【投稿】民進党新代表と野党共闘 統一戦線論(28) 

【投稿】民進党新代表と野党共闘 統一戦線論(28) 

<<「私はバリバリの保守ですよ」>>
 民進党の新代表に蓮舫氏が選出された。民主党自らが招いた民主党政権転落の苦境から脱出するホープとして、「『ワクワクする政治』と『さわやかな戦い』『女性の挑戦』を頑張りたい」「民進党をしっかりと選択してもらえる政党にしていく」「私たちには政策も対案もある」― を掲げる蓮舫氏の登場に、民進党のネガティブなイメージから脱却する、失った党への信頼を取り戻す、そうした幅広い期待と願いが寄せられた結果であったといえよう。それはまた民進党内外の多くの人々の期待でもあった。
 しかしその期待は出鼻からくじかれようとしている。すでに代表戦の過程で蓮舫氏はわざわざ「私はバリバリの保守ですよ。みんな間違っているけど。野田佳彦前首相並みの保守ですよ」、「世界最高水準の基準に合格した原発は再稼働」などと広言し、旧民主党・野田政権の失態と誤謬を反省するどころか受け継ぐことを表明。さらに決定的なのは、安倍政権が強引かつ暴力的に押し進める沖縄の米軍普天間基地の名護市辺野古への移設方針を後押しする政治姿勢を明確にし、「辺野古移設堅持」を公言、現行の移設計画は旧民主党政権が米側と確認した内容であることを踏まえ、「結論は基本として守るべきだ。どんなに米国と話をしても選択肢は限られてくる。基軸はぶれるものではない。それが外交の基本戦術だ」と断言してしまったことである。代表選後、「今の政権の沖縄への手法はあまりにも県民の声に寄り添っていないやり方だ」と修正したが、「辺野古移設堅持」では、蓮舫氏が掲げる「対案の提示」さえできるものではない。「県民の声に寄り添い」、基地問題を民意に基づいて解決するには、辺野古移設反対、高江ヘリパッド建設反対の政策を明確に打ち出す以外の対案はありえないのである。
 そして極め付けが、野田佳彦氏の幹事長起用である。野田氏は旧民主党が政権から転落した2012年末の衆院選時の首相であり、大飯原発再稼働や尖閣諸島国有化、消費税増税など、民主党政権への期待をことごとく裏切り、総選挙に追い込まれて大敗し、第二次安倍政権誕生をお膳立てした人物である。民主党政権瓦解のA級戦犯とも言われ、デモの声を「大きな音だね」と言い捨てた人物である。しかも今年、安倍政権が消費税増税の延期を決めた際には、あくまで増税履行を迫るなど、安倍政権に得点を稼がせることに大いに貢献した人物である。こうした路線や態度を真摯に反省し、克服しようとしているならまだしも、先の参議院選挙のさなかには、「消費税の10%への引き上げは不可欠」「人情に流されれば国家財政はもちません」などと述べて、民進党躍進の芽を踏み潰した人物である。安倍政権にとって最も好ましい幹事長の誕生である。ワクワクするどころか、さわやかどころか、完全に後ろ向きの暗いイメージへの逆転である。相当民意に鈍感でなければ、こんな選択はあり得ない。自らが所属するグループの「親分」を幹事長に選択するなどという、よくもこんなバランスを欠いた人事がまかり通ったものである。つまるところ、蓮舫氏には、民主党政権を瓦解させた野田路線を克服する政策をそもそも持ち合わせていないし、安倍政権と対峙する政策によほど自信がないことの現れとも言えよう。

<<「鳥越シンドローム」>>
 民進党代表戦の開票結果を見ると、新代表に選ばれた蓮舫氏は、特に地方の党員・サポーター票の71%という圧倒的な支持を得て、「圧勝」と報道されているが、蓮舫氏が獲得したのは、23万5211票ある党員・サポーター票のうち5万9539票を獲得したに過ぎない。投票率が40.89%と昨年1月に岡田代表が選ばれた時より6ポイントも下回り、実際には4人に1人の支持しか得られていないのである。そして蓮舫氏が民意を無視する発言をした沖縄県では、党員、サポーターの投票率は20.32%と全国最低で、433人の有権者のうち、88人しか投票しておらず、蓮舫氏に投票したのは13人に過ぎず、忌避されたに等しい結果である。これが「圧勝」の実態である。
 代表選は1回目の投票で過半数のポイントを取る候補がいない場合は上位2人で決選投票となるしくみで、前原、玉木両氏の陣営は「2・3位連合」による決選投票での逆転を狙っていたが、蓮舫氏が1回目の投票で制したわけである(蓮舫氏503、前原氏230、玉木氏116ポイント)。次の衆院選に向けて、知名度の高い蓮舫氏を党の顔に担ぎ出しさえすれば、何とか難局をしのげるのではないかとする安易な作戦が民進党内に広がり、功を奏したのであろう。
 ニューズウィーク日本版2016/9/2号に、「『鳥越シンドローム』が民進党をむしばむ」という記事が出ている。「お茶の間人気で勝利するはずが、次第に政策のなさと知名度頼みがあらわになり急速に支持を失う。鳥越氏同様、お茶の間での人気を誇りながら政策のなさが目立つ蓮舫氏」、「『安倍政治と対抗する若き女性』を党トップに担げば、無党派層の支持は得やすい。」、しかし、そこには都知事選のような落とし穴があるかもしれない、という警告記事である。
 その都知事選について民進党は、敗北の総括には全く触れようともしていない。共産党に至っては、敗北どころか「東京都知事選 鳥越氏が大健闘」「4野党プラス市民」という共闘の枠組みが、首都・東京でも実現し、野党共闘の成功例と自賛するばかりで、1か月以上経っても、敗北の真摯な反省もない志位委員長の8/5の党創立94周年記念講演をいまだに押し頂き固執している。9/3付赤旗は、「9月こそ出足早く前進を」という中央委員会書記局の訴えを掲載、「8月は『記念講演』の一大学習運動に取り組み、…しかし1か月の入党数は第26回大会後で最少となりました。日刊紙621人減、日曜版6453人減、参院選後2カ月連続で後退する重大な結果となりました。記念講演の学習・討議支部は43.7%にとどまっています。記念講演の一大学習運動を新たな意気込みで立ち上がるには機関と長の役割が決定的」であると、党後退の原因と責任を機関役員に転嫁している。なぜ後退したのか、自由闊達な討論は一切封印されてしまっている。相も変わらずの上意下達主義である。9/15付赤旗は「党員拡大を根幹に据えた党勢拡大の飛躍を」と題して、党建設委員会が「党創立94周年記念講演のダイジェストDVDを必ず視聴」することを呼びかかけている。冷静な分析と真摯な反省が欠落した自画自賛のDVDを視聴することが直面する最大の課題になってしまっているのである。

<<「この道しかない」>>
 しかし、今や野党共闘路線は、そして野党と市民との共闘は、「行き詰まる」どころか「この道しかない」というのが現実である。それのさらなる質的、量的な発展はあり得ても、各党それぞれの党勢拡大や穴掘り主義では、事態は打開できないのである。共産党においてさえ、統一戦線路線を放棄して、これまでの自民党を利するばかりの「自共対決路線」に戻ることはもはや不可能であろう。
 民進党においてさえ、共同通信社が行った民進党47都道府県連幹部による聞き取り調査によると、次期衆院選での野党共闘について、22都道県が「継続」を求め、「やめるべきだ」とした9府県を大きく上回っている現状である。蓮舫氏は、代表選を通じて「参院選での選挙協力は、次の衆院選の前例にならない。綱領が違う。政策が違う。それでも選挙の街頭演説で党首同士が並ぶというのはあり得ない。ただ、野党が一緒になる力は否定しない。代表になり自分たちが作り出す政策を持ったうえで、他の野党と連携のあり方を考えることはある。公党間の約束はほごにできない。しかし私が代表になったらこれまでの連携の延長線上にあるとは思わないでほしい。」と広言していたのであるが、代表選後は、次期衆院選での共産党との選挙協力について「公党間の基本的枠組みの約束は重い。維持していく」と述べ、岡田克也前代表が進めてきた野党共闘路線を継続する考えを示し、「『与党』対『野党』というシンプルな構図が一番、有権者には選んでいただきやすい」とも語り、共産党や社民党などと一体的に選挙戦に臨む意向も強調しだしている。そして問題の野田新幹事長でさえ、次期衆院選に向けた共産党などとの共闘に関し「強い自民党、公明党連合軍にしっかり挑んで戦うには、野党間の連携は不可欠だ。(共産党との)対話が必要だ。国会対策、選挙の在り方について、対話の中でどういう解があるか見いだしていきたい」と述べざるを得なくなっている。
 しかし、野党共闘体制さえ維持・継続できればいい、といった安易で、しかも知名度だけで右往左往し、それに依存するような共闘路線では、都知事選のような手痛いしっぺ返しを食らうであろうことは間違いない。
 野党と市民との共闘を粘り強く推進してきた「総がかり運動」について、福山真劫(フォーラム平和・人権・環境共同代表)さんは、月刊『社会民主』2016年9月号「総がかり運動の今後の展開」の中で、「多くの克服すべき課題」として、「ア:世論の多数派は、戦争法・9条改悪反対であるにもかかわらず、この世論を闘いの場に十分に巻き込めていない。イ:貧困と格差社会が進行し、非正規労働者や権利が保障されていないにもかかわらず、連携できていないこと、ウ:各県段階での連携強化と自分の町・地域での取り組みがさらに求められていること、エ:労働運動・ナショナルセンター・連合との連携が不十分、オ:沖縄課題は、数回の国会包囲行動以上に取り組めなかった、カ:選挙闘争では、野党共闘の政策・体制・連携のあり方の改革、野党共闘の限界と可能性を明確にし、再確立することなどが必要です。時代は大きく変わろうとしています。それは運動団体に自己変革を強要します。自己改革できない団体は、舞台から降りるしかありません。総がかり行動実行委員会は、舞台に立ち、その役割を果たし続けたいと思います。」と述べている。
 この福山真劫さんが、9/6付「赤旗」1面、「戦争法強行1年 各界に聞く」に登場し、「参院選挙で32ある1人区で野党統一候補が実現し、11の選挙区で勝ったことは一つの希望です。改憲勢力に3分の2を許したことについては、どこに原因があるか冷静に分析していく必要があります。次の衆院選挙を野党共闘でたたかい勝つためには、共闘で政権を獲得するという基本原則を立て、共闘を組み立てる明確な政策が必要です。安保法制と立憲主義問題だけではなく、社会保障や働き方、TPPやエネルギー政策、安保では沖縄基地問題も入れる必要があります。それだけの幅を持った政策を野党間で合意できれば一番いいが困難も予想されます。そこでは市民連合が大胆な政策提起をしていく必要があります。」と語っている。
 こうした路線の展開・発展こそが、立ちはだかる困難を打開する鍵だと言えよう。
(生駒 敬)

【出典】 アサート No.466 2016年9月24日

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