【投稿】大阪府、4度目の財政再建計画を提案

【投稿】大阪府、4度目の財政再建計画を提案

全国都道府県のなかで、経常収支比率は15年以上ワースト1にあり、且つ94年からは100を超え、また、98年度以降6年連続赤字決算となっている大阪府は、今年9月1日、行財政計画「改定素案」を公表し、現在パブリックコメントに付されている。
大阪府の行財政計画は、96年1月の行政改革大綱に始まり、同年8月には『財政健全化方策(案)』を発表。また98年9月にはあの定期昇給24月延伸、特別昇給3年停止を強行決定した『財政再建プログラム(案)』を策定。更には2001年に行財政計画(案)を策定しており、今回で途切れることのない4回目の行革計画である。
行財政計画(案)は集中取組期間3年間で、1,145億円の経費削減計画予定に対し、2、132億円にのぼる987億円の歳出削減効果を上げていた。主な削減対象は人件費であり、職員数の削減にも増して、職員給与が際だっておりそのラスパイレス指数は平成15年4月時点で99.1と全国48道府県の中で46番目となっている。 しかし、長引く景気低迷の影響による税収減や交付税の大幅な削減により、このまま推移すれば2007年度に財政再建団体へ転落することが必死となったとし、これを回避するため、2005年から2007年度の3年間を「緊急取組期間」と位置づけ更に絞ることとしている。
具体的には府立高校再編に伴う跡地売却等で330億円、税収確保90億円、合計420億円の増収を見込むとともに、人員削減、一時金のカット(指定職10%、管理職6%、その他4%)、時間外手当の年360時間の上限設定、非常勤特別嘱託制度を廃止し再任用職員に置き換えることにより新規採用職員の抑制、管理職手当の見直し、職員互助会・教職員互助会等への補助金の削減、公営企業に対する繰出金の削減、アウトソーシング・PFI等による民間活力の活用、出資法人の改革、公の施設への指定管理者制度の導入、主要プロジェクトの「点検」等により805億円を削減するとしている。問題なのは805億円の削減額のうち、510億円(63%)を人件費抑制により生み出すこととしており、行革計画のなかでも類を見ないすさまじいものである。
しかし、「再建方策だけでは未来への展望を開くことができない」ため2つの視点(アジアの中の大阪、住む人が安心できる大阪)と7つの戦略的取組分野を設定し、施策の重点化を行うための「再生重点枠」を削減効果の一定割合を財源に行う、「あえて「再建」と「再生」の二兎を追う」としている。また、行財政改革有識者会議とその専門部会を設置し、改定素案項目全体についてお目付け役をおくこととしている。国における経済財政諮問会議(行財政改革有識者会議)は小泉首相流の手法を大阪府に持ち込んだ構図となっている。
今回の改定素案は、第1に、財政収支試算の歳入について一定の前提条件で試算したとしているが、「三位一体改革」による交付税等への影響が前提となっていることである。平成16年度地財改革により大阪府は普通交付税8.2%減、臨時財政対策債を加えると14.8%(750億円)の減になっている。これがなければ改定素案を策定することは必要でなかったかもしれない。9月府議会でもこの点を突かれ知事は「長期財政推計につきましては、これら(三位一体改革の動向)を踏まえ見直しを行い、当初予算案と合わせて公表したいと考えます」と答弁することになった。
第2に、3年間の削減効果額のうち510億円(63%)が人件費抑制額であり、8年連続の賃金抑制に加え、あと3年以上抑制が続くことに対する問題である。9月府議会でも、一般行政職員は除外されているようであるが、「一律カットは、職員のやる気を失わせ、・・・特に、医者や警察官など府民の生命に直接かかわる職種についてその特殊性をまったく考慮しない対応は問題がないとはいえない」(自民党西野議員)、「昇給2年間停止、人事委員会勧告も実施されず、全国ワースト1に近い警察、教職員を含む職員の給与水準も限界にきていると考えますがいかがでしょうか」(民主党漆原議員)など計画の組み立て方に対する疑問も出ている。
第3に、再生重点枠は、要は「府内と府外に関すること」を重点としてやりますとしているだけで、「府内と府外」以外何があるのか分からない。唯一府庁新庁舎建設は凍結するということだけである。これも議会では「2つの視点、7つの戦略的取組分野はきわめてあいまい且つ包括的で、まったく重点化になってません」(自民党西野議員)と指摘されている。
第4に今後の課題等について、有識者会議専門部会で検討するとされているが、専門部会と施策決定の関係など専門部会の位置づけが不明確である。これについては、議会軽視であるとして議員からの評判は最悪であり、各部長クラスの中にも「聞いてない」と不満を漏らす人もいるらしい。
国、地方自治体を問わず財政は経済社会の混乱を背景に、政治的に設定されるものである。財政赤字のみに関心を寄せ、つじつま合わせに終始するならば、木を見て森を見ないのではなく、木も見ず葉っぱのみを議論している事と同じである。ウエスト100センチの人に80センチのベルトを締めさせても根本的な解決にはならない。 (羽)

【出典】 アサート No.323 2004年10月23日

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