<<バイデン氏「米国は対イラン反撃には参加しない」と表明>>
4/13~14にかけての深夜、イラン・イスラム共和国は、数百のミサイルとドローンでイスラエルに対する初めての報復攻撃を実行。イラン側は、これはあくまでも、4/1のイスラエル軍によるダマスカスのイラン総領事館への致命的な攻撃に対する報復に限定された自衛攻撃に過ぎないものであり、「正当防衛に関する国連憲章第51条に基づいて行われた」もので、その反撃の限定的な性質について、イスラエルの同盟国である米国にも伝えたこと(米国とイランは直接交渉の体裁を避けるため、オマーンを通じて協議している)、そしてこの攻撃の「課題は遂行された」、「占領地にあるシオニスト・テロ軍の重要な軍事目標を攻撃し、破壊することに成功した」として、5時間後に終了したことを明らかにした。イスラエル軍側も、イランが発表してから数時間後にイランの攻撃が停止したと報告している。
イラン側は、同時に、イスラエルがこの自衛攻撃を口実に「新たな過ちを犯した場合、数十倍規模の攻撃が可能であり、イランの対応はより厳しいものになる」と警告し、同時に、「今回の報復攻撃はイランとイスラエル間の紛争であり、米国はこれに関与すべきでない」と牽制している。
中東全域への戦争拡大・世界大戦へのエスカレートは阻止されたのか。事態は流動的であるが、決定的なカギを握るのは、これまでイスラエルの無謀なジェノサイド・戦争挑発行為を無条件で支持し、支援してきた米・バイデン政権の対応である。
4/14のアクシオスの報道によると、バイデン氏はイスラエルのネタニヤフ首相との会話の中で、イスラエルの対応が、壊滅的な結果を伴う地域戦争につながることを強く懸念しており、イスラエル国防軍によるいかなる報復攻撃も支持しないし、そのような作戦を支援しないと述べたこと、ネタニヤフ首相は理解を示したと、報じている。
また、米国防総省のオースティン長官はイラン報復攻撃後の声明で、米国はイランとの衝突を求めていないと発表。CNNの報道によると、米国当局者らはイスラエルに対し、いかなる軍事的対応を開始する前にも米国に通知するよう求めている、と報じている。
さらに、米国家安全保障会議・NSCのカービー報道官は、「大統領は明言した。我々はイランとの戦争を求めていない。 私たちはこの地域でのより広範な戦争を望んでいません」と4/14の朝、NBCで語っている。
このようなバイデン政権の対応で重要なのは、バイデン大統領がネタニヤフ政権に対し、攻撃は「完了」し、米国はイランに対する今後の反撃作戦を支持しないと強く伝えている、そういわざるを得ない立場に追い込まれている、と言う現実であろう。
<<「ほぼ全て撃墜」のウソ>>
今回のイラン側の報復攻撃に対して、バイデン氏は、イスラエルは米国の協力でイランの発射したミサイルとドローンをほぼ全て撃墜したと発表し、ネタニヤフ首相に対し「勝利を得た。勝利を掴み取ってほしい」と語った、と言う。
イスラエルのネタニヤフ首相も、イランの攻撃を撃退、合同の尽力で勝利を勝ち取ったと発表している。イスラエル軍は、「イランの飛翔体のほとんど」はイスラエル領空に到達する前から同盟国によって迎撃された」と主張している。
しかしイスラエルの被害の実態は深刻であり、徐々に明らかになってきている。
最も深刻なのは、イスラエルの重要な空軍基地が被害を受けたことを、イスラエル軍自身が確認していることである。その一つは、ネゲブ砂漠南部にあるイスラエルのネヴァティム空軍基地に対するイランの弾道ミサイル攻撃を認めていることである。イラン領土から1100キロも離れたネヴァティム空軍基地には、ガザへの大量虐殺攻撃に使用された米軍の最新鋭のF-35戦闘機が配備されており、空港と 3 本の滑走路があり、4月1日のダマスカスのイラン総領事館襲撃事件の発端はこの基地だったと伝えられている。タイムズ・オブ・イスラエルはネバティムが土曜日の攻撃の主な標的の1つであることを認め、さらに、ネタニヤフ首相の公式飛行機「シオンの翼」が標的にされるのを避けるため、攻撃の数時間前にネバティムから離陸したことまで示唆している。
イラン革命防衛隊のホセイン・サラミ長官は、イランのミサイルと無人機がイスラエルの防空網を回避し、イスラエルの重要な軍事施設2か所を破壊したと主張しており、実際の動画映像で確認できる事態なのである。映像は、イスラエルの2つの主要なイスラエル軍事基地、ネバティム空軍基地とラモン空軍基地を直撃するミサイル、弾薬の塊が基地上空に降り注ぐ様子を映し出している。サラミ長官は4/14、イスラエルに対する「トゥルー・プロミス作戦」のミサイルと無人機による集中攻撃は「予想以上に成功」し、飛翔体はイスラエルの強力な多層防空システムを突破できたと述べている。それを可能にさせたものとして、新型極超音速ミサイルを使用した可能性がある、と報じられている。
イスラエルのネタニヤフ政権がバイデン氏の言うことを聞き、何もしないだろうと本気で信じている人はほとんどいないであろう。米国をイランとの戦争に引きずり込もうとした張本人である。バイデン氏自身もその路線に同調・加担してきたのである。重要なことは、タイムズ・オブ・イスラエルが、イスラエル軍が今後数日で報復が続く可能性が高い対応を準備していると報じていることである。匿名のイスラエル高官も地元メディアに対し、イランに対する「前例のない対応」を準備していることを報じている。
しかし、決定的なのは、こうした世界大戦化へのエスカレートは、政治的経済的危機を一層激化させ、バイデン政権自身が再選など期待できない事態に追い込まれることであろう。市場では、ビットコインはジェットコースターのように暴落し、上下動に揺すぶられている。休日明けの市場も不安定な動きに見舞われることは間違いない。すでに原油価格が1バレル当たり、WTIが86ドルを超え、ブレントが90ドルを超えている。これが 戦火拡大のエスカレートにより、1 バレルあたり 100 ドルを超える、あるいは150ドルに達することなど、到底容認できない事態なのである。すでにこの3月の米消費者物価指数は予想よりも高騰し、前月比0.4%上昇(2023年8月以来の最高値に相当)と予想よりも大幅に上昇し、前年比では3.5%上昇 コア CPI も予想を上回って上昇し (前月比 0.4% 増)、前年比上昇率は 3.8% 上昇している。結果として、バイデン政権下で、消費者物価指数は、19%以上も上昇しているのである。
バイデン政権自身が執着し、推進してきた、ウクライナ戦争、イスラエル無条件支持のジェノサイド戦争、対ロシア・対中国の執拗な戦争挑発、緊張激化政策こそが、インフレを高進させてきたのである。その根本を緊張緩和と平和外交に転換しない限りは、直面している危機を回避できないのである。
(生駒 敬)