【投稿】危機感を感じる連合大会
連合は第8回定期大会をこの10月2日から3日の2日間にかけて開催した。大会スローガンは「組合が変わる、社会を変える~安心・公正な社会を求めて」である。連合は前回の大会で、「この1年を組織拡大と雇用確保に向けて全力を」(笹森会長)としていたが、それもそう簡単に実現できるはずもなく、そのためにこそさきのスローガンが必然的に唱えられたのであった。
ではこの1年間、その目標は実際にどうだったのか。連合は「アクションプラン21」として組織拡大を大目標(60万人)にこの2年間の実績を報告している。これによると、2年間(2001年10月~2003年9月)に293,749人の組織拡大を実現し、うちパートは82,904人であった。地域ユニオンでの拡大は5,321人だとしている。また、達成率は半分にも満たないのだが、29万人あまりの拡大実績のうち、この1年をみるとおよそ13万人だが、後半の2003年4月~2003年9月では92223人と増えていることに若干の救いがあると連合事務局ではしている。しかし、一方でのリストラによる正規雇用社員の減少によって既存組合の組合員数はおしなべて減少し、総組合員数も大きく後退しており、いまだそのスピードは変わらない。連合傘下のUIゼンセン同盟はなかでも組織拡大には大いなる成果をあげたが、組合員数はやはり減少しつつある。
雇用については、失業率をみるまでもなく5%ラインをめぐって前後しているのがここ2年間続き、潜在失業者はおよそ300万人以上は存在しているとすら言われ、雇用を継続しているものでも、従来の労働条件を大きく後退させられている。すくなくとも連合が雇用問題に果たした役割は政府に対して政策提言をした程度にとどまっているといわれてもしかたのない状況だろう。
労働組合のもっとも大事な課題である春闘はどうだったのか。02春闘までは連合台でそれなりに賃上げ目標を掲げ、内容はどうであれ「総かかり体制」を唱えていたが、ついに今春闘では賃上げ目標やガイドラインすら示すこともできず、まさに産別自決・企業別労組自決においこまれてしまった。結果は大手企業はそれなりに業績を反映させた回答を得たが、中小労組は賃上げすらできなくなってきた。中小労組を多く抱えるゼンセン、JAM、全国一般などは春闘後連合に中小の賃金政策について、少なくともガイドラインを示し、中小政策を強化するよう申し入れをした。
こうした昨今の状況は組合をめぐる環境は依然として変わっていないという例証だが、連合は外部の学者・文化人による「評価委員会」を設置し、大会を前にした6月中間報告を発表した。大会では最終報告を発表しているが、この報告を読むと、「当たり前の労働運動」こそ社会に求められていると思われる。報告について詳しくは述べないが、連合の笹森会長・草野事務局長など幹部は、当初この報告を具体的に工程表を作成して実行していくことを明言していたが、大会ではそれを大幅に後退させた方針案を示さざるを得なかった。
大会のもう一つのテーマは会長選挙である。笹森会長は早くから再任を表明していたが、UIゼンセン同盟会長の高木氏が会長選挙に立候補したことから、にわかににぎやかになった(他の役員は事務局長はじめすべて定員内の立候補のため選挙は行われない)。大会選挙に先立って労働ペンクラブ主催による「立会い演説会」が行われた。そこでも私の思っていたことと同様の質問がなされたが、「なぜ高木氏は立候補したのか」ということである。さきの中小問題の申し入れをめぐってというなら理解しやすいが、JAMや全国一般の代議員の票はおそらく笹森氏に向かうはずであり、さらに二人の政策をみてもまったく変り映えしないのである。政治的な理念でもそう変わらないはずであり、「人がかわることで新たなエネルギーを」と高木氏は語るのだが、選挙をする意味がどうにも理解できないのである。結果は事前の予想通り笹森会長が再任を果たしたが、「コップの中」の茶番劇といってもいいくらいの低調な選挙戦であった。
大会はつつがなくスケジュールどおりに終わったが、労働組合をめぐる環境はあいかわらず厳しさがつきまとう。労働組合組織率は20%を切るのは時間の問題だといわれている。評価委員会の報告をどう実行し、実現できるかに労働組合の存亡すらかかっていることに大きな危機感と、そして期待感を感じているのは私だけではないだろう。
(立花 豊)
【出典】 アサート No.311 2003年10月25日