【投稿】韓国戒厳令と尹大統領の弾劾―そして属国日本は

【投稿】韓国戒厳令と尹大統領の弾劾―そして属国日本は

                            福井 杉本達也

1 韓国戒厳令

尹錫悦大統領が、12月3日夜に非常戒厳を宣言し、6時間後に解除した。尹大統領は、「共に民主党の立法独裁は、大韓民国の憲政秩序を踏みにじり内乱をたくらむ自明な反国家行為」だとしたうえで、「破廉恥な従北反国家勢力を一挙に清算し、自由憲政秩序を守るため、非常戒厳を宣言する」と主張した。空挺部隊が国会に進入し、市民と対立する一触即発の状況が生じたが、国会は翌4日1時に在籍議員の過半数の賛成で戒厳解除決議案を議決し、尹大統領は午前4時30分頃、戒厳を解除すると発表した。軍が国会の決定を尊重したことで、平和裏に事態を収束させたが、危うく1980年5月18日の光州事件の再来・流血事件に至るところであった(「ハンギョレ」社説:2024.12.4)。

2 米国が命じた戒厳令

マクレガー退役大佐は「私たちは韓国を真の主権国家として扱っているわけではなく、それは私たちが半島全体の軍事的支配を事実上有する特定の協定を結んでいる」と述べている(Douglas Macgregor  youtube 2024.12.5)。

KJ NOHは「米国防省は、戒厳令が事前に通知されていたかどうかについてコメントすることを拒否している。しかし、彼らが知らなかったことは事実上不可能です。韓国でのこれまでの全てのクーデターは、アメリカによって承認されている。これは、アメリカが、韓国の全ての軍隊を事実上支配しているからだ。韓国軍は、在韓米軍の将軍が率いる統合司令部であるCFC(米韓連合軍Combined Forces Command)/UNC(国連軍United Nations Command)司令部に報告します。アメリカはまた、『戦時』のオペレーション・コントロールを維持している(つまり、いつでも好きなときに作戦をコントロールできる)。すべての軍隊の動きは、軍隊、武器、監視、武器が警戒態勢で溢れている密集した軍事領土地域での友軍の砲撃事件を避けるため以外にないとしても、米国に報告され、調整されなければならない。そして、SK特殊部隊(Special Operations Command, Korea)は、国会の部隊と同様、どの軍隊よりもアメリカと最も緊密に統合されており、アメリカとホスト国の特殊戦部隊が一つの組織に統合されている世界で唯一のアメリカ特殊作戦司令部だ。」、「朝鮮半島は地球上で最も厳重に監視されている場所であり、陸地と空域の隅々まで監視されています。国会に兵士を運ぶヘリコプターが、航空輸送許可を得るのが遅れたのは、その地域が航空飛行が最も厳しく制限された地域の1つであるためだと推測されています。その空域の監視と制御は、おそらく直接報告され、米軍司令部と調整されている」と書いている。(KJ NOH 「PEARLS AND IRRITATIONS JOURNAL LIMITED」2024.12.14)

また、マグレガー退役大佐は「尹大統領は事実上、CIAによって選ばれた人物でした。彼は韓国では植民地の手先として広く認識されています。彼は、選挙から数年後、今や自分の党が今後の選挙で勝つ可能性がないことを認識しています。現在、彼の党は「国民の力党」と呼ばれています。それ以前は「自由韓国党」でしたが、いくつかの名前を持ち、実質的にはアメリカが韓国半島で政治的な出来事を操作するための仮面に過ぎません。」と述べている(マクレガー退役大佐:上記)。

奇妙なことに、日本のマスコミは在韓米軍司令部の動きについては全く触れていない。「3日午後11時48分頃、戒厳兵約280人が国会にヘリで投入 された。第1陣を乗せたヘリ3機が国会裏の運動場に次々と着陸した。」(読売:2024.12.14)という記事があるが、このような行為は、在韓米軍・国連軍統合司令部の承認がなければ行うことは不可能であり、むしろ、バイデン政権が尹氏に戒厳令を命じたというのが正解ではないか。

3 北朝鮮軍のウクライナ派兵という大嘘

トランプ氏の米大統領選での優勢が伝えられるようになった10月下旬からキエフ発の共同通信の情報として「ロシア東部の演習場で訓練を終了した北朝鮮兵約2千人が、ウクライナ国境に近いロシア西部に向けて列車などで移動していることが24日分かった。ウクライナ軍筋が共同通信に明らかにした。」とし、また「カービ米大統領補佐官は23日の記者会見で、北朝鮮兵らが東部元山付近から船でロシア極東ウラジオストクに移動したと指摘した。」と報道している(福井新聞:2024.10.25)。その後も、日本のマスコミは、韓国国家情報院が11月13日に「北朝鮮兵がロシア西部のクルスク州でロシア軍の戦闘作戦に参加していると初めて認めた。1万人以上の北朝鮮兵がウクライナとの交戦に本格的に加わったとみられる。」(日経:ソウル+ワシントン支局 2024.11.14)との米韓合同合作の情報を垂れ流し、最近の12月14日の報道ではウクライナのゼレンスキー大統領はロシア西部クルスク州で「かなりの数の北朝鮮兵をロシアが戦闘に使い始めている」・北朝鮮兵の損失は「すでに顕著になっている」と書いている(日経:2024.12.16)。しかし、肝心の北朝鮮もロシアもこれらの報道を認めてはいない。ロシアのネベンジャ国連⼤使は「⻄側諸国が北朝鮮軍の露派遣疑惑を理由に安保理会合を招集することで、NATO諸国が⾮公式に⾃国の軍⼈らをウクライナに派遣していることを正当化しようとしていると批判した。」(Sputnik日本:2024.11.1)。

また、これに関連し、マクレガー退役大佐は、尹大統領は「『ウクライナで北朝鮮の兵士が戦っている』との主張しました。しかし、それは完全な嘘です。北朝鮮兵が戦っているというのは単なる大嘘です。しかし、彼と彼の情報機関は、北朝鮮の兵士がロシア側で戦っているので、韓国人もウクライナ側で戦うべきだと主張しました。しかし、これは国民に受け入れられませんでした。ほとんどの韓国人は、北朝鮮兵がそこにいるとは信じていませんが、彼らがいるかどうかに関わらず、韓国人は戦いたくないと考えました。」と述べている(Douglas Macgregor上記:youtube)。戒厳令はかなり以前から計画されていたのではないか。しかも、米国主導で。

4 いわゆる「陰謀論」

尹大統領の弾劾が可決された翌日の日経は、12月15日付けで「民主主義揺らす陰謀論」と題しで、尹大統領は「総選挙で野党が大勝した背景に、北朝鮮の影響を受けた勢力による不正があった」と主張」しているが、「一部の保守系ユーチューバーや極右団体が盛んに訴えている内容に近い」「こうした状況から『尹氏が陰謀論に毒されている』との見方が広がる」。SNSで「韓国や米国では偏った主張が支持される傾向が顕著となり、妥協によって利害対立を解決する民主主義の機能が働きにくくなっている」と書いている(日経:2024.12.15)。

誰に命令されて尹大統領が戒厳令を発したのかを明らかにしないために「陰謀論」がもてはやされている。これは、在韓米軍の動きと米国バイデン政権の動きを見ない・隠したいことから起こっている。

来年1月20日にはトランプが大統領に復帰する。2018年6月にシンガポールで行われた初の米朝首脳会談に続き、2019年2月にはベトナム・ハノイで第2回首脳会談が行われた。同年6月にトランプは韓国を訪れ、板門店で3回目の米朝首脳会談を行った。この際、トランプは板門店の南北軍事境界線を歩いて越え、北朝鮮側に足を踏み入れたが、残念ながら軍産複合体の強い圧力もあり、第1次のトランプ政権では朝鮮半島の緊張緩和にはつながらなかった。軍産複合体をバックとするバイデン政権は北朝鮮への挑発を強めた。第2次政権で軍産複合体の圧力に屈せず「朝鮮戦争の終戦」となるならば、在韓米軍は撤退し、在日米軍の必要性もなくなる。それは、ウクライナ戦争でロシアの弱体化に失敗し、完全に敗北した米軍産複合体にとっては、その存在自体を否定される最悪の悪夢である。バイデン政権の残任期間は残り1カ月に過ぎない。その短い期間に、何としても韓国を中国・ロシアとの戦争の最前線地帯に作り替える必要に迫られていた。

5 日本への影響

12月15日の日経は尹大統領の弾劾決議案が可決されたことを受け、「日韓外交は事実上の停止状態に陥る。首脳間の意思疎通をテコに関係改善に動いてきたが厳しい状況に後戻りする」と書いたが、その前日、弾劾決議案を通過させるため、第1回目の弾劾案の結論部分の「価値外交という美名のもとで地政学的バランスを度外視し、朝中露を敵対視し、日本中心の奇異な外交政策に固執し、東北アジアにおいて孤立を招き、戦争の危機を触発した」などと記されていたが、その記述をわざわざ削除し、戒厳令の憲法違反と内乱罪のみを焦点とし、与党も賛成しやすい内容とした(毎日:2024.12.14)。いかに日本との外交関係が韓国にとっても(また日本にとっても)売国的な政策であるかを明らかにしている。それを主導した尹大統領も岸田前首相も売国的な政治家である。この売国政策で日韓両国を強制的に結びつけたのがバイデン政権であり、軍産複合体の利益のために「彼が米国の対中国戦争計画の油まわす米国の地政戦略の従順な執行者だったからであり、米国の世界覇権を維持するという重要な課題において、実際、米国の深い支持」を受けていたからである(KJ NOH上記 2024.12.14)。「朝鮮戦争の終戦」に反対すること・極東における緊張を煽ることこそ日本政府=与党自民党の立場(対米従属・売国の)を守ることであり、もし、「朝鮮戦争の終戦」となるならば、在韓米軍は撤退し、在日米軍の必要性もなくなり、戦後の日本の国体としての対米従属も崩壊せざるを得ない。そのとき、日本は初めて(韓国も)自主的な外交が可能となる。

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