【投稿】雑感・‥最近の若者向け週刊雑誌から
「週刊プレイボーイ」という雑誌をご存じだろうか。たいてい女の子の写真を表紙に載せていて、書店に高々と積まれているので、一度は目に触れていることと思う。表紙を開けば、必ずと言っていい程、女性のヌードグラビアから始まっている。巻末にはアダルトビデオ特集だ。雑誌名からも推察されるように、かなり男性の性欲に迎合した雑誌と言えるだろう。男性雑誌の老舗でもあることから、読者は多く、とりわけ大学生から20代の社会人の男性に愛読されている。しかし、単に若者の性欲を満たすだけの雑誌とは思われない大きなもう叩一つの特徴がある。記事や特集に見られる反体制・反権威的内容である。
国内・国外を問わずあらゆる問題に対して、独特の切口からストレートに怒りをぶつけている記事が多い。バブル経済、またそれがもたらした証券不祥事に対する怒り、民主化に立ち上がった世界中の人々への賛辞、独善的な態度をとるアメリカヘの批判、今の日本の政治状況に対する不満等など、挙げればきりがない。かの黒田清率いる黒田ジャーナルの連載記事もあり、津々浦々の運動を紹介したりしている。気持ちいいくらいに素直にそして率直に、今の世の中に思いをぶつけ、メッセージを送ろうとしているのである。野次馬気分でスキャングラスにしか書けないオッサン雑誌に比べると、十分読む価値はあろうかと思う。その伝統的な編集姿勢は強く印象に残るのである。
若者に読まれている雑誌で共感できるものと言えば、「週刊ピックコミックスピリッツ」という漫画雑誌がある。漫画雑誌であるので、作家によってメッセージ性のあるもの無いもの様々であるが、湾岸戦争勃発以来のいとうせいこう氏が先頭に立った反戦・平和憲法擁護を主軸としたリレー連載には、雑誌の幅広さ故に、重みを感じさせるものがあった。最近では集中連載漫画に「平成鎖国論」というものがあり、現在の緊張した日米関係をコミカルに、またリアルに描き出している秀作であった。
「週刊ヤングジャンプ」も面白い。漫画の内容としては「スピリッツ」に比べると不満が残るのであるが、過去にはかの石坂啓氏の「安穏族」(氏独特の社会的視点から描かれたメッセージ漫画。かなり話題になったものなので、未だ読まれていない方は是非ご一読を)を連載しており、あの天安門事件以来の支援キャンペーンには驚かされるものがあった。
何も“青評”として、これら週刊雑誌を勧めているわけではない。実際にこれらの雑誌を読んでいる若者たちが、そのメッセージをどう受け止めているのかもわからない。そんなページは飛ばしているかもしれない。ただ、この混沌とした内外情勢、日常的に氾濫している様々な情報の渦の中で、幅広い若者層が支持している雑誌がそのようなストレートなメッセージを送り続けていることは、「新人類」と大人たちに揶揄されている若者たちの、蓄積されたうっぷんに火をつける役割を担っているのではないか、という思いは過大な期待だろうか。
同僚たちと議論などをしていて感じることは、我々の世代(20代)の人間は決してニヒルなわけでもなく、冷め切っているわけでもない。もがきながらも懸命に生きている。ただ、何に依拠し、期待し、どう自分がかかわればいいのか、それが見えないだけなのだ。だから、今の現状に「満足」せざるをえないだけなのである。そんな世代へ明確な指針を示すことを、週刊雑誌というメディアの一部分だけが担えるわけではない。その影響力は大きいが、もっと責任を感じなければならない勢力、積極的に担わなければならない人々がいるはずである。
(91年12月 大阪 A・0)
【出典】 青年の旗 No.170 1991年12月15日