【感想】死刑=最後の野蛮

【感想】死刑=最後の野蛮

 死刑について吉村先生の考察を読ませていただき、若干これに関連して述べたいと思う。吉村先生があげておられる死刑廃止論の論拠は、まず「汝 殺すなかれ」という基本命題(人道的主義的立場)、次に人間の不完全さ(誤判=冤罪の可能性)、そして犯罪抑止力の観点である。死刑廃止運動に関与している私としても、これらは主な論拠だろうと思う。これにあえて付け加えるとすると次のことである。死刑制度がある限りこれを執行する人がいる!
 死刑制度の存続に賛成する人も、死刑を求刑する検察官も、死刑判決を下す裁判官も、執行命令を出す法務大臣も自ら死刑執行を執り行うわけではない(検察官は執行に立ち会うが求刑した検察官ではない)。長い間死刑囚と接してきた拘置所職員(刑務官)が、その死刑囚の死刑を執行しているのである。死刑執行の苦悩(人を殺さなければならない苦悩である)を刑務官に負わせることをこれ以上続けていいものだろうか。
 かつて、法務省矯正局に属する人に死刑廃止を訴えた人が多い。1956年死刑廃止法案が国会で審議された際には、玉井策郎大阪拘置所長は公聴会で死刑廃止の意見を述べている。国民の目が及ばない場所で執行される死刑に関わらざるを得ない人たちの意見に耳を傾けるべきではあるまいか。
 死刑は残虐で非人道的な刑罰である。死刑=最後の野蛮を廃止しようではないか。
【岸田和男】

 【出典】 アサート No.353 2007年4月14日

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