<<「尖閣問題」を中心に懇談>>
10/25付・「しんぶん赤旗」は「尖閣問題で懇談」「野党共同会派に招かれ志位委員長語る」との見出しで、本文冒頭は、
「日本共産党の志位和夫委員長は24日、国会内で、立憲民主・国民民主などの共同会派の安住淳国対委員長に招かれ、『尖閣問題』を中心に懇談しました。他党・会派の会合に志位委員長がメインスピーカーとして招かれたのは初めて。国民民主の原口一博国対委員長、『社会保障を立て直す国民会議』の広田一国対委員長、中村喜四郎衆院議員ら約20人が参加し、和やかに議論しました。日本共産党の穀田恵二国対委員長も同席しました。安住氏は『よくいらっしゃいました。野党の共闘が国会でも選挙でも進んでいます。今度はぜひ志位さんに外交問題で話を聞こうとお招きしました』と述べました。志位氏は『今日はお招きいただきありがとうございます。野党の共闘がここまで来ているのかとうれしく思います。これを機会にさらに発展させていきたい』と応じました。」と報じている。
同紙は、「他党・会派の会合に志位委員長がメインスピーカーとして招かれたのは初めて。志位氏は冒頭、東シナ海の問題で、海上保安庁の資料を示しながら、『中国公船による尖閣諸島周辺の領海侵入、接続水域進入が常態化している』と述べ、これに安倍首相がまともな抗議もしていないと指摘。…『正面から日本の領有の正当性を中国側に主張し、相手の言い分を論破するという外交交渉が必要です』と強調しました。日ロ領土問題について質問を受けた志位氏は、プーチン大統領に屈従する安倍首相の『2島返還』論を批判するとともに、ヤルタ協定やサンフランシスコ平和条約にも触れ、戦後処理の不公正を大本から正すことが解決の道であることを力説。」と、かねてからの共産党の主張を志位委員長が強調し、意見交換では「野党が外交問題でも方向性を示すことが大事だ」などの意見が出され、外交論議がおおいに盛り上がりました、と報じている。
これは一体何を意味しているのであろうか。「野党の共闘がここまで来ているのか」と志位委員長はうれしがっているが、「尖閣問題」で野党が横一線に並び、安倍政権の歴史修正主義とも横一線で挙国一致の体制を形成しようという、あるいはもうすでに出来上がってしまった、という、「野党の共闘がここまで落ちぶれてしまったのか」という視点でこそ、この問題は問われるべきであろう。
<<歴史修正主義と同一路線>>
日本政府も、そして共産党も「北方領土」、「竹島」、「尖閣諸島」をいずれも「日本固有の領土」であるとしているが、これらはいずれも明治維新から第二次世界大戦に至る日本帝国主義による植民地化と侵略戦争の結果として、領有し、1945年、その軍事ファシズムの敗北、敗戦の結果として、「北方領土」、「竹島」は放棄せざるをえなくなり、「尖閣諸島」は中華人民共和国成立(1949年)前に米軍が占領していたものを引き継いだに過ぎないものである。それは否定しようのない歴史的現実なのである。それを無理やり「歴史的経緯を踏まえれば日本固有の領土だ」として、民族主義的感情に迎合・加担し、媚びを売ることは、安倍政権の第二次世界大戦の結果を巻き返し、修正しようとする歴史修正主義と同じ路線に立っていることを、自ら表明していることと同一なのである。
志位委員長からすれば、「野党が外交問題でも方向性を示す」とは、これまで共産党が主張してきた、「歴史的経緯を踏まえれば日本の領土だ」という主張をことさらに展開し、「韓国の議員と激論になったこともあります」とわざわざ披歴して、「北方領土」、「竹島」、「尖閣諸島」はあくまでも「日本固有の領土」だと断固として主張するという、この路線を共通の野党の意思確認として明確にしたいということであろう。それは、安倍政権をしっだ激励し、中国、韓国、ロシアなど「相手の言い分を論破する」、断固とした姿勢で安倍政権を支えるという意思表示でもある。こんなことに共産党は他の野党を巻き込もうとしているのである。最も喜び、陰でほくそ笑んでいるのは安倍政権であろう。
その安倍政権が、政権最大の使命としているのが憲法9条の改悪である。ここでも、「固有の権利」としての「自衛権」が9条改憲の最大の論拠とされ、共産党もこの「固有の自衛権」では同調する事態であり、「野党連合政権」では自衛隊をその「固有の自衛権」のために「利用」することまで共産党は明らかにしている。
しかしこの憲法9条は、第二次世界大戦における日本・ドイツ・イタリアのファシズム三国同盟敗北の結果として、国内外の軍事ファシズムを再び許さないという強い圧力と希望によってこそ誕生・成立したのである。日本軍事ファシズム敗北直後の米マッカーサー司令官・幣原首相を憲法9条に突き動かしたものは、この強い圧力と希望であったのだ。問題はその際に、この軍事ファシズムに最高責任者として君臨した天皇制を、憲法9条と取引する代償として象徴天皇制という、主権在民に絶対的に相容れない毒が憲法に押し込まれたことである。この天皇制に一貫して反対してきたことを誇りにしてきたはずの共産党が、今や新天皇即位に「祝賀」を表明する事態である。共産党はすでに、この「毒」をも含めて憲法を護るという路線に転換しているのである。
共産党の固有領土論と固有の自衛権に基づく自衛隊容認論、新天皇即位「祝賀」路線は、ある意味で密接につながっており、一貫しているとも言えよう。しかしこんな路線は願い下げである。ましてや、こんな路線を「野党共闘」共通の路線にすることなど、歴史への「反動」と言えよう。
(生駒 敬)