【投稿】”Ⅰ’m here” JAGDA 平和と環境のポスター展

【投稿】”Ⅰ’m here”        JAGDA 平和と環境のポスター展

5月27日~6月1日、東京で社団法人日本グラフィックデザイナー協会(JGADA)が主催する「平和と環境のポスター展“Ⅰ’m here.”(私はここにいる)--すべては『私』から始まっている。」が開催された。
同協会に属する全国の会員1800人のうち10人に一人に当たる189人が参加して展覧会であった。各作品は作者の様々な視点からのイラストとコピーとの組み合わせが実におもしろかった。出品者の互選による10人の審査員が選んだ大賞は「かあさん。ポクは、ホントは生まれたくないんだよ。」と題する(コピーは山之内慎一氏)赤錆た鉄くずで作られた巣の中に卵のような石が2つ描かれたイラストの作品である。私個人的には、やはり大賞作品もすばらしいと思ったが、加えて GREEN REVOLUTIONと超するマニキュアした手が地球をつかむイラスト(中村誠氏)に「人間が言った。私には植物の声など聞こえない。あるはずもない。ロマンチズムで、この地球の腐食を救えるものか。」
品、「サアカナゴトではない!」(イラスト今北紘一氏、コピー稲本幸男氏)の作品、「来世紀では遅すぎる。」というう地球儀がつぶれたイラスト(生駒由紀夫氏)の作品なども感銘を覚えた。
これだけ多くの“環境”を見ると「環境問遮」「環境運動」とは何かと考えさせられるo「平和を守れ、戦争反対」にしても、あるいは「地球を守れ」という主張に対しても反対する人は(たぶん)誰もいないと思う。かつて(今でも?!)「平和」と言うカテゴリーが一つの試金石であったように、今、「環境」がそうなりつつあるのではないか。サミットで竹下氏がどれだけ良い事を言ったって、日本で何ができるの?政府として。企業の経済活動を規制してまで…。
今回の展覧会に当たり日本グラフィックデザイナー協会会長の亀倉雄策氏は「自由な発想と飛躍」と超して次のような文章を寄せている。少々長いが、なかなかおもしろいので全文を引用する。
「私は『I’m here』というタイトルが大変気にいっている。それは、気張らずに自分の好きな表現ができそうだからである。「Ⅰ’m here.」の意味を自分で考えで、自由に発想を飛躍させられる面白さがあるのだ。そこが、すばらしい。展覧会だッと云って肩を怒らせないで、のびのびと好きなポスターをつくれるチャンスが久々にやってきたといううれしさである。
『JAGDA平和と環境のポスター展』というのが冠についている。だから、お前がそんなにのんきに喜んでいるのはスジ違いというものだと展覧会委員会から文句をいわれそうだが、ここで『まてよ……』と考えてみたい。ご承知のように、ソビエトがロシアという普通の国になり、核兵器削減という現実にフレデイリツク・フオーサイスでさえ小説のネタに困惑している今日、骸骨や原爆雲でもあるまいというきがしているからだ。特に鳩ポッポやPEACE PEACEと凝ったロゴタイブを並べて見せられても空虚な形式主義だけが鼻について感激しない。環境問題だって、工場の煙突のモクモクや、よごれたドプ池、ゴミの山といった観念もやっぱり空虚な形式主義としてしか目に写らない。
じゃあ-なにを表現したらいいんだと問われれば、これに答えることはむずかしい。私だって教えてもらいたいくらいだ。要するに、平和と環境というテーマはグラフィックデザインの袋小路に入ったようなものだと思うからである。
その袋小路の徒き止りに颯爽と出現したのが、この「Ⅰ’mhere.」である。これだ!と飛びついたのは私だけではないょうだ。このタイトルは国境を超えた説得力がある。例えば昨年ドイツのオルガー・マチスに『Ⅰ’m here.』の話をしたら、即座に「すばらしい」と感動してくれた。きっと面白い展覧会になるという予感がしたんだと思う。きくところによると、この『I’m here.』Jはコピーライターの日暮真三の命名ということだが、さすがに非凡な才能の人だと感銘した。
『I’m here.』が平和、環境という正面きった大テーマに硬から爽風が吹きつけて、自由な表現をゆるしてくれる雰囲気が生まれてくれたのは幸せだった。きっと面白い、すばらしいポスター展になると、私は直感している。」
話は替わりますが、今回の展覧会で180点の作品の中に女性の作品が10点にも満たないというのは、環境運動に果たしている女性の役割からするとあまりりに寂しいとは思いませんか?
展覧会は、環境サミットが開かれているリオジャネイロで開かれた後、7月14日からは名古屋市市民ギャラリー、続いて広島、福岡、大分、釧路などでも開かれる予定ですので、近くの方は是非覗いてみてください。
環境問題って何ですか。あなたにとって環境問題って何ですか…。(東京 C)

【出典】 青年の旗 No.176 1992年6月15日

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