【投稿】自民党一党支配体制の崩壊から

【投稿】自民党一党支配体制の崩壊から
                                                                                       連合政権時代への新たな胎動

7月7日から始まる先進国首脳会議を目前に控えて、よもやと思われた事態が展開し始めた。サミット開催国、議長国をつとめる日本において、自民党宮沢内閣はもはや死に体同然、「不信任された首相」が議長をつとめるという、これまでに例のない、屈辱的な姿でサミットを迎えることになったのである。宮沢首相にとって、もっとも回避したかった最悪のケースが現実のものとなった。冷戦時代の終焉とともに到来した新しい時代に、新しい思考と先見性や行動力が何にもまして重視される時代に、もはや旧態依然たる自民党政権、そして野党を含めてそれを許してきた旧来の政治体制の役割はすでに終わっているのだということを示したといえよう。
今や一般紙でさえ、「指導力のなさ」を見込まれて旧竹下派に推された宮沢氏が首相だったことは日本の政治のひとつの悲劇であった、と断言している。そして総選挙後を展望して、宮沢政権の役割を徳川第15代将軍慶喜になぞらえて、「文字通り一党支配時代の幕引き役となるのは、天の配剤というべきかもしれない」とまで見透かされている。そのうえ、「政治的に無能な宮沢首相でさえできたのだから、野党でも政権をとれないことはない」という皮肉まで社説で展開されている。
明らかに新しい時代の展望が開きかけているといえよう。自民党が事実上分裂し、自民党の独占的な政治支配が不可能となったことの意味は大きく、総選挙の結果によっては日本新党を含む野党連合政権、あるいは羽田・小沢派と野党による連立政権誕生の可能性も出てきた。自民党は過半数割れどころか、200人割れも不思議ではない。自民党では、首相の応援演説を求める地方組織がないという事態にまでなっている。羽田・小沢への憎しみを前面に党内引締めに全力を傾注した梶山幹事長は、「政治改革に名を借りた権力闘争だ」として、いやがる宮沢首相に内閣不信任案の採決を主張、羽田派の野党との同調をあぶり出すように仕向けた結果がこれであった。いわば一種のハプニング解散であったにもかかわらず、政治のダイナミズムは予測をはるかに越えて、新しい時代の幕開けとなったのではないだろうか。
そしてこうした事態は、野党とて無縁ではあり得ないといえよう。今後予測される政界再編の激動は、旧来の政治手法、国対政治、派閥取引、与野党癒着の腐敗構造、等々が許されない事態をもたらし、これらによりかかってきた野党の再編をもたらすのではないだろうか。何よりも先ず、この総選挙において自民党を政権の座から放逐する連合、連立政権の樹立に向けてあらゆる勢力を結集し、糾合しなければならないであろう。       (生駒 敬)

【出典】 青年の旗 No.188 1993年6月15日

カテゴリー: 政治, 生駒 敬 パーマリンク