【投稿】もうひとつのビックバーン–労働組合編-

【投稿】もうひとつのビックバーン–労働組合編-

世はまさに世紀末。来年は2000年のミレニアムの年。2001年にはペイオフが解禁されまさしく金融の自由化のなかで自己責任の貫徹という原則が私たちの生活の中にまで入り込んできています。日本版ビックバンの時に語られたのが「フリー、フェアー、オープン」、いわば自由で公平で開かれた競争が確保される市場を創ること。それが、グローバル・スタンダードとゆうものらしい。
これに対しては様々な人が批判、検討を加えていますが、わたしは日本の労働組合も同じことが言えるのではと思います。91年の証券不祥事の時、株の損失補填を企業だけでなく農協系団体、さらには労働組合系の共済会、共済組合までもがその「恩恵」に浴していたことを思えば自由で公平で開かれたとは言いがたい。
近年、労働組合の組織率の低下が憂慮されて久しいが、こんな調子なら組合員はその本質を看破するのになんの雑作もないはずだ。

<<労働組合とチェックオフ>>
先日、小渕首相は来年から政治家に対する企業団体献金の禁止のに「勇敢にも」決断をした。この時、自民党の労働部会では組合費の給与天引きいわゆるチェックオフを禁止できないものか検討をはじめたらしい。政治的な意図とは別に、たしかに自主・独立の組織である労働組合が自己の財政を企業の負担に任せることには問題があるのではないか。毎月の給料から支払われる大切な組合費を加入届のコピーを会社に渡すだけで、会社が取りまとめて(徴収代行)組合の指定口座に振り込まれている。これでは組合員からもらっているという意識が希薄になりはしないだろうか。

<<労働組合の自主・独立を>>
わたしは、労働運動の状況とかには明るくはないが、どんな組織、団体でもその財政のあり方は組織の根幹、本質にかかわる問題。それを人任せにすることの感覚には疑問を持っています。せめても、自身の組合の口座に振り替えができるように口座引き落としの依頼書を組合加入の際にとってもおかしくないと思う。つまらない事かもしれないが、自主・独立はこんなところから始まるのではないだろうか。

<<組合費は所得控除の対象に>>
これと同時に思うのは。組合費が所得控除の対象にならないのかという点です。
事業を営む者は申告の際に、商工会議所、商店街の組合費等様々な営業上に必要とされるものについては経費として損金の計上が認められている。サラリーマンもその生活の糧を得る為に労働するわけだから、労働組合の組合費は欠くことのできない必要経費として認められるべきだと思います。ゆえに所得控除の対象として税法改正を求めてゆくべき。
この時に問題なのが現状の組織率、所詮30%弱の者しか加入していないのにこんな制度は不公平ではないかという点。これに対しては、日本では労働法により組織を創ることの自由が確保されている事。さらには税制による支援で組織化の拡大が期待されることを考えれば合理性は満たされると思う。ついでに言えば、日本の貧弱な社会保障制度のため莫大な金額の生命、損保が存在し、それがあわせて年間で最高115,000円(所得税ベース)控除になっていることを考えたら組合費の所得控除は当然のこと。

<<組合にも国際会計基準とISOを>>
税法で対応する為にはもうひとつ大きな視点は、労働組合が社会的に公益性があり、その運営が自由で公正で開かれているかが問題。損失補填を受けたり、組合費の流用事件等の不祥事。政治資金との区別、対応が十分になされていなければ、当然その公益性が認められるはずがない。その為には、せめても産別単位、組合員1000人超、年の収入が1億以上の組合は外部監査を受けるべき。すでに法人格を取得して実行している労組もあり。ただし、絶対数が少ない。
さらにはある意味で組合もその運営上は経営感覚がなければ立ち行かない。国際会計基準の導入とISOの9001と14001(※1)を取るぐらいの経営手法と能力が必要となる時代が目の前に来ていると思います。労働界にもビックバンが必ず到来するでしょう。
先日、米国は中国がWTOに加盟することを認めた。そうなれば日本も相互互恵、最恵国待遇の原則から言えば単純労働者の受け入れを余儀なくされます。労働市場が変化するわけです。何が起こっても不思議でない時代だと思います。
わたしは、学生の時に「労働組合とは社会主義の学校」だというとんでもない空想にとりつかれていました。最近少しづつリハビリをしています。その薬は民主主義と改革が効くみたいです。

(※1)ISOとは、JIS規格という国家規格があるがWTOの加盟国は原則的に国際規格に合わせることが義務となっています。大きくは、品質システムの9000シリーズと環境マネイジメントシステムの14001に大別されます。いづれも製造、建設、サービス、流通等全業種が対象となっており、14001では自治体もその対象になっています。顧客(組合員)対するサービスの品質を保証しそれを知らせるシステムであり、環境への影響評価を行い、その改善のための「目標管理制度」のこと。
(豊中 宝山)

【出典】 アサート No.265 1999年12月18日

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