【投稿】08春闘に向けて —タクシー労働者の春闘課題に寄せて—
立花 豊
昨年12月4日、連合は中央委員会を開催し、「08春季生活闘争方針」を決定した。その内容は、格差拡大、ワーキングプアの増大という労働者にとって極めて厳しい情勢を受けて、昨年までより一歩突っ込んだ方針を掲げたものになった。「基本スタンス」として①マクロ的には、労働側に実質1%以上の配分の実現。②月例賃金を重視した賃上げに取り組み、非正規社員や低所得者を重視し、全体の底上げをはかる、③法定最低賃金の引き上げにつながる企業内最賃協定の締結・改定に向けた取組み、④総実労働時間の短縮と時間外労働割増率の引き上げ、⑤中小共闘、パート共闘等の強化を挙げている。全体として格差是正・全体の底上げを全面に出したスタンスを取っているのは当然だが。今春闘では中小地場の「到達すべき水準値」を初めて示した。
また、同12月6日にはパート共闘会議がひらかれ、「取組み目安」が決定されている。連合の全体方針に合わせ、①組織拡大、②均等・均衡処遇の実現、③時間給の改善として絶対額1000円程度、上げ幅25円程度、④企業内最賃の協定化に取り組むとされている。
さて、こうした労働側に対して、企業側は「賃上げ容認」の姿勢をみせてきている。日本経団連は、08春闘に向けた臨時総会で、業績好調な企業は賃上げをすべきとした。もっともこれは昨今の消費不況から抜け出せていない経済情勢などの条件付の賃上げ容認論だが、経営側が容認せざるを得ないほどの企業環境ということだろう。原油の国際価格高騰をきっかけとした様々な生活必需品や食料品の値上げラッシュの中で、労働者の家計は昨年の住民税問題と併せて、これまでになく切り詰めざるを得なくなってきていることを考えると一部「余裕のある」企業だけの賃上げでは到底おぼつかない情況であろう。
私の所属するタクシー職場も、昨年から年明けにかけて大きな動きがあった。昨年11月「タクシー乗務員の生活向上を図るため」に、国交省はタクシー料金の値上げを認めた。12月31日に認可された料金の上げ幅は東京地区でおよそ7%程度だが、これがそのままタクシー労働者所得の向上になるとはもちろん不明である。1月17日付けの日経新聞によると、東京乗用旅客自動車協会(東旅協:約380社)が、会員35社を対象に実施した調査で、値上げ後1ヶ月間の1日当たり営業収入は前年同期比で2%減ったとしている。輸送回数も同8.9%減少し、約7%の値上げ効果は打ち消され、減収になったのである。企業の大小に関わらず減収となっている模様で、これまでの増収手段としての増車から一転して、企業としてのコストダウンを図るため減車に方向を転換したタクシー会社も出てきた。
02年2月の規制緩和以来、利用者が減少する中で、各社は増車を選択し総台数は増え続け、結果乗務員の年収は平均400万円から300万円台へと大きく減らされてきている。タクシーの労働組合は減車、乗務員のプロ化などを掲げ政府の規制緩和策に声を上げるようになってきた。今後こうした企業側の動きはより大きくなるであろうが、労働者としては賃金の完全歩合制を大きく変更しない限り安易な増車に歯止めはかからないだろう。固定給部分の創設・アップ、歩合給部分の削減を図り、乗務員の生活安定化に取り組むべきだ。また、実質年間2800時間もの労働時間も大幅に削減し、生活の余裕をつくって健康と安全を確保しなければならない。さらに労働者間の団結の阻害となっている正社員・準社員等の差別的処遇を改善させることは急務となっている。
また同様に比較的劣悪な労働条件下にある運輸労働者・トラック運転の労働者と連携する中で、政府の規制緩和政策を止めさせる展望が開かれるのではないだろうか。
【出典】 アサート No.362 2008年1月26日