【投稿】バイデン:イエメンへの戦争拡大--経済危機論(129)

<<「戦争状態にはない」が、首都爆撃!>>
1/22、米バイデン政権は「本日、米国と英国の軍は、イエメンのフーシ派の標的8か所に対して、比例的かつ必要な追加攻撃を実施した。紅海を航行する国際船舶や商船、海軍艦艇に対するフーシ派の継続的な攻撃に対するものだ」と発表。オーストラリア、バーレーン、カナダ、オランダの支援を受けた6カ国の共同声明として、「世界貿易と無実の船員の生命を脅かすためにフーシ派が利用する能力

を混乱させ、低下させることを目的としており、フーシ派のミサイルおよび航空監視能力に関連する場所を標的とした」と述べている。
イエメン人ジャーナリストで人権活動家のファティク・アル・ロダイニ氏はソーシャルメディアで「首都サナアで大規模な爆発音が大音量で聞こえた」と報告し、ネット上で公開された複数の動画では大規模な爆発が都市を揺るがす様子、子どもを含む死傷者が映されている。

この首都爆撃は、バイデン氏自身が米国のイエメン空爆が「機能していない」ことを認めてから数日後であり、議会の承認なしに追加攻撃を開始したものである。1週間以上にわたってほぼ毎日行われてきたイエメンへの爆撃が、フーシ派を阻止するのに何の役にも立たず、守勢に追い込まれたただけであるにもかかわらず、首都爆撃によってむしろ状況を劇的にエスカレートさせようとしているのである。 バイデン氏は、これまでのイエメンに対する攻撃に効果があったのかどうなのかと問われて、「いいえ」と効果がないことをしぶしぶ認め、それでも「とにかく続ける」のだと語っている。「中東でのより広範な戦争は望んでいない」、と述べながら、「より広範な戦争」に突き進んでいるのである。

なおかつ、バイデン政権は「現在、米国はイエメンで戦争状態にあると言えるでしょうか?」と問われて、国防総省報道官サブリナ・シン氏は「我々は戦争状態にあるとは考えていない」と応え、記者が「これまでに5回も爆撃を行っています…これが戦争でないとしたら、戦争とは何でしょうか?」と重ねて問われても、「我々はフーシ派と戦争状態にはない。」と、議会の承認なしの戦争行為を言い抜けようとしているのである。国防総省はフーシ派と「戦争状態にあるとは考えていない」と宣言している。

バイデン政権が、国際法も国内法も無視してイエメンを不

法に攻撃し、際限のない戦争へ、戦線を拡大させようとしているのは、イスラエルが同じく不法にガザを攻撃し、大量虐殺・ジェノサイドを続行可能にさせるためでもある。

この同じ1/22、こうしたバイデン政権の戦争行為拡大に応じて、欧州連合(EU)加盟国の外相らが、紅海での海上警備活動の創設に「原則合意」したと、欧州連合外交政策責任者のジョゼップ・ボレル氏が発表。ボレル氏は記者会見で「紅海はわれわれの議論の上位にあり、われわれは欧州連合の海上警備活動を設立し、これらの任務のさまざまな選択肢について話し合うことで原則合意した」と述べている。欧州連合諸国が、紅海での軍事作戦を開始することで大筋合意し、バイデン政権の戦争拡大行為へ加担し、バイデン政権への危険な追随路線に踏み出したのである。

<<紅海効果はすでに「現れ始めている」>>
1/22、イエメンのアンサララ(フーシ派)のムハンマド・アル・ブハイチ報道官は、ソーシャルメディアで「米英の侵略は、ガザで抑圧されている人々に対する道徳的・人道的責任を果たそうとするイエメン国民の決意を高めるだけだ」と断言。国際

法に基づき、紅海を通ってイスラエルへの輸送を阻止する法的権利を有しており、イスラエルと米国によるガザ人に対する大量虐殺を阻止する義務があることを再確認している。

イエメンの隣国、イエメンと国境を接するオマーン政府は、「友好国」が行った軍事行動を公然と非難し、軍事エスカレーションの即時停止を求め、湾岸アラブ諸国の中で唯一米国と英国への領空を禁止し、すべての米英連合軍航空機の飛行禁止空域を宣言している。公式声明で、イエメン情勢に深い懸念を表明し、軍事的エスカレーションの即時停止を求め、同時に、イスラエルの行動、地域に深刻な人道危機をもたらしたガザ地区での恐ろしい戦争と包囲に対するオマーンの懸念を強調し、攻撃を受けているガザやその他のパレスチナ領土でイスラエル軍が主導する殺害、虐待、破壊、飢餓作戦を弾劾している。

 米国にとって長年の盟友であったサウジアラビアでさえ、米国と英国のイエメン攻撃には好意的ではなく、「自制とエスカレーションの回避」の必要性を強調している。もはや米英・欧州連合は、すでに紅海とイランとエジプトの間の石油をめぐる支配権を失っている、のが実態である。

当然、紅海を航行するコンテナ輸送への影響は、国際貿易、石油市場ばかりか、間違いなくイスラエル経済そのものにも重大な影響を与えている。とりわけ、イスラエルの主要港・エイラート港の操業に影響を与えており、コンテナ輸送量の40%減少やエイラートでの収益の85%減少など、報告された数字は大きな影響を浮き彫りにしている。特に極東、インド、オーストラリアとの貿易に関して、広範な経済的脆弱性を浮き彫りにしている。

一部のコンテナ船会社が停止し、他のコンテナ船会社が新たな追加料金を課す中、イスラエルへの海上輸送経費はここ数日上昇、経済を海上貿易に依存しているイスラエル政権は追加輸送費用負担や、供給のボトルネックの深刻な懸念が生じているのが実態である。マースクやハパック・ロイドなどの大手海運会社は、紅海航路

を避けるため、数百隻の船舶を喜望峰周辺のより長く高価

な航路に迂回させており、シェルは紅海への出荷をすべて停止している。

紅海を通って輸送されているコンテナは毎日約20万個で、11月の50万個から減少し、紅海の運賃変動の世界的なスポット貨物指数は、同じ期間で 2 倍以上に上昇している。

 当然、この紅海効果は、世界経済全体に現在「現れ始めている」。貨物指数の大幅な上昇は、販売される商品の原価に織り込まれ、消費者に転嫁されるのは必然である。紅海からの最初の迂回は、アジアへの帰路に遅れを生じさせ、定期船はその余裕を補うために「追加の積込み船」として船を短期間チャーターするようになっている。目的地変更がより重視されるようになった今、喜望峰周辺の航海距離が長くなったことから、定期船は毎週のスケジュールを維持するために運航ラインに船舶を追加する必要がある。価格の再設定は世界中のすべての輸送に影響を与えている。このインフレによる被害は世界中で急速に増大する可能性が大である。すでに過去 1 か月間で、英国とカナダでもインフレ率が上昇に戻ってきており、中央銀行が急速に利下げを行うという夢は、急速に燃え尽きつつある。

2024年は、2022年や2023年よりもはるかに多くの戦争拡大へのエスカレートが予測され、政治的的経済的危機がより一層深刻化する可能性が大である。バイデン政権の好戦的緊張激化政策をストップさせることが第一義的課題となっている。
(生駒 敬)

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