【投稿】弱肉強食・新自由主義・原発推進路線からの
根本的転換を求める闘いの高揚と連帯
<「ウォール街を占拠せよ」>>
「1%の富裕層が米国の富を独占している」、「ウォール街は強欲資本主義の象徴」、「ウォール街を占拠せよ」、「われわれこそが99%だ」のスローガンを掲げ、「富める者に税金を/貧しい者に食べものを」「戦争をやめよ」と要求する、米ニューヨークの10・16原発いらん関西行動デモウォール街占拠から始まった運動は、この10/1には、ウォール街から約100メートルのズコッティ公園からニューヨークの交通の要所・ブルックリン橋まで5000人以上のデモ行進が展開され、700人以上の逮捕者を出したが、10/5にはこれが1万人以上のデモ行進となり、今やロサンゼルスやボストン、シカゴ、サンフランシスコ、フィラデルフィア、ワシントンDCなど100カ所を超える全米の主要都市のほとんどで同様のデモが進行中であり、ヨーロッパ、アジア、豪州でもこれに呼応、連帯して、世界同時多発の様相をさえ呈している。
この10/1、「ウォール街を占拠せよ」組織委員会・#OccupyWallStreetが出した当日の行動、「我々は、99%」連帯行動の呼びかけは、次のように述べている。
「われわれ、99%は黙ってはいられませんし、脅しに屈しはしません。 われわれのこの土曜日の何千もの行進は、99%の声が示される時であることを明らかにするために、ともに行進するものです。 第二週を記念するこの新しい運動に加わってください。
これは、10月1日土曜日午後3時に#occupywallstreet運動と連帯して行進する、個人、ファミリー、コミュニティならびに活動グループの皆さんへの呼びかけです。
われわれは組合員であり、学生、教師、退役軍人であり、初めてこの呼びかけに応える人々、家族、失業者、非正規労働者です。 われわれは、あらゆる人種、性と信条を有しており、圧倒的多数なのです。 われわれは、99パーセントであり、もはや黙ってはいられません。
われわれは99パーセントの一員として、現在の経済ならびに政治の状況に同意できないこと、そして来るべきよりよき世界の一例として、その象徴的な意思表示として、ウォール街を占拠します。 そこで私たちは、この土曜日午後3時に、99%の仲間たちをわれわれの行進に招待いたします。行進は、LIBERTY & BROADWAY のリバティプラザ(ZUCCOTTI公園)から始まります。
行進は、午後5時30分、ブルックリン橋公園での集会と少々の食べ物で終了する予定です。」(筆者仮訳)
<<新自由主義=巨大な吸血鬼>>
そして10月15日には、インターネットで同日を全世界的な「一斉行動の日」にしようとの呼びかけが行われたが、ニューヨークから発せられたこの「10月15日行動の呼びかけ」は次のように述べている。
「この30年以上にわたって、1%は、グローバル経済システム ― 新自由主義 ― を形成し、人権を攻撃し、環境を破壊してきました。新自由主義は世界的規模で広がり、これがわれわれから雇用を奪い、ヘルスケアや教育、食料、ローンの余裕さえなくさせてしてしまっている理由なのです。
新自由主義がわれわれの未来を奪っているのです。
新自由主義は世界中どこにおいても労働者の基本的権利を奪い、生活できる賃金、社会保障、地球環境を略奪しているのです。
それは、「人間の顔を装っているが、お金・マネーのにおいがするところならどこにでもむさぼりつく巨大な吸血鬼イカ」なのです。新自由主義が、世界的に南の世界を荒廃させ、国際金融危機を ― アメリカで、ギリシャで、スペインで ― 引き起こすシステムなのです。 それは強欲の上に築き上げられるシステムであり、社会に打撃を与え不安定化させることで繁栄するシステムなのです。
新自由主義は、人類を窮乏化させることによって、1%の彼ら自身を豊かにさせるのです。
こんなことはストップさせなければなりません!
われわれは、民主主義的で経済的な正義の時代の到来を告げなければなりません。変えなければなりませんし、進化しなければなりません。
10月15日に、世界は一体となって立ち上がって、叫びます。「もうたくさんだ! われわれはあらゆるところで、互いに分かち合う繁栄、互いを尊重し、互いを助け合い、尊厳を守る時代の到来を告げる、そのような世界的な闘いを開始しているのだ」と。」(筆者仮訳)
この呼びかけに応えて、ニューヨークはもちろん、全米100都市以上で一斉行動が展開され、さらに全世界80カ国以上、ロンドン、パリ、ベルリンからマドリード、アテネ、カイロ、ヨハネスブルグ(南ア)、シドニー(オーストラリア)、オークランド(ニュージーラン)からムンバイ、東京、ソウルにいたるまで、1500を越える都市で集会やデモが展開された。それはアメリカやカナダ、ヨーロッパのみならず、アフリカ、アジアや豪州にも波及する全世界的な闘いの展開となった。
デモは欧州の主要都市でも幅広く展開され、ローマにはイタリア全土から参加者が集まり、中心部を行進、「我々は銀行の資産ではない」、「欧州の人々よ、決起せよ」と叫び、参加者は10~20万人規模に上るという。ロンドンでは数千人の人々が金融街シティーの中心に集結、「ノー・カット」と書かれたプラカードを掲げ、緊縮財政政策に抗議し、ドイツの金融の中心地フランクフルトでは欧州中央銀行(ECB)のビルの前に約5千人が結集、欧州連合(EU)の執行機関があるブリュッセルでも2千人以上がデモ行進を行い、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開かれているパリでも抗議デモが行われた。
そしてオーストラリア・シドニーの豪準備銀行(中央銀行)前の広場に集結した2000人を越える市民らが「企業の強欲ではなく人間的な要求を」などのシュプレヒコールをあげた。
さらに、中国・香港ではビジネス街の中環(セントラル)にある香港取引所前の広場に約500人が集結、国民皆年金の導入や団体交渉権の確立などの要求を掲げ、参加者は「世界の抑圧された人々と連帯し、資本主義と戦う」立場を明らかにしている。
台北市でも、台湾最大の高層ビル「台北101」の周りを大勢の人々が練り歩き、格差拡大反対を訴え、ソウルでは、市役所近くの広場で多くの人々が合流、「1%に税金を、99%に福祉を」などと訴え、米韓自由貿易協定(FTA)に反対する垂れ幕、「1%(の富裕層)を代弁する資本主義は壊れた」の横断幕も掲げられた。
日本でもこの運動に初めて呼応して10/15、東京・六本木、日比谷公園など、都内の複数箇所でそれぞれ数百人規模のデモや集会が行われ、東京電力本店前では「格差ノー」とともに脱原発やTPP反対、「放射NO」が叫ばれた。
<<根本的な社会変革運動>>
この運動の特徴は、参加者の多様性を徹底的に尊重、保障し、多様な要求やスローガンを自由に表明させ、上意下達方式ではなく、民主的な横並び組織運営、民主的運営に基づいた討議事項と決定事項の確認と伝達、暴力的・挑発的行動を禁じた平和的な運動姿勢、そしてインターネットを通じた運動情報の即時公開、ソーシャルメディアの活用、独自サイトでのアピール、呼びかけ、連帯メッセージ、全米各地からの支援物資、刻々と発せられる実際のデモ行進の動画や警察の弾圧や挑発の証拠映像、参加者の多様な声を集めた動画や写真、テキスト配信などにあり、さらにその基本姿勢には「われわれこそが99%だ」という圧倒的多数の庶民の声を代表する政治姿勢、1%の強欲資本主義とそれを富み栄えさせた新自由主義に対する広範な人々の怒りを幅広く結集する運動姿勢にあると言えよう。
さらにこの運動の特徴として指摘されなければならないのは、この運動が表面的かつ現象的な反貧困・格差是正を求める要求運動でありながら、実はこのような事態をもたらした強欲資本主義の根源に焦点を当て、金融資本主義がもてあそぶマネーゲームの犯罪性を告発し、この30年来のさばり続けてきた自由競争原理主義と新自由主義をこそストップさせなければならない、という社会を、経済を、政治を根底、根幹から変革しなければならないという社会変革運動、本来の革命的な運動の性格を内包したもの、そのような性格を濃厚に帯び、反映した運動だということである。
もちろんこのように運動を盛り上がらせた背景には、弱肉強食・強欲資本主義、それを根底から支えた自由競争原理主義=新自由主義がもたらしたすさまじい格差の拡大と政治的経済的行き詰まりが、もはや耐え難い段階に達していることにある。
<<バフェット・ルール>>
今年の8/15のニューヨーク・タイムズ紙上で、カリスマ投資家、世界長者番付で3位に入るウォーレン・バフェット氏が「私自身が支払った所得税、給与税などの連邦税は693万8744ドルである。額だけなら高額に聞こえるかもしれないが、所得との比率で言えば、課税所得の17.4%に過ぎない。一方、私の職場にいるスタッフ20人の税率は33~41%だ。平均で36%にも達する。私の税金は一番低い。」「金持ちの中には、私よりもっと税率が低い人もいる。ある投資マネージャーは何十億ドルも所得があるのに、その15%しか税金を支払っていない。」「富裕層に重税を課すと、投資意欲をそぎ、雇用にマイナスに作用すると叫ぶ人がいる。しかしそれは嘘だ。20世紀末の20年間、私に対する課税率はもっと高かった。1976年にはキャピタルゲイン課税は39.9%だった。それでも4000万件の雇用が創出されている。」「人口の99.7%は100万ドル以下の収入の人々である。その100万ドルを超える課税所得者24万人については、直ちに増税をすべきだ。さらに年収1000万ドルを超える8000人にはより高い税率を適用すべきだ」という、いわゆる「バフェット・ルール」を提起した。
これには「高額所得層向けの増税は投資を罰することになる」としてオバマ大統領の高所得層向け増税政策に反対してきた共和党、その支持者から反発と批判が巻き起こり、共和党のヒュールスカンプ下院議員(カンザス州)が書簡をバフェット氏に送り、「あなたの話がオバマ大統領の政策の牽引役となっている。このような政策を正当化する証拠を速やかに公開してほしい」と異議を申し立てた。
これに対してバフェット氏は10/12までに、ヒュールスカンプ議員への返書の中で、昨年のバフェット氏の所得がほぼ6300万ドル(約48億5000万円)で、課税所得はほぼ4000万ドル、納税額が690万ドル、所得税率は17.4%にすぎないことを改めて公表したのである。これはレーガン・ブッシュ以来の新自由主義者が提起してきた金持ち優遇税制がいかに税制をゆがめ、格差を拡大する不公平税制となっているかということを具体的に明らかにし、それにに対する根本的かつ現実的批判を提起するものであったと言えよう。それは同時に、小さな政府と新自由主義を要求する共和党系保守派のティパーティ運動の勢いをなくさせ、現在のアメリカ社会の政治的経済的行き詰りの打開策をめぐる重要な問題提起でもあった。
そしてこうした行き詰まりの打開をめぐって、先進国の支配層は総じて、さらなる新自由主義の徹底、つまりは弱肉強食支配のためのさらなる規制緩和と市場開放、無権利不安定雇用労働者の大量創出と、徹底した緊縮政策による政府機能・社会的再配分機能の縮小、教育・医療・社会保障政策を根底から破壊する予算削減攻撃、金持ち減税と庶民増税等に活路を見出そうとしている。日本の民主党政権も、政権交代を否定するこのような路線に同調しようとしている。しかしこの路線には今や支配層内部においてさえ異論が噴出し、展望がなく、混迷を続けているのが現状といえよう。やはりここにおいても問われているのは、根本的な路線転換であり、「ウォール街占拠」はそのことを提起したのだといえよう。
(生駒 敬)
(写真は、10月16日 大阪で行われた「原発いらん関西行動」のデモ写真です。俳優の山本太郎さんも、集会でも発言され、デモにも参加されました。)
【出典】 アサート No.407 2011年10月22日