【投稿】大阪発:自治体の週休2日制~92賃金闘争報告~
<93年4月 大阪府下 週休2日実施へ>
時間短縮は世界に対する責任として、日本の労使にとって最大の課題である。年間労働時間1800時間、週休2日制の全産業での実施が求められている。
公務員の場合、ようやく91年の人事院勧告で国の完全週休2日実施が具体的実施時期を明示せず勧告されたが、宮沢内閣は、本年5月から国家公務員の完全週休2日制を実施した。自治体にあっても本年10月1日現在全国2537自治体83.1%がすでに週休2日制の議会議決を行い、来年度実施予定でも80%を超えるとなる。
しかしながら、週あたりの勤務時間に目を向けると、国の週2実施の週あたり労働時間は40時間であり、午前8時30分出動午後5時30分退出というのが基準である。
大阪府下にあっては、すでに現行の4週6休実施時で、週40時間15分が条例上の勤務時間で、実働時間では38時間45分である。(4週6休実施時も勤務時間問題が焦点となり、一日15分の時間延長を余儀なくされた)このまま週2に入ると週あたり実働時間は37時間15分、祝日、有給休暇等を完全消化すれぼ年間労働時間は1800時間を切る。
こうした背景から勤務時間問題が大阪府下の自治体週休2日制の大きなハードルとなった。(参考:大阪の自治体勤務時間問題の一端は青年の旗No176号(92-9)で大阪府勤務時間問題の報告がある)
本年6月期、来年4月からの週2実施の交渉が開始されたが、問題は①勤務時間問題②閉庁職場を中心とする人員問題③実施時期であった。
前述の大阪府の勤務時間問題の動向もあり、1日あたりの勤務時間の延長という動きも一部自治体であったが、最終的には統一闘争により、勤務時間の延長なしの実施が9月の大阪府市長会でほほ確認された。週あたり労働時間は37時間15分となり、年間労働時間は、週休、有休、夏季休暇、祝日等を勘案すると1800時間を切る状況となった。
府下各市とも12月議会に条例が提案される見込みで、来年4月からの週休2日制実施はほぼ確定した。
自治体の時短闘争は、週休2日の実施により、新たな段階に入る。もちろん、国、都道府県、金融機関等の週2実施も併せて、地域の中小企業への影響も大きい。しかし、自治体の労働運動にとっては、「24時間の労働運動」が自治労のスローガンにも示されるごとく、労働組合の従来の体質からの脱皮が求められているとも言える。
<地方自治体の賃金をめぐる変化>
一時の地方財政危機の時代は去り、バブル景気の時代を通じて地方財政は上向いてきた。70年代後半の高賃金攻撃をはじめとする公務員攻撃の時代も終わり、バブル景気、人不足の中で、民間との格差を埋めるため国家公務員にあってもむしろ賃金を押し上げる傾向がここ2、3年の人事院勧告の特徴となってきた。ラスパイレス指数も長年の賃金是正攻撃の中で、130まであったものが、最高でも110のレベルまで縮まった。
他方、自治労の貸金闘争により、自治省の賃金個別指導も昨年、形式上終結させてきた。
こうした状況を受けて、昨年から自治労は「守りから攻めの賃金闘争」を打ち出し、過去の合理化の復元に重点を移し、一定の復元措置を昨年の年末闘争でかち取ってきていた。そういう意味では、今年は復元闘争2年目と位置づけられる。
しかし、急激な経済環境、社会環境の変化は、今年の年末陶争に大きな影を落とす事になる。
<不況風の中 一時金フラスアルファを確保>
大阪府下では、11月下旬を山場に92賃金確定・年末闘争に取り組んだ。
特に、一時金闘争(プラスアルファ)は、大阪・兵庫・神奈川など限られた府県でしか取り組まれていない状況にある。その中でも大阪の相場は飛び抜けている。昨年の年末闘争では、条例分の2.7カ月に31000円のプラスアルファを獲得した。本年夏の一時金では条例分に0.09カ月+33000円が相場であった しかし、今冬の一時金闘争は様変わりした。不況を反映し、民間組合の一時金闘争が冷え込み、電機労連などは消費減退、収益悪化から今年の回答は昨年実績を下回る結果となり、自治労組合員の中にも不況感が浸透し、厳しい認識の中で統一闘争の山場を迎えていく。
バブル崩壊以後の不況局面、民間一時金相場の冷え込みという環境の中、自治体にあっても、法人市民税など税収の減少による財政的課題と不況による市民感情を意識する自治体当局姿勢の後退も大きく、情勢的には厳しい認識を余儀なくされた。さらに、「大阪問題」の一つである一時金のプラスアルファをストップさせたい自治省、大阪府地方課の自治体労使交渉への従来にない執拗な介入も行われ、統一闘争の山場(回答指定日)に至っても、全体の状況は重かった。
当初、昨年実績の確保を目標としていた府本部も、最終局面では府下22市の自治労組合の最終統一指標としてはプラス20000円を確認し、山場に臨んだ。
個々の自治体での賃金政策のの経過や対当局関係の特殊性などを生かし、先行組合が山場未明から相場形成に至ったが、上記のような各市当局に共通する「重さ」のため、山場(11/26)から5日日の12月1日にようやく府下の過半数の市で、20000円の回答が出された。
<自治労府本部の統一闘争の成果と問題点>
当事者としては、まさに薄氷を踏むような闘争経過であり、まさに府下の自治労組合の統一した力で獲得した成果であったと感じている。(もちろん、現時点では議会での条例化の課題を残してはいるが) さらに、特徴として先行組合が3年前の連合結成時に、衛都連(共産党系の自治体組合)が自治労からの分裂を強行した際、新しく結成された新自治労組合であったことであろう。競合する自治労連系組合はほとんどが多数派組合であるが、彼ら全労連・自治労連系組合の社会的影響力の低下を今期年末闘争は一層明確にしたことである。
他方で、自治労内部においては、旧来の自治労主流派である北接ブロック各市で一時金プラスアルファが今だに解決していない。本来の統一闘争の牽引部隊である北摂の重さと競合組合の自立をどう調整するのか、今後整理が必要である。
<衛都連(自治労連)の完全な破産>
自治労連は、今期年末闘争から「人勧体制の突破」という方針を唐突に打ち出し、自治労がすでに昨年から取り組んできた復元闘争を中心課題としてきた。一面で自治労運動へのすり寄りとも言える。しかしながら、すでに自治労連単独で府下相場を形成する力は喪失しており、闘争指導上、山場を過ぎてから獲得指標等を2度も変更し、ようやく11月30日に至って、自治労相場への相乗りと言う形で、閲争を終結する結果となった。
<大阪府下自治体労働運動の今後>
こうして年末闘争も終結に向かい、今後総括議論にはいる。いくつかの問題点を指摘し、報告を終えたい。
第1は、プラスアルファ闘争がいつまで有効なのかということである。まもなく冬の一時金が平均で100万円を超えるという状況にある。こうした中で今年の夏6万円、冬2万円というプラスアルファを獲得するための闘争がいつまで社会性を持つものなのか。地域の中小労働運動や連合運動とはほとんど無関係であり、夏冬とほほ1週間を徹夜交渉で府下相場を形成していくという力はもっと違った課題へ集約できないのかという点である。
第2は、週休2日来年4月実施という事態は、自治労運動に新しい課題を与える。それは、1年に150日以上の休日が生まれ、職場での生活の比重が一層低くなる。休暇が増えて組合が一層速くなることにならないか。職場に根ざした労働運動ではあるが、それ自身の質、また休日を含めて労働運動にはなにができるのか。もちろん、休暇は増えても、日々の超過勤務の解消とは別次元の話で、事務系では人員増もないため、残業規制が次の課題となってくる。
第3は、組織闘争について。大阪府下では依然自治労連の存在は大きい。自治労5万5千、自治労連3万弱というところ。3年前に自治労連系の組合の中から9つの自治労組合が結成されたが、半数以上はほほ現状維持が続いている。連合結成3年、新組合が自治労連を圧倒するプロセスについて、今一定の議論が必要となっているのではないか。
(大阪 佐野秀夫)
【出典】 青年の旗 No.182 1992年12月15日