【投稿】93春闘を振り返って
<「複合不況」に押し切られた93春闘>
JC4単産の回答が、3月24日に出され、39回目を迎えた93春闘も「大きな山」を越えた。
そして春闘が「終わる」のを待っていたかのように、日本工業新開は、一面で3月24日から「景気にも春一回復の芽見つけた」の連載を開始した。また、日本経済新開でも一面で3月30日から「底見えた景気」と題する連載が始まった。
90春闘は「トリプル安」、91春闘は「湾岸戦争による先行き不透明感」、そして、92春闘は「景気低迷」が取り沙汰され、労働組合側が押し切られたが、93春闘も「複合不況に加え、急速な円高による86年の円高不況以上の厳しい状況」などとの口実で、低水準の賃上げに押さえ込まれることになった。
(主要組合に対する回答内容は別表参照)
またしても、労働組合側は資本の攻勢を突破することができなかづた。
<マクロ的に注目された93春闘>
93春闘の前哨戦(空中戦)は、昨年秋から始まっていた。
連合の春闘に対し、日経連永野会長は、「春が来なければ良い」と発言。これに対し、近藤労働大臣(当時)は、「賃上げが厳しいと消費が下がる。企業には、バブル時代に蓄積した利益があるはずだ。悪循環にならぬよう労使ともに考えてほしい」と発言。
日経連永野会長は「とんでもないこと。賃上げ問題は個別労使交渉に任してもらいたい。」と反論。これに対し、近藤労働大臣が日経連に対し、公開討論を呼び掛けたが、日経連は、どうせ辞める労働大臣と見てか、「逃げ」を決め込んだ。 何れにしても、93春闘は、マクロ的に、日本経済景気対策の面で従来になく注目・期待された春闘であった。
しかし、さすがに、日経連のぶちあげた「定昇のみ、ペアゼロ」ではなかったが、全体として、ストライキもなく4%に達しないまま、春闘史上2番めに低い水準に押さえ込まれようとしている。
また、労働時間短縮や時間外労働割増賃金率の引上げ要求についても一部を除き大きな成果をあげることはできない状況にある。
日経連の永野会長は「今回回答は低迷を続ける景気の先行き、各社の支払い能力を考えると、今後の企業経営への影響が懸念されるものである」とうそぶき、「今回、著しい時短の進展がみられなかったことはやむを得ないことと思う。時間外労働の割増賃金率についても、現状ではそのアップは問題外とわざるを得ない。」と居直っている。
労働組合もなめられたものである。
<連合の『闘争宣言』とその結末>
連合は、3月24~25日のヤマ場に向け、3月18日に中央総決起集会を開き、次のような闘争宣言を発した。
「今流されている賃上げ予想をはね返し、最大のヤマ場(3月24~25日に向け、賃上げは、生活向上分を確保した実質賃金の引上げを基本にすえ、昨年の実績、獲得率の向上、格差是正を目標に、総力をあげて闘い抜く。
時短は、中期計画の最終年の闘いとして、1800時間 の達成年次と割増率引上げを本年の労使協定で明らかにさせる。
この目標の実現のため、各構成組織はストライキ態勢をはじめそれぞれの持ち味を生かした力あわせで交渉力を強化していく。回答不満な場合には「ストライキも辞さぬ」あるいは「安結を留保する」決意をもって闘い抜く。」
この闘争宣言」が、有言実行されたかどうかはその後の経過をみれば明らかである。
連合は3月25日、中間的に「賃上げに限って言えば、不満足な結果であり、今後に課題を残した」と総括。山岸会長は「実質賃金や獲得率などいろいろな目標を立てたが、その意味でも経営側のカベを打ち破ることができなかったと言わざるを得ない」と表明。
連合結成以来の、特に春闘における弱さ・不十分さを克服していく努力をさらに強化していかなければならない。
<注自された?金属機械の93春闘>
『週刊東洋経済』93.4.3号は、「結果が見えた93春闘一今年も踏興された悪しき横並びの伝統」という記事の中で、「JCの決着のあと、私鉄、電力、NTTなどが続くが、平均して3.9%の賃上げが93春闘の“成果”といったところである。ただ今年の特徴として金属機械などに加盟する中小企業で組合側の健闘が伝えられているが、その集計は4月になる見込みだ。」と述べている。
金属横械は、全国金属機械労働組合といい、全国に1,150支部(企業別組合)、215,000人を有し、連合に副会長、IMFJCに副議長を送り出している。(組織人員では連合で第10番目)
金属横械は、93春闘では、21,000円(8%)の要求で、自らの賃上げは自らが決めるとの決意で3月17日を第一次回答指定日として設定した。
(表1 93春闘・主要組合回答一覧)
電機 17中闘 9,084円 3.60% 前年比▲2,484円 ▲1.1ポイント
自動車 11組合 10,148円 3.84% 前年比▲2,378円 ▲1.05ポイント
鉄鋼 5組合 7,500円 2.65% 前年比▲2,500円 ▲0.98ポイント
造船重機 8組合 12,200円 4.27% 前年比▲1,800円 ▲0.78ポイント
ゼンキン連合 13組合 9,828円 3.66% 前年比▲2,344円 ▲1.01ポイント
金属機械 15組合 11,336円 4.00% 前年比▲2,817円 ▲1.11ポイント
私鉄 14組合 13,400円 前年比▲2,300円
電力 9組合 12,100円 3.83% 前年比▲2,800円 ▲1.06ポイント
NTT 12,400円 3.99% 前年比▲2,400円 ▲0.99ポイント
そして、JC集中回答日の3月24目の前日の3月23日を統一交渉日とし3月24日統一半日ストライキを背景に決着を図るとの方針で闘いをすすめた。
報道管制でマスコミは全く報道しないが、金属機械は、3月17日の回答指定日には、400を超える支部で第一次回答を引き出した。93春闘のひとつの攻防線であった4%を超える回答も数多くあり、その後、多くの支部がストライキを決行したり、通告する中で、3月23日~25日に決着していった。
一部上場企業では、3月18日に島津が半日スト、OKKが1時間スト。3月24日の統一行動日に半日ストに突入したのは、OKK、NTN、松尾橋梁、光洋精工など。
3月23~25日にストライキを通告し、交渉の末、決着していったのは、島津、日本電池、日本輸送機、湯浅電池、OKK、ヤンマー。
金属機械の主力部隊である大阪地本は、3月24日、統一半日ストライキに突入した22支部を中心に浪速解放会館に2,000名の組合員を集め、総決起集会を開催した。(単産として、ストライキ集会を開催したのは、金属機械のみではないか?)
金属機械加盟の主な企業(一部上場他)の回答を一部、列記すると表2の通りである。
これらの組合の多くは、ストライキを決行したり、背景に交渉するなどして成果をあげており、しかも、JC回答前決着の構えで闘い、3月23日~25日に解決を果たしている。
金属機械の場合、昨年に比べ、ストライキや闘争態勢突入が増加した。
昨年もそうであったが、ストライキ態勢の有無が獲得結果の違い=経営の思惑を突破できたかどうかの違いとなっている。
<春闘の強化に向けて>
連合も、いつまでも、「不満足と言わざるを得ない」といってばかりおれない。 金属横械などの主張もあって、連合の中でも、ようやく、「樹答が不満な場合はストライキ」といううことが方針の前面に出だしたが、それを実行する単産はまだ数少ない。
労働組合運動の基本である賃金闘争を柱とする春闘の強化に向けて、私鉄総連、JR、全電通、ゼンセン同盟、電機連合、金属機械などスト権を事前に確立してストライキを背景に交渉するという当たり前の労働組合・単産を増やしていくという努力を、さまざまな場で、粘り強く続けていかなければならない。
(大阪 M・H)
●表2:金属機械加盟の主な企業の回答
東京
シチズン時計 12,000円 4.16%
横河電機 12,644円 4.12%
山 武 12,533円 4.31%
オリンパス 11,614円 4.00%
静岡 日立精機 10,504円 4.00%
新潟 新潟鉄工 12,600円 4.81%
愛知 日本車輌 12,200円 4.42%
京都
日本電池 14,326円 4.59%
日本輸送 13,300円 4.67%
大阪
日本コンベヤ 14,105円 5.00%
松尾橋梁 14,000円 4.57%
湯浅電池 13,909円 4.03%
NTT 12,000円 4.57%
近畿車輌 11,700円 4.36%
タカラスタンダード 11,500円 4.70%
兵庫
タクマ 13,200円 4.93%
ヤンマー 12,600円 4.14%
ナプコ 10,160円 4.30%
【出典】 青年の旗 No.186 1993年4月15日