【投稿】孤立への道歩む小泉政権

【投稿】孤立への道歩む小泉政権

<素人以下の外交感覚> 
4月8日、ローマ法王ヨハネ・パウロ2世の葬儀がバチカン宮殿で行われた。これには、国連のアナン事務総長を始め、米・ブッシュ大統領、仏・シラク大統領、英・ブレア首相などの他、イランのハタミ大統領、イスラエルのカツァブ大統領など非キリスト教国からも元首級の要人が多数参列。まさに国連総会がバチカンに場所を移したともいえる光景であった。
 こうしたなか国連安保理常任理事国入りをめざす日本代表はといえば、川口首相補佐官。格下もいいところだ。本人も針の筵に座っている気分だったのではないか。川口補佐官は疑問の声に対し記者会見で、「葬儀に誰を派遣するかはそれぞれの判断。日本は私がいいと官邸と外務省が相談して決めた」と述べ反論したが、その判断が間違っていたとしか言いようがない。本来参列すべき小泉首相の当日(日本時間)の日程と言えば、午前、午後は閣僚、知事、外務省官僚らとの懇談、夕方以降は「散髪」「会食」という休日同様のものだった。
 このエピソードは、小泉政権の外交音痴を如実に現すものだが、東アジアにおいてはそれが韓国、中国との対立という、深刻な事態を招いている。
島根県の「竹島の日条例」制定の動きが明らかになって以降、韓国内ではこれに反発する動きが激化、加えて教科書検定問題も絡んで、反日感情は日増しに高まっている。廬大統領もこれまでにない強い調子で日本政府を非難、対日外交方針の見直しを明らかにした。
 中国では、昨夏のサッカーアジア杯以降も燻り続けていた反日の炎が「歴史認識」などを巡り再び拡大、北京をはじめ上海、成都、広州など主要都市で、「日本の常任理事国入り反対」などを掲げた数万人規模の反日デモが繰り広げられた。
 このような事態を前に日本政府、官邸は具体的対応を示すことができず「お互い冷静に」と無内容なお題目を繰り返し、右往左往するのみである。とりわけ韓国に対しては「韓流ブーム」に便乗し、その場の雰囲気で進められてきた友好政策は行き詰まり、小泉首相らの韓国認識は「ヨン様ファン」以下のものであることが露呈した。
 とりわけ教科書問題の当事者である中山文科大臣にいたっては、以前から「従軍慰安婦や強制連行に関する記述が教科書から減ったのは良いこと」などと、韓国を挑発する発言を繰り返し、今回も「教科書に竹島は日本領土と明記すべき」などと延べ、「妄言」と批判されている。対北朝鮮強硬派の中山恭子内閣官房参与を引退させる見返りに入閣した中山大臣であるが、夫婦揃って朝鮮半島全体を敵に回してしまったわけだ。
 
<日本政府のダブルスタンダード>
 政府は竹島領有権の根拠を、1905年の島根県編入時、韓国政府から抗議がなかったこととしている。しかし日露戦争当時の情勢をみれば、韓国政府が意義申し立てできる訳がない。その数ヶ月後、竹島から対馬にかけての海域でバルチック艦隊を破った連合艦隊は、釜山にちかい鎮海湾を根拠地にしていた。すでに韓国全土は日本の勢力圏下に置かれていたのである。そうした内実を抜きにして、形式論を振りかざしてみても、韓国側は納得しないのであって、ますます反発を強めるばかりだろう。
自民党は、外国人参政権や公務員国籍条項問題などでは、「推進決議をあげるな」と自治体に圧力をかけてきたことを棚に上げ、「竹島の日条例制定は島根県の自主的判断。政府が止められるものではない」と、地方自治を尊重するかのような建前で韓国に反論。一方、中国の市民、学生らの反日行動について「民衆の自発的行為」と説明する北京指導部に対しては「政府がなんとかしろ」と求めるなど、ダブルスタンダードをあからさまにしている。また、「反政府行動は弾圧するのに反日デモは野放し」と政府、自民党は憤慨しているが、日本の公安、機動隊の右翼と左翼への対応の違いをどう説明するのか。天に唾するとはこのことだ。
教科書検定でも、これまで政府の方針にそぐわない教科書、記述については、文部省が家永教科書のように不合格にしたり、何度も書き直しを指示してきた。今回も先の中山発言をふまえた検定はおろか、扶桑社の説明文を「韓国が不法占拠」とより踏み込んで変更させているにもかかわらず、「国定教科書ではないのでそんなことはできない」と白々しい嘘をついて恥じないのである。
 さらに、教科書記述の見直しを求める意見に対して「自国民への教育は内政問題であり、韓国の要求は内政干渉」と非難する勢力がある。それなら中国の「反日(愛国)教育」を批判するのは「内政干渉」ではないのだろうか。また「自国民への愛国教育」を批判するなら、そういう主張を展開する人間は、日本の憲法や教育基本法に「愛国心」(実際は「愛・現政府心」)をねじ込む動きを即刻辞めるべきではないか。
 
<軍拡・孤立の道歩む日本>
日本政府の不誠実な対応では、韓国、中国両国との関係悪化をくい止めることは難しく、政治、経済での連携の強化など、当面望むべくもないだろう。今年アジア地域では、中断されている北朝鮮の核問題を巡る6カ国協議、さらには「東アジアサミット」など重要な多国間会議が控えており、これら場での日本の対応が問われる年となっている。
6カ国協議では、その再開と共に日米韓の連携が言われているが、流れは「日、米」の強硬路線に対して「韓、中、露」の融和路線が勢いを増している。また東アジアサミットへの関与については、「東アジア共同体」に冷ややかな視線を送る米、豪への配慮からの消極論と、中国のイニシア拡大を座視する訳にはいかないという積極論の狭間で、日本独自の構想を描き得ていない。
こうした曖昧模糊とした外交政策とは裏腹に歴然としているのは、軍拡政策である。政府は仮想敵国を旧ソ連から北朝鮮、中国にシフトしているが、とりわけ北朝鮮についてはさまざまなメディアを駆使して脅威を煽り立てている。北朝鮮は去る2月10日、サッカーW杯予選が終わるのをまって待っていたかのように、「核兵器保有」を公式に宣言した。
しかし、核実験や核弾頭を搭載する弾道ミサイルの性能証明が行われていない、つまりなんら実証がなされていないことから、核兵器保有を疑問視する声が大きいが、日本政府は「大歓迎」のようだ。
先日、1994年に防衛庁が北朝鮮のミサイル基地を「先制攻撃」する作戦を検討、航空自衛隊による攻撃シミュレーションまでを行っていたことが明らかになった。
その内容は、「北朝鮮沿岸部の基地からミサイルが発射されようとしている」という状況で、空自のF4、F1戦闘機が石川県小松基地や鳥取県美保基地から北朝鮮攻撃を実行。帰途で攻撃機が燃料不足に陥った場合は、韓国内の米軍基地への着陸や日本海上での機体放棄も検討されたという。
 私は本誌2003年3月号で「自衛隊が能力的に北朝鮮に反撃できないというのも、眉唾ものである。自衛隊は以前は『自衛隊機の航続距離が短いから無理』と言っていた。これはそもそも、石川県の小松基地からの往復を絶対条件とするため、不可能なのであって、『第2次』朝鮮戦争が勃発し日本も攻撃を受けた場合、九州地方の民間空港や韓国内の米軍基地の使用も考えられるのである。これは性能の問題ではなく、運用、政府間の調整の問題である」と指摘した。
今回明らかになった事実は、そうした見方を裏付けるものであるが、「第2次朝鮮戦争での日本攻撃」という前提から、格段に踏み込んだ「先制攻撃」という研究内容には驚かされる。もっとも防衛庁的には「そうならないためにもミサイル防衛(迎撃ミサイル)が必要」というオチにしたいらしいが、新型戦闘攻撃機、空中給油機の導入や「新・防衛大綱」の具体化で、攻撃能力は大幅に向上しつつある。
中国に対しても、東シナ海の資源問題、尖閣諸島問題、さらには台湾有事などを口実に軍事的対抗手段が進められようとしている(本誌2004年9、12月号拙論参照)。このまま進めば、日本がアジアのなかで孤立するのは明らかである。日本政府は安保理拡大問題などでインドとの連携を模索しているが、先日訪印した中国の温家宝首相は国境問題解決を確認、同国の安保理常任理事国入りを支持するなど関係改善を急速に進めている。最後はアメリカさえいれば、と小泉首相は思っているかもしれないが、安保理拡大問題で、アメリカ政府は「早急な結論づけは支持しない」と表明した。また4月11日、ニューヨークで開かれた投票決着反対派の会合には、119カ国が参加したという。「アナン報告」支持=9月決着を目論む日本政府は梯子を外された形となり、世界的にも孤立しつつある。小泉政権の「任期満了」を待ってはいられない状況となっている。(大阪 O) 

 【出典】 アサート No.329 2005年4月23日

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