【投稿】9/11選挙結果 小選挙区制は民意を反映しているのか
自民圧勝、衆議院3分の2を超える巨大与党が誕生した。野党の多くが比例復活と揶揄されている。アメリカ大統領予備選挙で、州の色分けがブッシュ色に染められ、あんなに頑張っていたブッシュ批判票が完全に捨て票にされてしまうのを見て唖然とした。それと同じ事が今回おきた。
しかし、比例区で『自民77(議席)対民主61、公明23』が、小選挙区では『自民219対民主52、公明8』となる。小選挙区の自民と民主の得票数は3251万対2480万(1.3倍)でも、議席数では4倍を越す差がつく。『比例』こそが有権者数を正確に反映し、民意の付託に相応しい選挙制度ではないだろうか。小選挙区制では、1位以外2位3位の人に投票した票は捨て票になる。
日本の制度は小選挙区と比例の併用といいつつも小選挙区の比重が重すぎ、民意が反映されているとはいいがたい。
<貴重なニュージーランドの経験>
小選挙区制度が大政党・政権党に有利である事は、かつてニュージーランドが経験し、その改革を市民自身が決定している(1993年まで小選挙区制)。1980~90年代、ニュージーランド政府が行った一連の行政改革は、日本でも高く評価され、お手本にしているふしがあるが、全てのニュージーランド市民が市場・競争原理の導入に賛成していた訳ではなかった。当時大政党に有利な小選挙区制(一院制)をとっていた為、与党がたやすく過半数の議席を獲得し、絶大な権力をもって政策を次々に決定、実行することとなった。
その「専制」政治に歯止めをかける「選挙制度の変更」を求める世論が無視できなくなり、1990年国民党は、選挙制度改革に関する国民投票を公約にかかげた。政権についた国民党は、1991年「選挙制度国民投票法」を制定し、2度にわたる国民投票を実施している。1回目は、制度を改革するか否か(4つの制度から1つを選ぶ、現行制度が多数であればそれで終了する)。しかし、もちろん「改革」が多数を占めたので、次ぎの1993年総選挙と同時に2回目の国民投票を実施した。「現行の選挙制度」と「1で最多得票した選挙制度」とで投票を実施し、その際決定された選挙制度で1996年以降の総選挙を実施している。その他1票の格差是正も適宜行いほとんどない。NZには学ぶべき事が多い。
<閉塞状況のはけ口としての公務員攻撃>
このように小選挙区制は極めて問題で、すでに国民的運動でこれを乗り越えた国民もあるが、しかし現在の日本では自民圧勝となった今回の選挙で示された動きに注目しておかなければならない。
「改革」を行えば将来がバラ色になるという幻想をふりまき「改革」を阻害するのは「悪」として映し出す。郵政民営化反対議院、公務員、労働組合を批判し、閉塞状況へのはけ口として集約した結果が今回の自民党大勝であり、この社会情勢はきわめて危険な状況として捉えるおかなければならない。労働組合の社会的役割の強化が求められている。
<ワンイシューの選択には「国民投票」を対峙できないか>
9/11は郵政民営化のワンイシュー選挙であったはずが選挙後既に、小泉政権は信認され全権委任されたとして、公務員制度「改革」、憲法改憲、サラリーマン増税、2007年消費税増税が矢継ぎ早に取りざたされている。
ワンイシューを選択するには、国民投票という手法もある、野党は小泉人気に負けたというだけでなく、郵政問題に対案を示して国民投票を仕掛ける事も出来たのではないか。
民主党について一言、政権交代をスローガンにし「あきらめない」マニフェストを、1回の選挙で諦めるおボっちゃまでは情けない。岡田代表の演説は、5分では理解出来ない15分聞いて腑に落ちる。論理的に物事を語らずフィーリングで大衆の心をつかむタレント小泉が党首討論を最後まで避けた理由がそこにある。中身は間違っていないし、岡田党首の誠実な人柄の見て取れる選挙戦だった。国民は何年かかっても政権交代を追求する迫力ある政治家・リーダーをこそ求めている。でなければ長期間政権をにぎり続けている老練・老獪な自民党に勝てる訳がない。
最後に、都市部の票が郵政改革に「賛成」票なのは当然ともいえる、過疎地の郵便局が廃止されようと東京や大阪住人は何ら不便は感じないのだから。個人のエゴだけでなく国民全体の利益を不公平にならないよう考えるのが正しい政治家だと思う(東京在住E.T )
【出典】 アサート No.334 2005年9月24日