【投稿】台風迫る中、97長良川DAY–「ダムの時代は終わった」

【投稿】台風迫る中、97長良川DAY–「ダムの時代は終わった」

長良川河口堰が、社民党の建設大臣によって、運用開始されて以来2年が経過した。時が過ぎる毎に、シジミの壊滅状況が明らかになり、今年のアユも、ますます少なくなっている。建設省は、アユの漁獲量は変わらない、と主張しているようだが、それは「放流アユ」を含めてのことである。放流アユと天然アユは、値段も違う。放流ものは1尾300円にしかならないが、天然ものは2000円以上もする。当然、獲れているのは放流ものだ。建設省の宣伝にも関わらず、釣り人は真実を知っている。つまり、天然アユには、縄張り意識があるので、「友釣り」が有効だが、残念ながら養殖アユは、縄張り意識がないので、「友釣り」が効かない。川の端の瀞場でじっとしているというわけ。釣り師にとって長良川のは、魅力を無くしつつある。今年の遊魚券の売り上げが昨年を大幅に下回ったという。
長良川河口堰の運用はあったものの、年々ダムや堰の建設に反対する運動は全国各地で盛り上がりを見せており、財政構造改革・行財政改革のもとでの公共事業の見直し気運と相乗的に世論の関心を受けて、一層運動の輪が広がりつつある。これらの運動は、そこに住む市民が中心であり、地道な運動が積み重ねられている。
今年も、9月13・14・15日には、一連の環境行動が、三重県長島町を中心に開催された。
私は、14・15日の長良川DAYの方だけに参加したわけだが、今年の特徴などについて、簡単な報告をしておきたい。

<自然破壊の公共事業は止めろ>
13日には、「日本の山河と公共事業」をテーマに、第1部「不必要で自然破壊的な公共事業を検証する」との「森・川・海」からの基調報告が行われた。海からは諫早干潟緊急対策本部代表の山下さんから「諫早問題と農水省」。川からは「長良川河口堰と建設省」を長良川訴訟原告の村瀬さんが、そして「細川内ダムと建設省」で徳島県木頭村の藤田村長が、「大規模林道問題と林野庁」では、宇都宮大学の藤原名誉教授が、「宍道湖中海干拓問題と農水省」は島根大学の保母教授が、それぞれの公共事業と問題点を報告。公共事業が如何に「経済発展と市民生活向上」をうたい文句に、自然破壊を平然と繰り返してきたかが、報告された。第2部では、パネルディスカッション「公共事業と行政改革会議」が、行われた。
14日には「世界水資源会議」として、海外代表も参加して、世界の水・ダムをめぐる大きな変化と日本がダムに固守し続けるばかりか、中国の三峡ダムやベトナムのメコン河開発にも触手を広げている事態に対する基調報告とパネルディスカッションが行われた。

<世界的にはすでにダムの時代は終わった>
今年6月にニューヨークで開催された国連環境特別総会は、来年の「国連持続可能な開発委員会(CSD)の中心テーマを「淡水の確保」に決定した。国連の報告書によれば「現在世界人口の8%が極度の水不足に置かれている。このまま人口増加が続けば約30年後には世界人口の3分の2が水不足に苦しむことになる」と指摘している。またワシントンに本部があるワールドウォッチ研究所は「これまで戦争は石油と黄金をめぐって闘われてきたが、いま国家間に紛争を生む最大の可能性を持っているのは”水”である。と警告している。また、アメリカや欧州においては、ダム開発による自然破壊は耐え難く、ダムの時代は終わった、との認識の上に、自然と人間の調和を第1の課題にして、水問題と取組もうとしているわけだ。
ところが、日本では、公共事業の一部見直しがはじまったとは言え、日本のダム建設の関係者らは「だから、さらなるダム建設が必要だ。それにダムは地球温暖化を促進しないクリーンなエネルギーを生む」と主張し、不必要な公共事業の象徴として批判されている国内のダム事業と、政府ODA等による途上国へのダム建設を、さらに推進しようとしているわけである。こうした課題が2日目の議論であった。

<世界銀行がダムチェックを実施>
その中で、特徴的だったのは、世界銀行のあらたな動きである。2日目の基調講演で「世界銀行と大型ダム論争・・水事業に適用される環境の持続可能性とはなにか」との講演をおこなったロバート・グランウッド世界銀行特別顧問は、世界銀行とIUCN(国際自然保護連合)が、今年11月に「ダム事業見直しのための独立国際委員会」を設立し、2年間をかけて報告書を作成することを明らかにした。その対象として日本からは長良川河口堰がなる可能性を示唆され、この調査報告を通じて、有害なダムの建設を制限し、国際的なダム建設の基準が勧告されれば、公共・私企業を問わずダム建設者がガイドラインに従うよう、求めることができることになる。

<河・干潟・湿地の環境団体が集結>
これらの会議は、「公共事業チェックを実現する議員の会」及び「公共事業チェックを求めるNGOの会(400団体)」及び「長良川監視委員会」の主催で行われたが、14日・15日には、長良川河口堰に近い伊勢大橋の長島町河川敷で、「97長良川DAY」の行動が行われたわけだ。今回は、台風19号が近畿に接近するという悪天候で、両日ともほとんど雨続きであった。そのため、一般参加は昨年をはるかに下回り、1000名程度の参加となったことは残念だった。
しかし、会場テントには全国の環境団体がブースを設置して、環境運動の交流が行われた。諫早干潟干拓緊急対策本部、熊本の川辺川ダムに反対する県民の会、博多湾和白干潟を守る会、徳島県吉野川、関東からは相模大堰、北海道の千歳川方水路、千葉の三番瀬、名古屋の藤前干潟を守る会、大阪からは槙尾川ダム連絡会、そして長良川河口堰に反対する市民会議などなどがブースを出していた。
この「長良川DAY」も、90年から7年目を迎えるが、年ごとに各地の自立した環境市民運動が参加している事実は、長良川を起爆材にした「森と川と海」の環境運動が各地に根を張ってきたことを現わしているようだ。

<河口堰の運用を中止せよ>
前夜祭では、C・W・ニコルさんの講演や山本コータローのコンサート、そして参加各NGOの報告があったが、どしゃぶりの雨だった。翌日も朝から雨だったが、元気に集会が行われ、特に橋本首相の「行革会議」が打ち出した「省庁再編案」が、縦割り行政やこれまでの「環境破壊型公共事業」への反省もなく、巨大な「国土開発省」構想で、これまでの公共事業推進の姿勢に何の反省もないことなどへの批判が基調報告された。
11時を期して、カヌーデモと陸上デモが行われた。当日参加の全電通や国労名古屋などの部隊も合流し、陸上デモでは、民主党三重の宣伝カーを先頭に、陸上約800名( 推測)、カヌー約60艇がそれぞれ河口堰めざしてデモを行い、「運用を中止せよ」「ダム建設を止めろ」と雨の中、河口堰本体の上と川のカヌー部隊が呼応して、アピール行動を行った。
台風のためか、参加者は昨年の1/2程度だったが、運動の広がりを確信できる今年の長良川DAYだった。(佐野)

【出典】 アサート No.238 1997年9月27日

カテゴリー: 環境, 社会運動 パーマリンク