【投稿】2001春闘:明暗分ける回答、パート賃上げの行方は?

【投稿】2001春闘:明暗分ける回答、パート賃上げの行方は?

○3月15日この日ばかりは、各新聞社の「社説」には、2001春闘についての記事が全紙に掲載された。朝日は「『賃金か雇用か』を越えて」と「時期こそ同じだが、企業ごとの交渉の寄せ集めというのが春闘の実態だ」と手厳しい。毎日は「パートの働く条件改善を」と「・・これからパート春闘の本番を迎える。春闘は働く人々全体のためにある。労組の役割はまだまだある」と少し激励調。日経は「労組主導で一律賃上げに変化」と、産別内でも、自動車総連が4段階の要求基準・妥結基準を作り、「格差を容認している」と「グローバル時代にどのような賃金制度を目指すべきか、労使間での議論に期待する」としている。こうした「評価」を受けた2001春闘は、どのような問題を提起しているのだろうか。
○2001春闘の民間大手の山場を迎えた3月14日。連合の春闘回答速報(No.4 3/16)によると、電機連合ベア500円などベア方式回答では、ほぼ横並び状況、そして一時金では、話題になった日産が5.2ヵ月をはじめ、トヨタが5カ月+32万円など業績の良い製造業を中心に昨年を「若干」上回る回答を引き出しているのに対して、電力のベアゼロ、自動車でも三菱がベアゼロ、流通でもマイカル、ダイエーが春闘前からベアゼロを確認するなど、企業業績を反映した回答となった。そして若干の企業業績の好転を受けて、ベアや基本賃金よりボーナス(一時金)で、業績配分を行う傾向が一層強まった感がある。
 少なくとも昨年よりは、ましな回答が出たかのような印象だったが、果たして本当にそうなのだろうか。確かにベア回答や一時金で一面昨年をわずかながら上回っているとは言え、業績反映型、一時金分配型が一層強まり、また中小や地場賃金にどれだけ波及力が存在しているのか、後段のグループや中小の闘いが終結し全体の春闘集計が出るわからないのではないか。
 さらに、製造業を中心に企業業績の改善が見られるなど経済状況は好転はじめたとの春闘スタート時点の認識だったが、特に3月に入ってから急速に株価の急落、円安の進行など逆風が吹き、厳しい春闘展開となったことは否めない。
○日経連は、1月の労問研報告では、業績・成果主義の徹底という賃金の個別化路線を強める方向を示しており、春闘不要論に対して何とか今年は持ちこたえた感はあるものの、連合総体として、こうした業績・成果主義賃金体系(?)に対して、各産別任せという状況に変りがない。連合の主力産別が製造業中心ということもあり、金融や流通、特に第3次産業など連合の力が弱い業界の中でで急速に進展している年功・終身雇用からの転換に対しての取り組みが求められている。
○初めて取り組まれたパート賃金引上げの行方も注目されている。電機連合はパート労働者に対しても公正処遇の確保に努める、JAMも企業内のパート賃金を時間額で10円以上引き上げることを方針に盛り込んだ。「21世紀戦略」として連合が位置付けた、公正処遇としてのパート労働者の賃上げ要求は、少なくともマスコミや未組織労働者からは、額は別として好感を持って受け止められている。問題は、具体的に各連合加盟組合内の交渉でどの程度、要求が実現したかであろう。この点は、まだまとまった集計は出ていない。
 オランダのワークショアリングがよく参考にされる。しかし、オランダの場合は、正規労働者のパートライム化が主流であり、フルタイムの労働条件を時間配分することから始まっているのである。日経連の「多様な働き方」などという奇麗事ではない。今年初の取り組みであったとしても、本腰を入れた取り組みにしなければならない。
○春闘の闘いの一方で、大企業のリストラの流れは、「デフレ襲来」という中で一層加速しているようにも思える。「マツダ2時間、マイカル4時間」。それぞれの企業が退職金の割増を保証する希望退職申し込みに希望社員が殺到し、瞬く間に予定人員を超過したという。マツダでは予定を大幅に越える2200人、マイカルでは1730人が早期退職の希望をしたため、それぞれ2時間や4時間で打ち切られたのである。NTTや三菱など早期退職、今後予想される金融や生保、建設業界などリストラが「避けられない業種」は山ほどあり、加えて今年4月からは雇用保険制度が改正実施され、早期退職者やリストラされる労働者にさらにムチが待っているのである。
○さらに公務員をめぐる状況は、公務員制度改革議論が大きく「進展」しようとしており、4月から6月にかけて大きな山場を設定しての闘いが準備されつつある。昨年の人勧での成績・業績を重視した賃金システムへの報告が行われ、公務員制度改革議論が行われてきた。しかし、橋本行革大臣になり、参議院選挙を前に政治サイドから「選挙の目玉」に公務員制度改革を据える狙いが明確になってきたためである。そのポイントは、「政治主導の下、身分保障に安住することなく」「成績主義・能力主義に基づく信賞必罰の人事制度」などであり、新行革大綱に基づく「基本方向の提示」が、6月にも提示される方向が、自民党主導で強力に進められようとしているからである。公務員部隊の春闘は、公務員制度改革に絡んで、これからが闘いのスタートといったところか。
○大手の回答がほぼ出揃ったとは言え、まだまだ2001春闘は真っ最中である。3月決算を前にした、迷走する経済の中、厳しい取り組みが求められている。そして、いよいよ「春闘再構築」「春闘改革」議論も、その後本格化していくことになる。(H) 

 【出典】 アサート No.280 2001年3月24日

カテゴリー: 労働 パーマリンク