【投稿】「闇の国家」の操り人形としての日本

【投稿】「闇の国家」の操り人形としての日本
福井 杉本達也    アサート No.500 2019年7月

1 イランとの戦争の危機を回避したトランプ
6月20日に米国の無人偵察機がイラン領海内に入ったところで撃墜されたが、これへの報復措置として、同日の夜にイランのイランのレーダーシステムやミサイル関連施設などを標的に攻撃する態勢を整えていた。しかし、トランプ氏は米軍高官から攻撃による死者が150人に及ぶと聞き、「攻撃10分前に中止を命じた」とツイー卜した。 攻撃計画を撤回したのは「無人機の撃墜と(死者数が)釣り合わない」からだとし、「私は(軍事計画を)急いでいない」と語った。(日経:2019.6.22) 米軍高官が開戦に反対している理由は、2003年のイラク戦争に際し、当時のラムズフェルド国防長官は10万人で十分だと主張したが、軍は80万人が必要だとしていた。結局、約31万人が投入されたが、足りず、ずるずると現在まで来ている。イラクの人口は2600万人だが、イランは8100万人であり、イランとの戦争を構えるならば240万人が必要になる。(櫻井ジャーナル:2019.7.12)そのような米軍の動員は物理的に不可能である。さらにはアフガニスタンからの撤退の問題もある。ハント英外相や好戦主義者は、このトランプの決定が気に喰わなかったのであろう。

2 イラン核合意を潰し、戦争を画策する英国とBチーム
その英国の戦争工作の1つが、7月4日の英海兵隊のジブラルタル海峡における、イラン船籍のタンカーの拿捕である。これにボルトン米大統領補佐官は歓迎の意を表明した。イランのザリーフ外相はタンカーの拿捕は「危険な禁断行為であり、いわゆるBチームを代理して行われた」と語った。Bチームとは、世界の好戦主義者を指し、その構成員はBで始まる人物、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子、アラブ首長国連邦のムハンマド・ビン・ザイド皇太子、米のボルトン大統領補佐官らである。(日経:2019.6.3「中東誤算と混乱」、Pars Today 2019.7.8)さらに英はホルムズ海峡に3隻の駆逐艦を派遣し緊張を高めようとしているが、海峡の地理を熟知したイランは報復として7月19日には英のタンカーを小型船舶で拿捕している。

3 ホワイトハウスは「機能不全」とメールした英駐米大使
英保守党首選が行われているさ中、英紙デイリー・メールは7月6日、ダロック英駐米大使が2017年から現在まで英外務省へのメールの中で、①我々はトランプ政権が正常化するとも、少しでも機能を取り戻すとも、予測可能になるとも、内部対立が収まるとも、外交的で適切になるとも全く思っていない 、②スキャンダルまみれの人生を送ってきたトランプ氏は映画ターミネーターのラストシー ンのアーノルド・シュワルツェネッガーのように炎の中で溶解しながらも損なわれないの かもしれない、などと書き送ったと報道した。ハント英外相は、「大使は駐在先の国で起きていることに ついて、率直に報告し個人的な見解を伝えるという大使の務めだ。」と述べ、これを擁護し、メイ首相もダロック大使を「全面的に支持する」とした。
これにトランプ氏が激怒した。「彼はアメリカ国内で好かれていないし、評判も良くない。我々はこれ以上、大使を相手にしない(We will no longer deal with him)。素晴らしいイギリスにとっては、近々首相が新しくな るのが何よりの朗報だ。」と批判した。結局、ダロック大使は辞任することとなったが、メイ首相は英米は今も「特別で永続的な」関係を共有していると述べたが、両国(トランプ氏とメイ氏)の関係は完全に破綻している。
金融資本家、軍隊、軍需産業、官僚機構、諜報機関などが結びつき、『選挙で選ばれた国民の代表者ではない集団』によって国家の基本政策が決められている<状態>のことを、トランプ氏は「ディープ・ステート」(闇の国家)と呼んでいる。英国は自力の能力はないので、強大な軍事力を持つ米国を何としてもイランとの戦争に巻き込みたいので、様々な工作をしていると考えられる。今回、図らずも英大使のリークメールから「ディープ・ステート」の司令塔が英国にあることが明らかとなった。

4 トランプと金正恩の板門店38度線越えと極東の緊張緩和
大阪でのG20を終えたトランプ米大統領は6月30日、金正恩北朝鮮主席と板門店で第3回目の首脳会談を行った。マスコミは「電撃会談異例ずくめ」「ツイッターに驚いた」(日経:2019.7.1)などと「トランプ氏の思い付き外交」と報道したが、両者の周到な準備による会談であったことは疑いようがない。それは、北朝鮮側からハノイでの2回目首脳会談を失敗させた主犯として名指しされたボルトン補佐官を今回の首脳会談では外したことからも明らかである。トランプが米大統領として初めて休戦協定ラインを越えて金正恩氏とツーショットしたということは、米国として北朝鮮と戦争をする気はない、北朝鮮の体制を保証するという確固たる意志表示である。7月1日付けで日経は「米朝は政治ショーより実務協議重ねよ」、毎日も「板門店での米朝会談 派手な演出よりも内実だ」と、朝日も「米朝首脳会談 非核化の進展が肝心だ」との社説を掲載し、読売も7月2日の社説において「安易な妥協は禁物だ。北朝鮮が非核化の行動に踏み出すまで、制裁を維持することが肝要である。」と書き、首脳会談は中身のない政治ショーであるかのような宣伝に躍起となったが、かつて両国が戦火を交え、何百万人もが犠牲になり、その後66年、厳しく対峙した板門店で両首脳が笑顔で握手する風景は、紛れもなく東アジアの緊張緩和である。どうして素直に評価できないのか。いかに日本のマスコミがBチームのプロパガンダ機関と化しているかが分かる。
朝鮮半島における緊張緩和が実現するということは、韓国に米軍(国連軍として)が存在している根拠がなくなり、日本に大規模な米軍基地を配置しておく必要性もないということである。

5 日米安保条約を否定するトランプ
米朝首脳会談に先立つ6月29日、G20閉幕後の記者会見で、トランプ大統領は「『アメリカが攻撃された場合、日本は戦う必要がない。これは不公平であり、ばかげたディール=取り引きだ。私は、これを変えなければならないと彼に伝えた』と述 べて、日米安全保障条約を改める必要があるという考えを、安倍総理大臣に伝えた」(NHK:2019.6.29)と述べた。「野上浩太郎官房副長官は29日、28日の日米首脳会談で安保条約を含む日米間の安保問題の議論はなかったと記者団に明らかにし、『政府間で安保条約の見直しといった話は一切ない』」(福井:2019.6.30)と否定に躍起となったが、まさかトランプ氏の会見をフェイクだというわけにもいかず、追い詰められた安倍首相は30日夜のインターネット番組で「初めて会ったときから説明している」(日経:2019.7.1)とこれまでの政府説明を100%ウソだったと全面否定せざるを得なくなった。フェイクはBチームの意向に沿った官邸側だったのである。しかもトランプ氏の発言の真意を「通商交渉での揺さぶり」や「基地負担経費の倍増」、「ホルムズ海峡有志連合への参加」等々にあるというねじ曲げた言説が政府・リベラル双方にあるが、そのようなところに真の目的があるのではない。日本は日米同盟があり、日本を守るために在日米軍はいると思い込み、「双方の義務のバランスは取れている」(菅官房長官)などとし、まして日本から撤退することなど絶対に無いと思っているがそうではない。米国の税金を使っている以上、米軍は米国のために奉仕しなければならないというのがトランプ流の不平等感であり、極東の緊張緩和を実現させ、「America First」とならない無駄な5万人もの在日米軍は撤退させるというのが真意である。大統領が38度線を越えた以上、論理的にはそうならざるを得ない。

6 文政権を揺さぶり極東を緊張させる半導体材料の対韓禁輸規制
第3回の米朝首脳会談により。極東の緊張緩和が実現しつつあるが、これを好まないBチームが持ち出したのが日本(特に経産省官僚チーム)による半導体材料の対韓禁輸規制である。政府は口が裂けても言えないが、マスコミからは当初より旧徴用工裁判への報復措置であるとされ、しかし、「報復」ではWTOの場ではまずいと思われるので、「戦略物資の不正輸出」だから韓国を「ホワイト国リスト」から外すとの屁理屈をつけたものの、逆に韓国側から日本こそ艦船レーダーやミサイル移動用クレーンなど「国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会専門家パネルがここ数年間、制裁対象や軍事転用可能な品目が日本から北朝鮮に輸出されたと指摘した」(Yahooニュース:2019.7.14)と反論される始末であり、とてもWTOの場で大手を振って説明できる中身ではなく、支離滅裂の感を否めない。
半導体材料は最終製品ではないため、最終工程の情報がフィードバックされないと材料の開発は進まない。対韓禁輸はこうした生産情報のフィードバックを自ら断ち切る行為であり、産業政策としては実に愚かな行為である。また、早速、中国企業やロシア企業がサムスンへのフッ化水素の提供を申し出ており、将来的には市場を奪われてしまう恐れが強い。そのような杜撰な行為を日本が独自でできるはずはない。説明は世耕経産相・筋書きは今井尚哉内閣総理大臣秘書官などが行っているのであろうが、裏筋はあらゆる手段を駆使して極東での緊張を高めたいと画策するBチームが書いているというのが妥当な判断である。(櫻井ジャーナル:2019.7.16)
トランプ米大統領は、7月10日、I won a big part of the Deep State and Democrat induced Witch Hunt(私は魔女狩り騒ぎを仕掛けたディープ・ステートと民主党の大きな一角に勝った)とツイートしたが、日本がこのような稚拙な外交を続けているようでは、来年の米大統領選後にはBチーム・英ハント外相ともどもごみ箱に捨てられているであろう。その時には、ロシアも中国も北朝鮮も韓国もイランも他のアジア諸国も日本に見向きもしなくなるであろう。

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