<<イスラエルの「イラン核施設攻撃計画」の漏洩>>
10/18、Telegramチャンネル「Middle East Spectator」で、米国防総省と国家安全保障局(NSA)から漏洩された極秘の米軍諜報文書が暴露された。同時に、米国家地理空間情報局(NGA)が10月16日に出した2つ目の文書も暴露され、NGAのアナリストらがイスラエル軍のイラン攻撃準備を探知できたことにどれほど自信を持っているかが記載されている。Axiosは、今週「イランと関係がある」とされるTelegramアカウントが、イスラエルのイランへの差し迫った攻撃計画の詳細を記した米国の諜報文書2件を漏洩した、と報じている。
この漏洩文書が明らかにしているのは、イスラエルがイランの核施設を標的にすることを計画しているが、「イランへの攻撃の規模と範囲を明確に予測することはできないし、そのような攻撃はGEOINT(地理空間情報)によるさらなる警告なしに発生する可能性がある」と文書は述べている。さらに、「10月16日にはジェリコII中距離弾道ミサイル(MRBM)のいかなる活動も観測していない」と述べ、「イスラエルが核兵器を使用する意図があるという兆候は観測していない」とも述べている。
そしてこの文書が明らかにしている重大なことは、イスラエルの核兵器配備能力について具体的に言及されており、その「核兵器を使用する意図」に言及し、事実上、イスラエルの核兵器の存在をも確認していることである。
これまで米国政府は、イスラエルが核兵器を保有していることを公に認めることを拒否しており、公式には、イスラエルには核兵器計画や核兵器備蓄は公表されていない。しかし、これは公式の見解であり、イスラエルと米国政府はどちらも存在を認めたり確認したりしないという協定を結んでいるのである。
この文書の漏洩の性質と動機はいまだ不明であるが、米国政府は、内部調査を行っていると主張しているが、下級職員による意図的漏洩であろうとも、報じられている。
いずれにしても、イスラエルはイランの核施設を標的にすることを計画しており、その結果、イランがイスラエルの核施設に対して報復の反撃を繰り返す可能性があり、核兵器の使用を伴うイスラエル対中東の大規模戦争が勃発する可能性さえ現実化しかねない段階である。核戦争をも招きかねないきわめて危険な段階、大規模な中東戦争に直面していると言えよう。
10/21、イラン外務省は、「核施設を攻撃するとの脅迫は国連決議に反しており、非難されるべきである」との声明を発表している。
<<ハリス、イランこそ米国の「最大の敵」と発言>>
問題は、このイスラエルの対イラン報復攻撃計画に、バイデン/ハリス政権が深く関与していることである。
すでに、10/13、米国は、バイデン大統領の指示により、終末高高度防衛(THAAD)砲台(Terminal High Altitude Area Defense (THAAD) system.)と関連米軍要員をイスラエルに派遣すると、国防総省報道官が発表。ニューヨークタイムズへのフォローアップ声明で、THAADシステムがイスラエルに送られ、約100名の米軍がそれを操作することを確認している。
このTHAAD砲台は、貨物車両に搭載された6台の発射装置、48発の迎撃ミサイル(発射装置1台につき8発)、およびそれを操作する95人の兵士で構成され、さらに、各砲台には移動式監視レーダーと管制レーダー、戦術射撃管制および通信装置がある。すでに、続いて2回目のTHAADシステム派遣も明らかにされている。このシステム 1 台あたりの費用は、約 8億ドルから10億ドルと言われている。そして、このシステムが依存するレーダー AN/ TPY -2 は、実際にはすでに 2008 年からイスラエル南部に配備されており、米軍によってすでに運用されてきたのである。今回、THAADシステム総体として、直接、米軍が運用する事態へと突入しているのである。バイデン大統領はイスラエルのネタニヤフ首相に対し、対応は「釣り合いの取れた」ものでなければならないと述べ、米国はイスラエルに対し、イランの油田や核施設を標的にすべきではないと伝えた、と言うが、完全な二枚舌である。
国防総省は、議会の承認なしに、米軍が直接激化する海外の戦争地帯に外国防衛のために入っているという明白な事実をこれまでは避けようとしてきたのであるが、「米軍は今や、この戦争に直接的に深く関わっている。ネタニヤフは、米国にイスラエルに代わってイランと戦わせるという究極の願いに、これまでで最も近づいている」段階に到達しているのである。
イラン側がすでに、敵対行為がエスカレートすれば、米軍要員が多数派遣されるイスラエルにあるこの対空砲台が攻撃を受けると警告していることからすると、これは明らかに米軍が紛争でより直接的な役割を果たすことを示している。
そしてこうした事態に照応するかのように、ハリス副大統領は、トランプ候補との激戦の最中にある米大統領選の候補者として、イランこそ米国の「最大の敵」だと発言している。10/7のCBSN EWSの60 Minutes のインタビューで、米国の「最大の敵」はどこだと思うかと聞かれたハリス氏は、「明らかに頭に浮かぶのはイランだ」と答えた。これまで、米国はロシアと中国を米国の最大の敵だと見なしていたはずであるが、この答えである。
ハリス氏はさらに、「イランは米国の血を流している。そして、イスラエルへの今回の攻撃、200発の弾道ミサイルに関して我々が目にしたように、イランが核保有国になる能力を決して獲得しないようにするために我々が何をする必要があるか、それが私の最優先事項の1つだ」とまで述べている。これでは、米国の対イラン戦争である。
バイデン/ハリス政権は、今や11/5の大統領選で、トランプ氏に支持率で劣勢に立たされ、「最優先事項の1つ」として、危険な戦争拡大への賭けに身をゆだねている可能性が大なのである。
そして、実際にイスラエルがイランを攻撃すれば、即刻、ホルムズ海峡の混乱が経済崩壊の第一波となる可能性が大である。世界の石油輸送に不可欠なこの戦略的な水路が封鎖され、石油価格が急騰し、広範囲にわたる経済混乱を引き起こすことが明らかである。インフレ、サプライチェーンの混乱、軍事紛争のさらなる拡大など、世界市場は動揺し、一挙に世界的な政治的経済的危機が激化するであろう。
こうした危険な事態をストップさせる広範な闘い、包囲こそが要請されている。
(生駒 敬)