【投稿】橋下改革 大阪市の財政再建策を提示
「財政再建優先」で、市民生活に大きな影響必至
<年間500億円の赤字見通し>
橋下市長は就任後、当初予算を骨格予算とし、予算規模1億円以上の約400事業について、改革プロジェクトチームで事業存続の是非について検討を指示してきた。4月上旬に検討試案が公表されている。(検討の上、7月市議会に提案予定)対象事業の縮小・廃止により、H24年度に37億円、H25年度に222億円、H26年度に287億円の予算削減ができるという内容である。
大阪府知事に就任した時も、収入の範囲内で予算を組むべきと大阪府財政再建プログラムを提示したが、今回も同じ発想と言える。しかし、大阪府の事業というのは、直接市民に影響を与えるのは、文化事業や教育関係が中心だった。しかし、大阪市の場合は、まさに基礎自治体として市民生活へ直接影響を与える事業ばかりである。果たして同じ手法が通用するのかどうかは疑問であろう。
<敬老パスが焦点か?>
大阪市HPには、この試案が公表されている。大きなポイントは3つあるように思える。第1に、敬老パスの削減・廃止問題である。同様の施策として、高齢者への上下水道料金の減免廃止、国民健康保険料の値上げもある。第2は、現在24区の区政の下で、各区に設置されている区民センター・プールの統廃合問題、第3には、「民間にできることは民間で」とする事業の民営化や廃止問題の3つであろうか。
大阪市では、70歳以上の市民に敬老パスが支給されており、大阪市営交通の地下鉄・バスが無料で利用できる。この制度もあり、子育て期には大阪市周辺で暮らしていた人が退職後は大阪市に引っ越すというパターンも多い。これまでの市長も、この制度の廃止や削減を模索してきたが、市議会はじめ反発に会い断念してきた経過がある。
私見だが、この制度の存続については、橋下ならずとも論議のあるところであり、市民合意の下で大いに議論されることが望ましいとは考える。
上下水道料金の減免廃止(約40億円)、国保保険料の他市並の引き上げ(約21億円)も市民に犠牲を強いる政策であろう。選挙中には触れもせず、市民負担を引き上げるやり方を、果たして市民=選挙民は、どう判断することだろうか。
<都構想は支持されたのか>
次の区民センターやプールなどの住民利用施設の存続問題は、大きな問題を孕んでいる。橋下は市長選挙などでは、大阪市(本庁?)が無くなれば、区役所に職員も予算も来るんです、などと発言してきた。「大阪都構想はバラ色」と宣伝してきたわけである。住民利用型施設の統廃合は、H26年度からとされているが、区の統廃合など、市政的にはどこでも議論されていない。まして、24区→8区に統合するというが、どことどこが合区するのかも決まったわけではない。(橋下は、合区問題については、H25年度に公募区長等が決めることと、この問題からは逃げている)
子育て支援センター、男女共同参画センター、キッズプラザetcと、市民利用の施設が軒並み廃止とされている。都構想による8区の基礎自治体となった場合、こうした施設は単独の区で設置できるはずもない。特徴のある施設がなくなった基礎自治体とは、どんな姿なのだろうか。
<民間でできることは民間で>
養護老人ホームや病院施設も含む「弘済院」について、民間でもできると廃止を含めて検討としている。「市民の利用が半数であり」市で設置する必要性がない、との理由が掲げられているが、福祉行政の観点がまったく欠落した論理である。
福祉関係では、社会福祉協議会への補助削減、地域活動補助も同様で、国基準や政令4市の水準を上回るものは、削減するとしている。
<市民の声を結集して>
大阪市は、担当部局との議論を行った上で、5月に成案を作成し、パブコメを実施した上で、7月議会に提案するとしている。大阪市民は、大きな声を上げる必要がある。約束が違うと。そして、この削減案が議会で承認される目処はまだ立っていない。維新の会単独では大阪市議会の過半数に満たないからである。そこで公明党がどう動くか。おそらく条件闘争で折り合いを付けるのだろうが、そんな談合を許してはならない。
さらに、多くの施設の廃止が盛り込まれているということは、当然そこで働く職員の分限という問題も出てくる。3月議会では継続審議となった「職員基本条例」には、施設廃止等の場合の分限処分(解雇)の条項も含まれている。職員削減の荒々しい手段も想定する必要があると思われる。
<大阪市が壊れていく>
前市長の平松氏が、橋下市長就任後の動きを、こう表現したという。まさにその通りであろう。「住みにくい街、大阪市(?)」と言われるようになるのだろうか。大きな反対が予想される中、国政での動きも絡んで、橋下は「脱原発」への関与に力を入れているようにも感じられるのである。6月には、この改革案論議を踏まえて、橋下は「市政改革プラン(案)」を発表すると言われている。維新の会のばけの皮を剥がす意味でも、断固とした対応が必要ではないかと思う。(2012-04-22佐野秀夫)
【出典】 アサート No.413 2012年4月28日