊急援助隊・地元消防で86人救出)。「まともな知事とまともな首相なら、一昨日の発災後、直ちに救援に全力投入すべき激甚地震のデータは出ていたのだが、みすみす見逃されてしまったことで、救えたはずの生命がどれほど失われるのか残念でならない。」(飯田哲也X:2024.1.3)「今回の地震の救助活動がなんだかものすごくゆっくり感じる。最初から。そして、ものすごく言葉にしたくないんだけど…地震からも津波からも逃れたのに餓死とか起こらないよね?…そのくらい、不思議な位に物資が届いていない…」(ゆきX:2024.1.4)と書かれてしまった。ちなみに、馳石川県知事は正月休みを東京で過ごしており、自衛隊ヘリで石川県に戻ったとのことである。

2 情報統制か?―ドローンの飛行禁止

国土交通省は1月2日・12時00分:「令和6年1月1日に石川県能登地方で発生した令和6年能登半島地震について、以下のとおり国土交通大臣による航空法第132条の85による無人航空機の飛行禁止空域の指定を行いました。なお、航空法第134条の3による航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為(凧、気球等)の許可及び通報についても適用になります。」と今回被災が集中した石川県輪島市、珠洲市、穴水町、能登町、七尾市、志賀町、中能登町でのドローンの飛行を禁止の緊急用務空域に指定した。ドローンを飛ばすには特別の許可が必要になった。捜索救難活動の緊急用務を行う有人機を優先するための処置だ。しかし、いまはまだ有人機がなかなか飛べない。そして能登半島は広い。被害状況把握のためにドローンを活用したいが、できない。現在、被害状況把握のために活用できる写真情報データは、国際航業:「防災情報提供サービス無料版」https://bois-free.bousai.genavis.jp/diarsweb。国土交通省・接写https://ehihdagjcj.reearth.io。読売新聞等などがある。

「七尾市以北の奥能登の状況は本当に深刻です。取材に入った穴水町は中心部と町の北側を結ぶ動脈が寸断され、陸の孤島となっている集落がいくつもあり、未だに実態が把握できていません。支援物資も思うように行き渡っていません。同様の事態が奥能登のあちこちで起きています」。「昨日12時に指定した緊急用務区域をすみやかに終了したほうがいいなあ、航空局。いま能登半島をそれに指定するのは益なくして害ばかりだ。能登半島は人口密集地とは違う。ドローンで被災状況の把握をするのが最適。有人機では低空と迅速な撮影がむずかしい。ドローンの手軽さを生かせ。」とツイートしている(早川由紀夫X:2024.1.3)。

3 未知の断層が原因か?

国の地震調査委員会は最大震度7を記録した能登半島地震の分析や今後の動向について検討したが、平田直委員長は「国は主要な活断層について長期評価を公表しているが、今回地震のあった断層は対象外だった」と説明した(日経:2024.1.2)。また、1月3日0時のNHK報道によると、政府の地震調査委員会は「大地震は、北東から南西にのびるおよそ150キロの活断層がずれ動いて起きた可能性があると指摘。」また、「地震活動の範囲は、これまで能登半島の北東部や北側の海域が中心だったのに比べ拡大している。」としている。日経は上記記事で、「世界でも有数の地震大国の日本では各地に断層が存在し、リスク評価が追いついていない側面が浮き彫りになった。今後、政府の長期評価のあり方も問われそうだ。」と指摘している。

 

4 志賀原発の状況

志賀原発は、活断層が原発の敷地内にあるのではないかと指摘され、1.2号機とも停止中であったが、志賀町では震度7・最大加速度2826ガルを記録、岩盤まで掘り下げた1号機原子炉建屋地下2階でも震度5強、399.3ガルが観測された。北陸電力は、相変わらず情報を後から小出しにしているが、①「1号機の放水槽の周囲(全周約108m)に津波対策として設置した鋼製の防潮壁(高さ4m)の南側壁が、地震の影響により数cm程度傾いていることを確認した。」②1,2号機 廃棄物処理建屋エキスパンションジョイントシールカバーの脱落、③「1号機 純水タンク漏水」④「2号機 使用済燃料貯蔵プール落下物」、⑤1・2号機変圧器油漏れ(「現場では火災と認識」)、⑥1・2号機使用済燃料貯蔵プール水の飛散、⑦冷却ポンプ一時停止、⑧1号機タービン補機冷却水系サージタンクの水位低下、⑨2号低圧タービン「伸び差大」警報が確認さたとしている。

志賀原発は、新規制基準への対応で、震度6強以上の地震は来ないとして、原子力規制庁に1000ガルに耐えうるまで強度を上げたとして再稼働申請し、現在審査中である。北陸電力のHPには、「想定される最強の地震や、およそ現実的に起こるとは考えられないような限界的な地震が起きた場合の影響を受けても…安全上重要な機能は失われないよう考慮した設計」をしていると書かれている(2024.1.3)。

原子力規制委員会は、2023年3月3日の審査会で「新たに出された膨大なデータに基づいて評価し直したところ、将来活動する可能性のある断層ではないと判断できる、非常に説得力のある証拠が得られた」とし、原発炉心に活断層はないとの見解を示し、再稼働に道を開いた。経団連も、十倉会長が志賀原発を視察し、「やっと敷地内の活断層の問題にけりをつけ、今まさに前に進もうとされている。安全安心と地元住民のご了解が前提ではあるが、一刻も早く再稼働できるよう心から願っている」と(朝日:2023.11.29)、再稼働を急ぐよう強く圧力をかけていた。

北陸電力は、巨大な断層が連続して動くことを想定していない。延長150キロの「未知の断層」がM7.6の地震を起こしたとなると、原発の耐震想定は全てやり直しとなるであろう。「国土地理院が人工衛星の観測データを分析したところ、輪島市西部では最大で4メートル程度の隆起が検出されるなど大規模な地殻変動も確認された」(NHK:同上)。原発のある志賀町富来の海岸が隆起している。地元の聞き取りでは30~40cm程度隆起している。①の防潮壁の傾きは津波とは考えられず隆起(又は地震動)の影響かも知れない。国土地理院地殻変動情報(衛星SAR)において、原発のある志賀町付近など、能登半島の西側の隆起データがないのは不思議である。⑤変圧器の油漏れも原子炉の操作や燃料棒を冷やすこともできない全電源喪失事故につながるものであり非常に危険なものである。原発から30キロ圏内にある輪島市や穴水町の放射線モニタリングポスト15カ所が機能していない。もし、志賀原発が再稼働していたとすれば、電気も水も避難場所も避難できるルートも手段もない被災者にさらに恐ろしい事態が待っていた。

 

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