【投稿】隊員を死地に送る最低指揮官 

【投稿】隊員を死地に送る最低指揮官 

 今回の戦争法案審議で問題となっているのが自衛隊員の「リスク」である。国会では野党のみならず与党議員も、自衛隊員のリスクが高まる危険性について追及を繰り返しているが、安倍総理や中谷防衛相は「リスクは高まるとは考えていない」と木で鼻をくくった答弁を繰り返している。
 これは未だに「原発は安全だ」と言っているのと同じであり、対策を放棄すると言っているのと同様であるが、これは今に始まったことではない。
 元々自衛隊は冷戦時代でも、戦争をすることなど考えてこなかった。隊員募集も一期で除隊することを前提に「再就職に有利な様々な資格が取得できる」が一番の売りだった。隊員定数と正面装備を充足させれば十分で、戦死者を出さないための処置など後回しにされてきたのである。
 こうした自衛隊の衛生部門の後進性がこの間明らかにされている。(東洋経済ONLINE「自衛隊員の命はここまで軽視されている」「自衛官を国際貢献で犬死させてよいのか」清谷真一)
 この記事では、自衛隊の個人用救急品は最近改善されたものの、米軍に比べて貧弱であることがわかる。記事では海外向けの救急携行品の一覧が記載されているが、日本アルプスの登山者でも、多くはこれ以上の救急品を持っているだろう。
 衛生面の軽視は身体だけではなく、精神衛生面でも深刻な状況がある。
5月27日の衆院特別委の政府答弁で、イラク派遣陸自隊員約5600人のうち21人、空自約2980人のうち8人、アフガン関連派遣の海自約320人のうち25人が帰国後に自殺していることが明らかとなった。
 自殺に至らずとも、PTSDや精神疾患を発症している「帰還兵」はかなりの数に上るであろう。先日、小豆島で両親を惨殺したとして逮捕された犯人も海自「アフガン帰還兵」であった。
 1日3万円の「危険手当」が加算され、戦闘に従事しなくてもこうした結果である。アメリカはアフガンやイラクで戦死者の抑制に努めたが、年間8千人の帰還兵が自殺し、犯罪発生率も一般市民のそれを大きく上回っている実態がある。
 こうした状況で海外に派遣されれば、戦地で屍累々、帰国後も地獄の日々に苛まれる隊員が続出するだろう。リスク拡大に隊員や家族には不安が広がっており、元将官クラスからも懸念の声が上がっている。
 これに対し安倍政権は処罰強化で臨もうとしている。戦争法案には、防衛出動した隊員が海外で抗命した場合、国内法で処罰する規定が盛り込まれた。この規定は、6月18日の衆院予算委で、民主党議員から「敵前逃亡を処罰するものであり、外国領地での武力行使が前提ではないか」と追及された。
 安倍は「集団的自衛権による海外派遣はホルムズ海峡しか想定していない」として「掃海部隊が途中どこかに寄港した時、隊員の反抗が起こりうる」と掃海部隊を信用していないかのような答弁でごまかした。最高指揮官が口に出す言葉ではないだろう。
 太平洋戦争では、食糧、医薬品の欠乏と稚拙な戦争指導で多くの将兵、民間人が犠牲となったが、安倍政権は同じ過ちを繰りかえすだろう。(大阪O)

 【出典】 アサート No.451 2015年6月27日

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