【投稿】「労働運動の未来を考える意見交換会の記録」を読んで
長い時間の座談会の記録をとるのがどれだけ大変なのか理解できるだけに、その分じっくり読ませてもらいました。2ヶ月に一度くらいおやりになると書かれていましたが、その後音沙汰なしのところをみると、やはり大変だったのかと、あらためて編集部の方々に感謝しております。
さて、「記録」についてですが、労働問題から社会主義の総括、現代若者の意識、新社会主義(?)へ導く生産スタイルの問題等々、話題が多岐にわたっていましたが、私は労働問題についてのみに絞って感想を述べたいと思います。
座談会の順をおっていいますと、まず不安定就労層について、インターネットによる労組への「誘い」と自治労などの組織化が紹介されています。組織化のための「経費」がどれだけのものか、巣張さんは苦労された経験があるので具体的におわかりだと思いますが、その「経費」を出すための論議が必要だと思います。すでに連合は今年度からそうとうの経費を地方連合などに供出してきていますが、全国一般、JAM、ゼンセン同盟など活発に未組織の組織化に取り組んでいる産別がどうしているのか、についても考える必要があると思います。アメリカの労組が相当の費用をつぎ込んで大量の組織化に成功している例もあります。問題はそういう経験をどう生かすかではないかと思います。
次に、電機連合の春闘見直し論ですが、ここで大変重要な指摘をされていると思います。基本給比率が総額の30%ほどになっている民間の賃金ではベア中心の春闘では運動にならないといっていますが、まったく同感です。業績給や能力給の導入、○○手当のアップなど、賃金にしめる基本給が少なくなればなるほど、労働組合で賃金の交渉をする余地が少なくなります。ですから、銀行や証券に労働運動がなくなったのが典型的な例だともいえます。ですから電機のような見直しがでるのは当然で、しかも大企業ほどそういった賃金要求になっているのだと思います。やはり原点に返って、賃金を見直す時期にきていると感じています。今、連合でも新たな賃金綱領を作成していますが、ここでどういう視点に立つのかが問われています。
また、地区労運動や労働者連帯、連合の会議にも触れられていますが、現在の労働運動の状況ではこれも当然で、春闘という労組の基本的な役割がなかなか機能しない中で、個別の分野だけ活発になりえないと思います。問題は、どこから「手」をつけていくかで、やはり既存の組合員にも、未組織の労働者にも「労組は必要」というところまで期待を集められるだけの存在にすることではないでしょうか。実際に管理職ユニオンはそこでは成功しています。またマスコミはあまり報道しませんが、連合東京でも「未組織の組織化」のもと、外資系企業の組織化、派遣労働者の組織化などかなり成功してきています。もちろん先に述べたゼンセンなどもパチンコ産業にも触手をのばしていますし、全労協系の東京東部労組もコンビニのパート店員の組織化にまできています。
ただ、こうした組織化運動は規模としては小さいし、相当の「経費」がかかっていることと思いますから、いかに「省エネ」でやるか、産別の協力体制、地域の協力体制なしにはなかなかしづらいと思います。ナショナルセンターの役割分担まで産別大会での春闘論議からでてきていますが、役割分担ではなく、相互の影響を言い方向にもっていく協力体制をつくることをしないと、産別自決路線、個別企業自決路線にまいもどる危険性があります。今、未組織の組織化と失業問題をめぐって総労働体制ができそうなときに、これを大事にする運動をみていきたいと思います。
座談会は、そういう意味でも大変刺激的ですので、どんどんやっていって下さい。
(立花 豊)
【出典】 アサート No.262 1999年9月15日